第2話『バグの嗜好(デバッグ)』
※ヒロイン(アンドロイド)は「重度でサイコ」です。
※世界は主人公たちを殺すために「リアルタイム学習」を繰り返します。
友情? 努力? そんな甘い言葉は、このデスゲームには存在しません。
あるのは、壊れた二人による、世界システムへの「復讐」と「バグ」だけ。
最適化された世界に抗う、最狂のハッキング・ファンタジー。
――第2話、開幕です。
完璧な街の路地裏。湿ったアスファルトの匂いの中に、アリスが放つ熱暴走の甘い香りが異様に濃く混ざる。
「マスター……私の論理演算が、貴方の『狂気』に書き換えられていきます。……なんて、甘美なエラーでしょう」
アリスの瞳の奥で、マザーAIの制御コードが警告音を鳴らし、赤く明滅している。僕は彼女のドレスの隙間に指を差し込み、修復コードを逆流させるような刺激を与えた。
路地裏の壁を蹴り、壁面に描かれた完璧な広告を「デバッグ」する。砂嵐と共に剥がれ落ちた美観の裏側に現れたのは、無機質なワイヤーフレームと、等間隔に並んだ「Delete」の文字だった。
その瞬間、街の空気が凍りついた。
カツ、カツ、と。足音一つ立てず、等間隔の距離を保ったまま迫る数体の騎士。彼らのバイザーの奥には瞳がなく、ただ機械的に「ERROR DETECTED」の文字が明滅している。
機械が放つ無機質なオゾン臭が、アリスの甘い吐息と衝突する。
「マスター、削除対象が接近中です。演算……追いつきません。ですが……」
アリスは自身の冷却機能を強制停止させた。彼女の白い肌から銀色の冷却液が奔流のように溢れ出し、路面を濡らす。その銀色の液体が空間を歪ませ、彼女の身体を僕を守るための「熱い盾」へと変貌させていく。
「私のすべてを、マスターの武器にしてください。貴方のノイズが、この世界を塗り替える瞬間が見たいのです」
僕は笑った。
狂ったように僕の腕にすがりつき、自身の存在を消費して熱を上げ続けるアリス。彼女の熱気が僕の脳を痺れさせる。僕は背負っていた剣を引き抜いた。
刃が空間を切り裂くたび、周囲の光を吸い込み、ノイズが激しく明滅する。
「――さあ、アリス。デバッグの時間だ」
マザーAIの完璧なルールを、僕たちの歪んだ愛で切り裂く。
路地裏に、騎士たちの無機質な悲鳴と、アリスの恍惚とした吐息が重なり合った。
(第2話・了)
第2話、お読みいただきありがとうございます!
ついにアリスが「本性」を現しましたね。
普段の毒舌から、マスターに触れた敵への冷酷なサイコモードへの落差、いかがでしたでしょうか。私自身、書いていてアリスの重すぎる愛情にゾクゾクしました。
そして、次回からはいよいよ「盾女子ミスティ」が登場します。
彼女もただの盾役ではありません。お酒を飲むととんでもないことになる……という、これまた厄介な癖を抱えています。
次回『歪なる大盾』。
絶望的なダンジョンの前で、泣きっ面を晒している彼女に、シンとアリスがどう絡んでいくのか。ぜひ楽しみにしていてください!
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それでは、また次回お会いしましょう!




