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オーバーラップ〜外伝〜  作者: 杏 烏龍
10/14

年始ショートストーリー『かえで』

オーバーラップのキャラクターで年始SSを二本書いてみました。時間軸は同じですが視点キャラが違います。あなたのお好みは『かえで』『しのぶ』?

 西園寺かえでより


 皆さま、新年あけましておめでとうございます。

 今年もサイト『五里のさと』と私たちの『オーバーラップ』をよろしくお願いします。

 

 お正月は皆さんどのように過ごされていますか?

 私は無事高校に入学できたので、ゆっくりとしたお正月を過ごそうと考えていました。

 でも……。ごめんなさい。今、私怒っています。

 原因はアイツです。そう。私にとってかなり手のかかるアイツ。竜太です。

 大晦日の朝、携帯に無遠慮に電話をしてきました。

「かえで、オレオレ、竜太」

『オレオレ』って振り込め詐欺みたいにいきなり電話してこないでよ! でもそれくらいなら、いつもの事だし何も怒ったりはしないんだけど。

「明日の元旦暇? まあかえでなら暇だと思うけど、俺と剣二と一緒に初詣に行かない?」

 えっ、二人で私を誘ってくれるの? まあ、暇だと思われるのはしゃくにさわるけど、せっかくご指名で誘ってくれるんだから行ってもいいかと。

「どこに連れて行ってくれるの?」

「ほら、学校の近くの『桜丘神社』あそこ結構有名だろ? 一回行って見たいと思ってたんだ」

 たしかに『桜丘神社』は学校の近くでは有名だ。でもうちの近所の『鹿島神社』は武道の神様をお奉りしていて、今の私たちにはうってつけと思ったんだけど……。

「『鹿島神社』の方が近いからそこにしようよ」

「えっ? でも俺たちは『桜丘神社』に行きたいんだよ」

 これはアヤシイ。何か訳がありそうだ。わざわざ遠いところに行きたがる。普段そんなに出歩かないアイツなのに……。これは何かあるね。

「竜・太・く・ん。なにか隠していない?」

「え゛別に……」

 アイツは『別に』と言うとたいがい隠し事をしている。

「桜丘神社に行かないといけない理由を言わないと、私行かない」

「なんだよ! せっかく誘ってやったのに! もう俺と北条とで行くから」

「逆ギレしないで、なんなの理由は」

「……」

「訳は何!」

「し、しのぶ先輩が、いるから」

 これで私はカチンときた。なによ、東堂先輩がいるですって? 聞けば巫女さんのアルバイトをしているからだって。別に隠さなくても私たち共通の先輩だからいいじゃないの?素直に『東堂先輩がいる神社に初詣に行こうよ』と普通に誘ってくれたら良かったじゃないの!!

「だって、おまえすぐ怒るだろ」

 これでもう完全に頭に来た私は

「二人で勝手に初詣に行って来たら。思いっきりハナのばしてね!!」

 そう言って私は携帯を切った。


 ……。

 あ~あ。またやっちゃった……。本当は誘ってもらえてうれしかったのに……。

 ごめんなさい。変な話を新年早々からしてしまって。今はもう怒ってなんかいません。

 

 電話を切った後すぐにまた携帯が鳴った。また竜太かと思ったら東堂先輩からだった。

「あっ、西園寺さん? 東堂です。いきなりで申し訳ないのですが、明日から三が日時間空きますか? 私と一緒に桜丘神社で巫女のアルバイト手伝ってほしいのですけど」

 私、いきなりだったのでびっくりしてしまって、思わず返答できなかった。

 さっきまで東堂先輩のことでアイツとケンカになったから。でも先輩、困っているみたいでわざわざ私のところにかけてきていただいたので、巫女さんのアルバイトを引き受けることにしました。予定も無くなったから。

