5.男性
長らく投稿できず、すみません。
話の方向性が決まってきたので執筆を再開します。
「ミスト、緊張しているのかい?」
ルーゼの後に着いて行きながら、辺境伯がいらっしゃるという部屋に向かう。
その道中に、私の顔が強張っていたのかルーゼに声をかけられた。
「....はい、緊張しています。あ、挨拶の仕方などがわからないのですが、目上の方にはどのように挨拶すればよいのでしょうか....?」
私は礼儀などに対する教養がない。
貴族様への挨拶仕方など、まったくわからないのだ。
するとルーゼはそんな私に微笑むと、私の頭を優しく撫で始めた。
「大丈夫。辺境伯は子供好きとして有名な男性だ。年端もいかない少女に、礼儀だの作法だのを問う方ではない。緊張しなくても大丈夫だよ」
ルーゼの保証に私は安心する。
そして同時に思う。
男性....辺境伯は男性なのか....
私は男性という存在をよく知らない。
お母さんがよく読んでくれた物語に、男性は出てきてはいた。
茨のお城に囚われたお姫様を助ける王子様。
魔法の絨毯を使い、世界を駆ける吟遊詩人。
それらが男性と呼ばれる人物であることは知っていた。
だが現実では男性と呼ばれる人物に、私はあったことがなかったのだ。
だから私は男性という存在に、あまりピンとこない。
お母さん曰く、自分たちと村にいる人たちは、全員女性らしいのだ。
そして自分たちの種族は外の人たちとは少し違い、男性はいないのだとか。
ただ、外の人たちの中には男性と呼ばれる、自分たちとは体つき、声も違う人が存在する。
そして男性は自分たちの種族にとって、とても大切な存在だと言っていた。
ルーゼは女性であろう。
お母さんのと一緒で、胸に柔らかな双丘がある。
では男性とは、あの怖い人たちのことなのだろうか?
鎧で体格こそはよくわからなかったが、声は今までに聞いたことのない低い声をいた。
だとすれば、辺境伯に会うのは少し怖い....
そう思考していると、ふとある疑問がわいてくる。
いや、そもそも何故、私たちの村には男性がいなかったのか。
お母さんは自分たちの種族は外の人とは少し違い、男性はいないと語っていた。
私たちの村の住民が、人とは違う種族であることは理解していた。
理解したのは、ほんの少し前。
私の村の大人たちは皆、全員頭には黒い小さい角と、肩甲骨部には黒い蝙蝠のような羽、尾骨部には悪魔のような黒い尻尾が生えていた。そして下腹部にある桃色の紋様。
私と、私の同い年くらいの子供たちはその特徴を有してはいなかったが、大きいお姉ちゃん位の歳の子からは全員その特徴が出現している。
だがしかし物語に出てくる『人』と呼ばれる人物たちは、大人でもその特徴を有していない。
物語でその特徴を持っていたのは、世界を恐怖に陥れる魔王。
主人公たちを卑しく騙し、破局させようとする悪魔たちなど、怖く悪い者たちが持っていた。
そのことで私は疑問に思い、自分たちは悪い者の仲間なのかとお母さんに訊いてみたが、お母さんはただ苦笑いをし『大丈夫、ミストはいい子だから。いい子にしていれば、誰も貴女を悪い者とは言わないわ』と頭を撫でてはくれたが、いまいち的を射た返答ではなかった。
まぁとにかく、そのことから私たちは人と呼ばれる種族ではないことは察してはいた。
だがしかし人には男性がいて、私たちには男性がいない。
だけど私たち種族にとって、男性はとても大切....
....わからない。いくら考えても答えは浮かばなかった。
男性が大切なら、人と同様に男性という存在を自分たちの種に用意すればいい。
人と違う故に用意できないのか。可能だが敢えてしていないのか。
....今考えても無意味なことか。
「ミスト。辺境伯が居られる応接室に着いたよ」
思考に浸っていると、前を行くルーゼから声を掛けられる。
私は目の前にあるドアに目を向けると、少し驚いて固まった。
とても豪華な扉だ。
木の木目を活かしたシックな板に、きらきらと輝く黄金の枠組みが威厳を醸し出している。
大きく絢爛な作りだった。
「ふふ....ミストの驚く顔はとても愛くるしいね。他の部屋と違って豪華な扉だろう。ここは客人も迎えたりしているからね。見栄を張るために豪華なんだ」
そう言いながらルーゼは、再び私の頭を撫でる。
「まぁ結局は雰囲気だけだ。公的な挨拶じゃない。さっきも言った通り緊張しなくていい。それでも緊張するなら、ここで一度深呼吸をしてから入ろうか」
ルーゼの言った通り、少し深呼吸をする。
辺境伯....いったいどの様な方なのか....
「よし入ろう....ギラベア辺境伯。ルーゼ・ハインです。少女を連れてまいりました」
『来たか。入ってくれ』
ルーゼがノックをすると、扉の向こうから声がする。
「失礼します。さぁついておいで」
ルーゼが扉を開き、部屋に入る後に続き、私も部屋に入った。
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