0001 闇と光の世界
《創世条件完了。空間安定状態良好。創世を開始します__》
暗黒の視界。
そこに移るのは、ぼんやりとした光だけ。
加えて、そこには柔軟剤とほこりを足して2で割ったような匂いが充満していた。
これが何なのかは、わからない。
私自身が何なのかも、わからない。
曇ったフィルターをかけられたようだった。
私は、自分自身の体を見た。
私自身は、光の玉となって浮遊しているようだった。
次に、私は、あたりを見回す。
光の玉が浮遊している。
色はすべて白いが、大きさはバラバラだ。
私の5倍もあろうかという大きさのものから、私の3分の1くらいのものまで。
私は、小さい方なのだろう。
これが何なのかはわからないが、どうにもこの退屈さだけは我慢できない。
なにもない空間。
誰の干渉もない。
私は、近くの光の玉に触れようとする。
前に進む。
動くのは問題ないらしい。
しかし、どうにも変な感じである。
光の玉にふれる。
感触はある。
視覚、触覚、嗅覚はあるのか…
ならば、味覚と聴覚だが。
味覚は、私自身に舌がないので確かめようがない。
いや、嗅覚があるというのだからたぶん味覚もあるのだろう。
しかし、鼻もないのにどうやって嗅覚を感じ取れるのだろう。
不思議に思うが、今はそれどころではない。
この暗黒の世界。
これから、どうすべきだろう。
この光の玉たちは、自我を持つのだろうか。
もしそれが自我を持ったら、コミュニケーションを取ることもできるはずだ。
私は、近くの光の玉に触れながら考える。
あたりを見回す。
なにか手がかりはないだろうか。
音。
そもそも、音とは何だったのだろうか。
自分は、音がどんなものかも忘れてしまったようだ。
…
なるほど。
音は、聞こえないと思ったほうが良さそうだ。
なら、ここでどうやって生きていこう?
次にやるべきことは、他の光の玉が自我を持つかどうかの確認だ。
ふむ。
おーい、こんにちは〜。あなた誰ですか〜。
…
まあ、そうだよね。
伝わるわけないよね。
うーん。
どうにかして意思疎通を図れないか。
その時だった。
遠くで、ぬるり、と大きめの光の玉が動く。
もしかしたら、自我があるのかもしれない。
私は希望を胸に抱き、その光の玉に近づく。
光の玉は、どうやら私には興味がないらしい。
そのかわり、他の小さめの光の玉に向かっていった。
大きい方の光の玉が、体を膨れさせる。
そして、それに気づいた小さい光の玉はその場をさろうとする。
序列的なものがあるのだろうか?
本当は、そんな生ぬるいものではなかったのだ。
膨張した光の玉は、そのまま小さい光の玉を取り込む。
最後の断末魔とばかりに、小さい光の玉は輝いた。
一瞬後。
そこには、先程よりより輝きを増した、大きい光の玉があった。
…
光の玉は、またゆっくりと私の方に進み始める。
まずい!!
私は全速力で逃げ出した。
にじみ寄る光の玉。
なんとかして、逃げないと_!!
この光の玉を抑える方法があれば__!!
でも、そんな都合の良い方法があるわけがない。
だったら、前に進むのみだ。
私は全力で、もう一度進み始める。
幸い疲れは感じないようだ。
光の玉であったことに感謝する。
だが、疲れを感じないのはむこうも同じようで、いつまでたってもこれじゃいたちごっこだ。
埒が明かない。
とりあえずなにか考えつくまで、走る!!
走れ、走れ、走れ__!!
そうだ、他の小さい光の玉を犠牲にすれば、私は生き残れるはず__
でも、そんなことして本当にいいのか?
いや、まずは生き残ることが先決!!急げ!!
そして最も近くの光の玉にたどり着く。
幸いそちらの光の玉のほうが大きかったようで、大きい光の玉は興味をそちらに移したようだ。
はぁ、はぁ。
よかった〜
しかし、ここで生き抜くのは相当難しそうだ。
私も、他の光の玉を食うしかない。
少し罪悪感はあるが。
仕方ない、やるしかない。
まずは生き残らないと!!
そして私は近くの私より小さい光の玉に歩み寄った。
さて。
歩み寄ったはいいものの、どうやって食うか。
あの大きい光の玉を真似してみよう。
体の内部をふくらませるイメージかな?
うーん…
いや、自分自身が意図的に大きくなるイメージ?
やってみよう。
大きくなれ!!
すると、視点が一気に上に上がる。
成功だ。
このまま、捕食!!
いけぇ__!!
バチン
はぁ?
弾かれたよ。
もう一回。
バチン。
痛っ。
くそっ、ならば包み込み作戦だ!!
少しぐらい、ダメージ負ってもかまわない!!
形を変えて…
よし、ダメージ覚悟で突っ込む!!
うおおおお!!
バチッ
痛い!でも行けそう!!
吸収!!
刹那、急に体が大きくなるような感覚。
やった!!
成功だ!!
《パリングエレメント:NONAME(エキストラ固体)討伐成功。exp100ゲット。Lvが3上昇。スキル『パリィ』獲得。》
は?
この世界、Lvとかいう概念あんの?
ってことは、ステータスもあるのか?