偶像崇拝
フィクションです
私の恋愛は、一言で言えば異常である。
それに気づいたのは小学四年だったか、五年だったか、ともかく性の目覚めの前後あたりの頃だった。
私の姉は非常に優しく、面倒見が良く、いい匂いがして、どこを触っても柔らかくて、、
女神だった。
彼女は私にとても優しく、どこまでも理想の姉で、それゆえ彼女が姉であることは、私にとって最大の幸福であり、不幸でもあった。
彼女は優しい。姉だから。彼女は私に抱きつく。姉だから。彼女はかじったアイスを分けてくれる。姉だから。
全ての愛は兄弟愛によってのみ説明された。
ある時、私はおかしくなった。
いつも私の頭を撫でる、細くて柔らかい指先が、ある時、とても性的なものに思えた。
いつも風呂上がりにうろつく彼女の肌が、とても煽情的に見えた。
私に背後から抱きつく姉の体に、どうしようもないくらいに女性を感じた。
幼いながらに、彼女を愛した。たまらなく好きだった。
しばらくして、彼女が思春期に入っても、彼女は優しかった。
多分、愚痴をこぼすいい相手だと思ったのだろう。私はそれがたまらなく嬉しかった。
親や友達の不満をこぼす姉を、私はじっと眺めていた。話には適当に同意して、上の空だった。
色っぽい唇。膨らみ始めた胸。丸みを帯びてきた下半身。
全てが完璧で、私はさながら偶像鑑賞をしているようだった。
そんな私の様子を見て、姉は何だか申し訳なさそうに、ごめんね。こんな話ばっかりして、、というのだ。
全然構わないよ、と言うと、彼女は安心したような、喜ぶようなはにかんだ顔を見せた。
この顔は僕にしか見せないんだろうと思うと、どうしようもなく興奮した。
僕の気を知らない姉は、聞いてくれてありがとう、と言わんばかりに私を抱擁した。
その小ぶりながら膨らんだ胸を顔に寄せられ、それは彼女にとっては最大級の慈愛と感謝の表現だったのであろうが、私はそれを思い出して何度もオナニーした。
彼女が高校生になると、親は姉に、彼氏はできないのか、気になる人はいないのか、と聞くようになった。
そう言う会話を聞くたびに、私はどうしようも無く落ち込んだ。
もうこの頃には、私が彼女と結ばれることがないとは理解していたし、彼女が私に何の恋愛的感情を向けていないこともわかっていた。
だからこそ、私は彼女に男ができるかもしれない、と言う事実に怯えていた。
絶対にゲットできない宝を、誰かが持ち去っていくかもしれない。
そんなことがある日起こるかもしれない!!しかも彼女はとびっきり幸せな顔をするだろう。
耐えられない、と思った。世界一自己中心的な焦りで、不安で、誰にも言えない思いだった。
彼女は相変わらず優しかったが、スキンシップは減った。
私が近づくと、あくまで嫌がってないよ、という感じを出しながら、そっと離れた。
私は絶望した。もう彼女と触れ合うことはままならないのだと思った。
同じ家にいながら、無限の距離があった。
私は変わった。
姉とは日常的な会話しかしなかった。
代わりに、もっと陰湿になった。
脱衣所の彼女を盗み見た。彼女の脱いだ下着に欲情した。彼女の寝顔に欲情した。
当然と言えるだろうが、彼女はそう言う空気を感じ取ったのだろう、私と話さなくなった。
話さなくなればなるほど、私は卑屈に、陰湿になった。
愚かにも、姉が自分を受け入れさえすれば、と思った。
そんな中、いいこともあった。彼女は、目下男性に興味がない、と言うことを親に言っていた。
嬉しくてたまらなかった!
彼女の貞操は、恋愛は他でもない彼女によって閉じられているというではないか!
しばらく私が忙しくしても、彼女からひっついてくることはなかった。
私はもはや、彼女のぬいぐるみでも、話し相手でもなくなっていた。
私は、ただの弟であった。
彼女は大学進学を機に家を出て、一人暮らしをしている。
バイトの仲間がいるとか、大学で友達ができたとか、そういう話も私にしてくれるようになった。
どうやら物理的距離によって、正常な兄弟関係に戻ったらしい。
でも私は、そういう話を笑顔で、少しづつ傷つきながら聞いている。
姉よ。どうかいつまでも。私だけの姉でいてくれはしないか。
ノンフィクションです