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第四十二話 カークスのない星

 セーマはモニターに映るメカドを見る。


「あれがメカド……いや、見惚れてる場合じゃないな。大気圏突入システムを発動させないと」


 セーマはモニターを操作する。続けてアストレアの盾を正面に構えさせた。しばらくすると、コックピットが細かく振動し始める。


「地上まであと三十分くらいか。今のうちにアストレアを隠す場所を探しておいた方が良いかな……いや、今は安全に着陸するのに集中しないと」


 セーマは大型モニターから外の様子を確認する。しかし、初めて見る光景に集中は長く続かず、街の様子を拡大して眺め始めた。


 セーマの目にメカドの街の一部が映る。目を惹く巨大な歯車や、煙を吐き続ける煙突がいくつも立っているような工場が見えるが、石畳や、木材と石材によってできた家など、いわゆる中世の街並みがそこにはあった。


「発展した国だっていう話だけど、思っていたより落ち着いた雰囲気だな」

〈地上から一万五千メートルに到達します。〉


「あぶなっ! 忘れてた!」


 セーマはアストレアを操作して姿勢制御し、落下速度を抑える。



〈地上の戦闘行為を検知。五時の方角。〉


 セーマがアストレアの操作に集中し始めた時、アストレアからの報告が届く。それはセーマにとって寝耳に水であった。


「戦闘行為!? アストレア、モニターに映せる?」

〈了解。拡大した映像をモニターに映します。〉


 モニターに映されたのは二つの集団が戦っている様子。片方は歩兵に加え、キャノン砲に車輪がついたような兵器を複数使っているが、もう片方にはこれと言った兵器は見えず、歩兵だけのようだった。


(本当にカークスが無いんだ……)


 ライトハウスで聞いた情報が真実であったことに少し驚いたセーマだが、目の前で起きているのが戦争であると認識する。そして、セーマはこの戦争が兵器を使った一方的な虐殺のように感じた。


「加勢に向かう!」


 セーマはアストレアの進行方向を変え、戦場の中に降り立った。


 ―――――

 ―――

 ―


「世界は人が支配しなければならない! 機械に魂を売り、ドールなどと言うおぞましい物を生み出した奴らに理解させてやるのだ!」


 もう三度目になる。我が国“フルー”の誇りを掛けた戦争は、戦車により優勢に進んでいた。


「機械は人が使う道具であるべきなのだ。自我を持ち、人のようにふるまう機械など存在してはならない!」


 勢いに乗っている我が軍の戦車砲が敵兵を蹴散らす。その様子を見た味方の士気が上がっているのを肌で感じることが出来た。


「進め! 機械に魂を売ったかの国に……ん?」


 雲一つない青空の筈なのに、戦場を影が覆う。兵士たちも突然の異常事態に進軍をやめ、後退し始めているようだ。


「何事だ!」


 戦場にいるすべての人間が空を見上げる。そこに存在したのは


「天……使……?」


 巨大な体に、火を噴く翼。天使かと思うようなシルエットを持つ存在の目が光り、私を睨みつけた―――ように思えた。


 ズシィーーーンと土煙を上げながら大地に降り立ったそれは、辺りを見渡すと巨大な銃を構える。


「た、退避ィーーーーーー!!!」


 銃から放たれた光が我が国の戦車を貫く。幸い、銃を構えて発射までの()()があった為、兵士たちから犠牲は出ていない。


「な……なんなのだ、あれは! まさか、奴らの新兵器か! 人を模した機械を作るだけに飽き足らず、バカデカい天使までも機械で造ったのか!」


「指揮官! あの正体不明の兵器の参戦により、兵士どもが混乱しております! 戦車の被害も甚大! このままでは陣形も保てません! ご判断を!」


「分かっておる!…………て、撤退! 一時撤退する!」


 一体何なのだ、アレは!


 ―――――

 ―――

 ―


「たしか街から少し離れたところに山があったはず。まずそこに向かおう」


 少しだけ戦場で暴れ、両方の軍を撤退させることに成功したセーマはアストレアの隠し場所を探していた。


(念のため街から見えないところにしよう)


 セーマは山の影の方にアストレアを飛ばす。


「あれは……洞穴?」


 ちょうどアストレアが入りそうなサイズの洞穴を見つけたセーマはアストレアを着地させる。そのまま付近の木や茂みをアストレアで回収し、洞穴にアストレアを入れた後で出口を塞ぐ。


「これですぐにバレることは無いはず」


 セーマは最低限の荷物をもってアストレアのコックピットから外に出る。そして出口に歩いて行き、出口を塞ぐ木の枝や葉っぱを掻き分けて洞穴の外へ出たセーマは、少し歩いて振り返り、アストレアがしっかりと隠されていることを確認した。


「よし。……じゃあ、とりあえず街に行ってみようかな」


 セーマは隠し場所を忘れないように周囲の探索をしつつ、街の方角に向かって歩き始めた。


 ―――――

 ―――

 ―


「えっと……僕、何かしましたかね?」


 歩き始めて数十分。セーマは銃口を向けられていた。




 目の前には見覚えのある柄の軍服に身を包む女性達。


(この柄は確か……さっき兵器にやられていた方だ)


 セーマは取り囲まれ、手を挙げた状態で動くことが出来ない。


「この周辺に未確認飛行物体が飛んでいくのが確認された。貴様は何者だ。まさか……フルーの者か」


 セーマの目の前の女性が口を開くが、セーマは知らない単語に困惑した。


「フルー? それは国名……であってる?」


「……嘘を言っているようには見えない。では質問を変える。なぜここにいる?」


「えっと……山を探索してて。それで道が分からなくなったから、とりあえず見えた街に向かおうと思って」


 セーマは咄嗟に嘘をつく。しかし山を少し探索していたことも、街に向かおうとしていたのも事実であった。


「……嘘をついたな? それが何かは分からないが、貴様を開放することはできなくなった。付いて来てもらおう」


「な……!」


 セーマは見破られたことに驚く。そして反論もできず、彼女たちに連行されるのだった。

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