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人形が往く、異世界ぶらり旅  作者: 矢田ウミヒト
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昔から人形のようだとよく言われてきた。

おとなしくて可愛いよい子といわれることもあったし、何を考えているかわからなくて不気味だと気味悪がられることもあった。だがどちらにせよ人が私に抱く第一印象は「人形のようだ」だったのだ。

実際私はあまり感情を表に出さずに生きてきた。常に自分よりも他人を優先させてきたし、そもそも何かに心を動かされるということがほとんどなかったからだ。

望んでこのような生き方をしていたわけではない。私だって趣味を一つぐらい作ってみたり、友達と笑いあったりしてみたかったが結局なんだかんだと理由をつけて動かなかったのだ。

まあ人生なんて何もかもうまくいくほうが珍しい、こんなものかと特に未練もなく老衰で息を引き取ろうというときに、妹からこんなことを言われた。

「結局、お姉ちゃんが何を好きなのか何を考えて生きているのかサッパリわからなかったなぁ。」

衝撃だった。

私を分からないと言った妹にではない。それを聞いた時自分が何が好きで何が得意で何が苦手で何が嫌いでなどといったことが全くうかんでこなかった自分の人生の空虚が驚きだったのだ。妹が私を分からなかったのも無理はないとどのつまり私という人間の中身はまるで人形のように空っぽだったのだ。

このまま空っぽのまま何もなく死んでいくのが無性に怖くなった。生まれて初めて神に祈った。

このまま死んでいくなんて、嫌だ。どんな形でもいいから私という人間が存在したということを誰かに知って欲しいと。だがそんな私の願いも空しく意識は暗転していった。


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