10.これからの生活
お久しぶりです。
ギザベア辺境伯家の屋敷に厄介になって、五日の時が過ぎた。
兵舎の一室で生活し、美味しいご飯を食べ、暖かいベッドで寝たことにより、私の体力は十分に回復していた。
そして今日から、以前ルーゼが言っていた私を屋敷で雇うための適性試験がある。
私が何が得意で、何に向いてるのかを確認するとルーゼは言っていた。
心配するほどでもないのかもしれないが、私は今非常に緊張している。
私が得意なこと。
それが全く思い浮かばないからだ。
ルーゼは私がなる職業について、侍女や騎士を挙げていたが、私はそれをこなせる自信がない。
侍女は優雅に主人のためにお茶を入れ、どんな時も涼やかな表情で家事をすることを求められるのだろうが、私は元々の家ではお茶も入れたこともないし、まともな家事の経験もない。
騎士だって、誇り高く勇ましく、有事の際には主のために剣、ないし槍を振るわなければならないかもしれないが、私にはそんな勇気はない。
厄介になる前は、この屋敷で雇ってもらおうと思っていたが、よくよく考えると私に長所と言えるものはなかった。
適性試験を受けて、私に何の適性がないと判断された場合どうしよう。
そんな不安が頭の中にぐるぐると留まっている。
そんなことを考えながら、兵舎にある食堂で朝食をとっていると私の正面に人影が現れた。
「あはよう、ミスト。正面の席に座ってもいいかい?」
ルーゼだ。
私はパンを口いっぱいに含んでいて返事が出来ないので、分かりやすいように大きく頷いた。
「ふふ....ありがとう。では座るね」
彼女は両手に持ったお盆をテーブルの上に置く。
お盆の上には、目玉焼きとベーコンとサラダ、トーストにバターとオレンジジュース、とても豪華なメニューが並んでいた。
まぁこの屋敷では豪華ではなく、むしろ少ない量の朝食なのだが....
私は口の中のパンをよく噛んで飲み込んだ後、ルーゼに挨拶した。
「おはようございます、ルーゼ。ルーゼと朝食を食べることが出来て、私もとてもうれしいです」
「そう言ってくれるなんて、こちらこそとても嬉しいよ」
そういって、トーストにバターナイフでバターを塗るルーゼ。
私は本日ある適性試験の内容が気になったので、質問をした。
「あの、一つよろしいですか?」
「なんだい?」
「今日からある適性試験は、いったい何をするんですか?」
私の質問にルーゼは頷く。
そして説明をしてくれた。
「あぁその話か。簡単に言えば職場体験かな」
「職場体験?」
「そう」
ルーゼは私に向けて手のひらを見せる。
「君に体験して貰う職種は四つ。侍女、騎士、魔術師、庭師だ」
ルーゼは職種名を言うたびに指を折り曲げていき、計四つの指が折れた。
「それぞれを一日ごとに体験していって、最終的に君が気に入ったの、やってみたいことを決めるというものだ。まぁ騎士と魔術師はある程度の才能も考慮しないといけないが....基本は君の意思を尊重するよ。なんと一か月の研修付き。職に就いた後でも、辞めたいや変えたいなどの要望もちゃんと聞くから安心してほしい」
なるほど....
ガチガチの試験、というわけでもないようだ。
向いてないから出て行けなんて言われないらしい。
「職に就いたとしても、急に本格的な仕事をしてもらうわけじゃないよ。君は五歳だ。見習いとして簡単なことを日々こなしながら、学んで出来ることを増やしていって、数年単位で立派になっていければいいと思うよ」
私の年齢も考慮して、やることは絞ってくれる。
安心の保証付きだ。
「それに君には、ギザベア辺境伯の従者として最低限のことは出来るように、毎日のお勉強もあるからね。文字、算術、マナー、剣術、魔術、宗教、魔物、薬学。これらを日替わりで毎日勉強してもらうから、職業に割く時間もあまり取れない。だから気楽に構えてもらってもいい。むしろ今後頑張らないといけないのは勉強だ」
勉強か....大変になるとは思うが、学ぶことは生きていくことに直結する。
その機会をくれることは大変ありがたい。
「そうですか、そこまでして下さりありがとうございます」
「いやいや、私はお礼を言われる立場じゃない。全て計らってくれたのはシェヘル様だよ」
そうしてルーゼの説明に納得した私は、食事を再開する。
ルーゼも食事を再開する。
私たちはその後、他愛のない会話をしながら食事を楽しんだ。
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