「はい。先輩のお願いなら喜んで」

「ありがとう。でも無理しないでね。中村くんや北条くん達と初詣の約束しているならこの話断ってくれてもいいから」

 先輩すみません、さっきケンカしたんです。そんな気を遣ってくれる先輩に悟られまいと私は急いで答えました。

「大丈夫です先輩! アイツのことなんか気にしないでください!」

「引き受けてくれるのね。ありがとう。お願いします。じゃあ明日の朝に神社の社務所まで来てね」

 やっぱり先輩にはバレているかも知れない。


 元旦になりました。私は朝に桜丘神社に行き、東堂先輩に教えられるまま巫女の衣装に着替えて初詣に来られるかたにお神酒やお守りを授けるところで先輩に教わりながら仕事開始です。

 最初はホント何もわからずで、先輩の見よう見まねでした。表情もなんとなく固かったと思います(ごめんなさいこられた方。なんかむずかしい顔していたでしょう)。東堂先輩も久しぶりでぎこちなかったみたい。でもそのうちにお互い慣れてきたのと、参拝の方が落ち着いてきたので先輩から小声で話しかけても答えるだけの余裕ができてきました。

「西園寺さん大丈夫?」

「はい。最初は戸惑いましたが、大丈夫です。それにやっと笑顔もできるようになりました」

「最初はかなり緊張したけど慣れると面白いでしょ。ちょっと不謹慎だけど」

「なんか、かなりクセになりそうですよ。この格好。ふふふ」

「じゃあ来年もお願いしようかな。私受験だろうし来れるかどうか・・」

「あっそうか! 先輩今年三年生ですよね。じゃあ来年私なぎなた部の子を誘ってみます」

「西園寺さんに頼んで良かったみたい。なんかホッとした。ちょっと強引かなと思ってたの」

「いいえ! ご紹介ありがとうございます! 私がんばります!」

 来年もこの仕事を先輩から引き継いでやってみようと思いました。来年は誰を誘おうかな?と考えていたら、向こうのほうから竜太と北条くんがやってくるのが見えました。もちろん私がここにいるのは彼らは知りません。二人とも私たちに気がついたみたいで、

「りょ、竜太はん!」

「えっ! かえで? しのぶ先輩」

 昨日の今日の事だし、私はわざとそっけないフリをすることにしました。二人は私の前にやって来て、

「すみません。お守り三つください」

「どのお守りでしょうか? 学業成就、厄除祈願、交通安全、家内安全などがありますが(ギロッ)」

「じゃあ、学業成就で」

「では千五百円をお納めお願いします(ツン!)」

「はい」

「ではお守り三つですね。ようこそお参りいただきました(ツン!)」

 やっぱり昨日のことがまだくすぶっていて、フリをしていたらだんだん怒っているみたいになってきました。でもお守りを受け取ってから急に竜太が私にお守りの一つを差し出して、

「かえで……。ごめんな。これ」

「えっ?」

「北条に叱られたんだ。かえでの気持ちも考えろって。今までかなりしてもらっているのに。去年はなぎなた折ったり、泣かしたりいろいろして。ホントごめんな」

 意外だった。こんなに素直に謝ってくれるなんて。

「ううん。私もちょっと言い過ぎたかな」

 素直に謝ってくれたので自然と私も素直に答えられた。自分でも驚くくらいに。

 すると、東堂先輩が私の袖をすっと引っ張って、

「ちょっと人が少なくなってきたから西園寺さん休憩してきて」

「えっ?先輩。でも……」

「ほらほら、また夕方からも参拝する人が増えてくるから今のうちに行ってきて」

「じゃあ、先輩ありがとうございます。すぐ戻ってきますから」

「いいのよ、ゆっくりでここは大丈夫だから、中村くん一緒に行ってあげて」

 私たちは先輩にせかされるように休憩場所の社務所に向かった。少し遅れて北条くんがやって来た。

(いったい北条くんは竜太に何を言ったんだろう?)私は竜太や北条くんに聞いてみたかった。

 でも、今日はやめることにした。

 お互い素直になれたし、仲直りもできた。これも先輩と北条くんのおかげなのかな? なんか新年早々みんなに迷惑かけてごめんなさい。これだけは言っておかないと。さあ、少し休憩してまた先輩のところにもどろう! それと、仕事が終わったら先輩も誘ってみんなでここに初詣に行こうと言わないと。せっかくみんな集まっているんだから。こんなわがままなら許してもらえるよね。

 

 今年もよろしくお願いします。東堂先輩。北条くん。そして竜太。

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