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第九話 もう一機のアストレア

『カタパルト使用可能!セーマ、準備はいいか!』


「はい!いつでも行けます!」


『よし!カタパルトハッチ開放。アストレア、出撃!』


「セーマ・バランサ、アストレア行きます!」


 ビーサムにある、戦場にいち早く到着するための電磁カタパルトの加速によってセーマの体がシートに強く押し付けられ、一瞬うめき声が漏れる。セーマは宇宙を漂うデブリなどに気を付けながら、先に行ったアレスたちの後を追う。支援能力の高いオピスとその部下はセーマ達の後に出撃するだろう。


 セーマがしばらく進んだ後、雷のような轟音が辺りに響き、一筋の太い光がセーマたちが向いている方向へと向かっていく。戦艦のビーム砲によるその一撃を皮切りにこの場所が戦場になったとセーマは感じた。


 ―――――

 ―――

 ―


〈右から敵機。迎撃を。〉


 セーマはアストレアを右に向け、ライフルを放つ。敵機にセーマが放った弾が当たるが、その機体は大破する前にアストレアから離れていく。セーマはなかなか撃破できない現状にもどかしく思いつつも、ライフルのマガジンを交換する。これで五回目だ。セーマは人を殺すのに人並みの忌避感があるが、戦場でそんなことを言ってられないのは理解していた。実際、セーマがマガジンを交換している一瞬の内にも周りで多くの人が死んでいくのをモニター越しに見ることができた。

 

 セーマは未だ一機も撃破できていない。しかしながらセーマがいまだ敵を撃破できていないのは敵の練度がセーマより優れていることと、あからさまな新型機を相手に敵はセーマとの戦闘を極力避け、牽制に留めているからであった。その証拠に、アレスはモートに乗っているためセーマ(アストレア)より機体が襲い掛かっている。


〈頭上から敵機接近。〉


 セーマが上を向く。シールドを構えたセーマの目の前で、敵機は光に貫かれて爆散した。


「オピスさん、ありがとうございます」


『いえ。引き付けてくれて助かりました』


『セーマ!そっちに敵が流れたぞ!』


 アレスから通信が入る。が、その機体もオピスの機体が放つビームに貫かれた。オピスは決してセーマの援護だけをしているわけではなかったが、ビーサムとそのカークス部隊は激戦区から少し離れた位置にいるため、彼らのもとに来る敵機が少ないこともあり、ビーサム全体での撃墜数の半分近くはオピスによるものだった。


 セーマは残りのライフルの弾数が不安になり、そろそろ母艦に戻って補給しようかと考え始めたころ、アストレアにある通信装置から声が聞こえてくる。


『全部隊、全兵士に通達。一気に攻勢に移る。もしこれ以降の通信が届かなくても通信終了から十秒後突撃せよ』


 セーマが辺りを見渡すと相手の戦艦や母艦の何隻かが撤退を始めているのが見て取れた。その様子を見て一気に叩こうとしているらしい。


『突撃!!』


 十秒立ち、突撃命令が出た。一斉にスラスターを吹かす周りに置いてかれまいとセーマもアストレアを前進させる。


〈8時の方向から接近する大型の熱源反応を感知。〉

〈味方機の反応が次々と消失していきます。〉


『うわああああぁぁぁ!』


『や…奴らの増援だーーー!』


『母艦が急に現れたぞ!』


 付近の味方の通信を聞いてセーマが敵が現れたという方向に視線を向けると、味方母艦の一隻から火が出ており、次の瞬間爆発した。突然のことに驚くセーマに、ビーサムのオペレーターから通信が入る。


『八時の方向から敵の奇襲!カークス部隊は応援に行ってくれ!』


『セーマ、聞いてたな?突撃を止めないために急ぐぞ』


「分かりましたアレスさん!」


 こちらにも向かってくる黄土色の敵機に牽制を兼ねてライフルを撃つ。敵機は難なく躱すと、腰からビームソードを抜き、こちらに斬りかかってくる。


『セーマ気を付けろよ!お前の機体でも、ビームソードが当たれば危ないかもしれん!』


「見ればわかります!」


 セーマはアストレアが左腕に装備しているシールドで敵の攻撃を受け止める。


〈ビームソードによる攻撃を受けました。武装のロックを一部解除します。〉


「え?なに?何が解除って?」


 セーマが戸惑う隙に敵機は距離を取り、再度ビームソードを構える。本来ならオピスに撃ち抜かれるところだが、オピスは他の敵機の対応に追われており、援護をする暇は無さそうだった。


 セーマはモニターに映される表示を見る。そこには〈ビームソード〉の文字が輝いている。


 敵機がスラスターを使って高速で接近してくる。アストレアはライフルをハードポイントに収め、ビームソードを腕の袖のような部分から出し、右手で構えた。


「ふっ!」


 ビームソード同士が近づき、ビームソードの刃の形成に使われるエネルギーによって力場が発生する。二機は鍔迫り合いの形になった。


『セーマ!お前もビームソードを持ってたのか!』


 アレスが敵機にビームガンで攻撃をしながら通信をしてきた。反応している場合ではないセーマは、敵機をシールドで殴りつける。敵が怯んだ隙に追撃を仕掛けるが躱された。敵機の肩の部分から小型のミサイルが発射され、セーマはこれをシールドで防いだが、その間に敵機は後退していく。アレスはいつの間にか別の機体と近距離戦をしていた。


 ふとセーマが周りを見渡すと、少し遠くで味方の母艦が爆発した。爆炎の中から一機のカークスが飛び出る。


「まさか…あれを一人で…」


 その光景を見てそう思ったセーマは、思わず口から驚愕の声を漏らした。


〈正体不明の機体から通信が届きました。回線を開きます。〉


 少し放心気味だったセーマはモニターの文字によって意識を取り戻す。


『君が報告にあった()()()()()()()か…中身も同じか確かめてやろう』


 爆炎から飛び出したカークスをしっかりと見たセーマは再び目を見開いた。


「あれは…アストレア…?」

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