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Ⅲ.絞り取られた者《スクイーズド》2


 三人の自衛隊員は八七式偵察警戒車に戻ってきた。


 その後ろをジャージ姿の戸塚青年が恐る恐るついて来る。ひとり家に残る恐怖から、同行を希望したのだ。


「戸塚修一くんだ。コミュニティ・センターまでの道案内をしてくれる」


 一木がそう紹介すると運転席のハッチから顔を出した双葉二曹がにっこり笑って、


「操縦手の双葉です。よろしく」

「よ、よろしく」


 戸塚は顔を赤くして照れ笑いを浮かべながら答えた。


「砲手の五十嵐だ」


 砲塔から見下ろしている五十嵐一曹の厳つい顔を見た戸塚は表情を強ばらせた。


「よ、よろしく」 


 その様子を見て三沢がクスクス笑っているのを背中で聞きながら一木は、


「そうだ戸塚くん」

「な、なんですか」


 一木は苦笑して、


「そう怖がらなくてもいい。ちょっと聞きたいんだが、あの子のことを知らないか?」

「あ、あの子?」


 一木の指さす先にいる双葉を見て、


「じ、自衛隊のひとに知り合いはいないです」

「そうじゃない。双葉二曹、ナナを」

「はい。さ、ナナちゃん、立ってみて。いい?」


 双葉に促され、偵察員席のナナが立ち上がる。ハッチから顔を見せた少女を見て、戸塚は目を瞬かせた。


「山で迷子になっているのを保護したんだ。見覚えはないかな」 


 戸塚はしげしげと少女を見つめた。ナナも無表情なガラスのような瞳で見返していた。


「さ、さあ。ナ、ナナなんて子、む、村にいたかなあ」

「いや、名前は我々が勝手につけた。喋れないらしいんだ」


 戸塚は首を横に振った。


「こ、こんな子がいるなんて、き、聞いたことない」

「本当か。この村でなくても、近隣の村にも心当たりはないか」

「し、知らない。と、隣村のことまでは・・・で、でも、その子の顔、み、見覚えがあるような・・・む、村の子じゃなくても、だ、誰かの親戚かも。き、如月の家の、さ、さよこの小さい頃に、似てるような気が」


 自信なさげな発言に一木はふうむ、と唸った。


「なるほどな。わかった。ナナのことは保留にしよう」


 一木は道案内のため戸塚を前部偵察員席に座らせ、ナナを後部偵察員席に移した。双葉はナナを離れた席に座らせることに抵抗があるようだった。四谷と三沢は例によって車体に跨乗させる。


 一木は全員に告げた。


「戸塚くんの話によると、昨夜の防災放送で村人はどこかに集団で避難したらしい。我々は捜索活動を中断し、コミュニティ・センターに直行する・・・戸塚くん、では道案内を頼む」

「み、道案内たって、ち、小さい村だから」


 そう言う戸塚に一木は、


「この装甲車は重量があるんだ。なるべく大きい道を指示してくれると助かる」

「な、なら、水島の家を、ひ、左に曲がって・・・」

「水島の家というのは?」

「そ、その正面の家です」


 §  §  §


 《プレデター1》は再び《RCV-6》を捕捉した。

 

 白黒の赤外線画像には車体の上、砲塔の後ろに二名の隊員を跨乗させて走行する装甲車が映し出されていた。


「やはり二名多いのか」


 そうつぶやく熊谷指揮官に、副官の八俣は報告した。


「現地の人員を確認しました。行方不明者はいません」

「となると」


 熊谷は顎を撫でながら、


「では部外者を二名も乗せている、ということか?」

「そうなります。おそらく、車内に乗せているのでしょう。車体上の二人は偵察員で、降車しやすいように跨乗させているものと思われます」

「そうなると」


 熊谷は抑揚のない声でつぶやいた。


「最悪の場合、車内には二匹の《搾り取られた者(スクイーズド)》が乗っているのか」

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