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オーバーラップ〜外伝〜  作者: 杏 烏龍
11/14

年始ショートストーリー『しのぶ』

オーバーラップのキャラクターで年始SSを二本書いてみました。時間軸は同じですが視点キャラが違います。あなたのお好みは『かえで』『しのぶ』?

 東堂しのぶより


 皆さま、新年あけましておめでとうございます。

 今年もサイト『五里のさと』と『オーバーラップ』をよろしくお願いします。

 

 お正月は皆さんどのように過ごされていますか?

 私は高校に入ってから新年は同級生と一緒に新年限定のアルバイトをしています。感の良い方はお察しと思います。そうです。家の近くの神社で巫女さんになっています。

 まあ、普段部活で稽古着に袴ですから、格好もそれほど違和感がなかったので同級生のゆーこに誘われるまま巫女になってみたら結構楽しくて今年もすることにしました。

 ところがです。大晦日になってゆーこが急遽家の用事で三が日にこられなくなりました。

 神主さんもいきなりだったのでほとほと困ってしまわれて、私に誰か代わりの人を連れて来て欲しいと頼まれました。もともと巫女さんは私とゆーこを含めて五人しかいないので、私もかなり焦りました。

「いきなり言われましても……」

「そこを何とかならないでしょうか?東堂さん。同級生がダメなら先輩とか後輩とか?」

「先輩はもうすぐ受験なのでアルバイトをしている暇が有りませんよね。後輩なら……。えっ後輩? そうだ!」

 私はちょっと強引とは思ったのですが、後輩ならこの子だと思う子に電話をかけました。

「あっ、西園寺さん? 東堂です。いきなりで申し訳ないのですが、明日から三が日時間空きますか? 私と一緒に桜丘神社で巫女のアルバイト手伝ってほしいのですけど」

 西園寺さん。いきなりの電話だったのでかなりあわててたみたい。でも少し間をおいてから、

「はい。先輩のお願いなら喜んで」

 良かった。でも一つだけ気がかりなことが……。

「ありがとう。でも無理しないでね。中村くんや北条くん達と初詣の約束しているならこの話断ってくれてもいいから」

 すると彼女は間髪入れずに

「大丈夫です先輩! アイツのことなんか気にしないでください!」

 うわっ! また中村くんとケンカみたい。なんかいつもあの二人はケンカしているみたい。まあ、ケンカするほど仲が良いっていうけど。

「引き受けてくれるのね。ありがとう。お願いします。じゃあ明日の朝に神社の社務所まで来てね」

 なんかちょっと悪かったかなぁ。


 元旦になりました。私と西園寺さんは桜丘神社で巫女の衣装になり、初詣に来られるかたにお神酒やお守りを授けるところでの仕事です。最初はお互いなんとなくぎこちなかったけど(私は一年ぶりなので手順をかなり忘れていました……)、そのうちに慣れてきたのと参拝の方が落ち着いてきたので小声で話す余裕が出てきました。

「西園寺さん大丈夫?」

「はい。最初は戸惑いましたが、大丈夫です。それにやっと笑顔もできるようになりました」

「最初はかなり緊張したけど慣れると面白いでしょ。ちょっと不謹慎だけど」

「なんか、かなりクセになりそうですよ。この格好。ふふふ」

「じゃあ来年もお願いしようかな。私受験だろうし来れるかどうか」

「あっそうか! 先輩今年三年生ですよね。じゃあ来年私なぎなた部の子を誘ってみます」

「西園寺さんに頼んで良かったみたい。なんかホッとした。ちょっと強引かなと思ってたの」

「いいえ! ご紹介ありがとうございます! 私がんばります!」

 しばらくすると少し西園寺さんの顔が曇った。どうやら中村くんと北条くんがやってきたみたい。二人とも私たちに気がついたみたい。

「りょ、竜太はん!」

「えっ! かえで?しのぶ先輩」

 西園寺さんツン!として二人に目をあわさない。どうやらかなり怒らせたみたい・・・。二人はそのまま前に来て、

「すみません。お守り三つください」

「どのお守りでしょうか? 学業成就、厄除祈願、交通安全、家内安全などがありますが(ギロッ)」

「じゃあ、学業成就で」

「では千五百円をお納めお願いします(ツン!)」

「はい」

「ではお守り三つですね。ようこそお参りいただきました(ツン!)」

「かえで……。ごめんな。これ」

「えっ?」

 中村くん、いま彼女から受け取ったお守りの一つを渡して、

「北条に叱られたんだ。かえでの気持ちも考えろって。今までかなりしてもらっているのに。去年はなぎなた折ったり、泣かしたりいろいろして。ホントごめんな」

 すこし沈黙の後、彼女すこし笑顔になって、

「ううん。私もちょっと言い過ぎたかな」

 うんうん。仲直り。まあ結局仲が良いのね、この二人は。 

 私は西園寺さんの袖をすっと引っ張って、

「ちょっと人が少なくなってきたから西園寺さん休憩してきて」

「えっ先輩? でも……」

「ほらほら、また夕方からも参拝する人が増えてくるから今のうちに行ってきて」

「じゃあ、先輩ありがとうございます。すぐ戻ってきますから」

「いいのよ、ゆっくりでここは大丈夫だから、中村くん一緒に行ってあげて」

 西園寺さんと中村くんの2人は社務所に向かっていった。その後ろ姿を北条くんがそっと見つめていた。

 北条くん。かなりつらい立場なのに。なんか『がんばれ』って言いたくなるわね。

「北条くん」

「はい?」

「これ、私から受け取って」

「これって?」

「『大願成就』のお守り。がんばってる北条くんに」

「ありがとうございます先輩。何でもお見通しやなぁ。じゃあうちもいきますんで」

 すこし照れくさそうに笑う北条くん。私からそっとお守りを受け取ってゆっくりと二人の後をついていった。

(北条くん。大丈夫。あなたの優しさはきっとわかってくれるはずよ)

 そこまで想ってもらえる西園寺さんを少しうらやましく思った。私も早くそんな人現れないかなぁ。まあ当分無理かなぁ?

 三人を見送りながら私はまた巫女の仕事に戻った。


 今年もよろしくね。みんな。

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