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第72話 鉄拳制裁

「カルメンさーん! バーツさーん! トリルさーん! 今すぐ模擬戦はやめてくださ……って、あ、あれ?」


「あ、ジュナさん。そんなに慌ててどうしたんですか?」


「俺達、模擬戦の審判を頼まれたんですけどめちゃくちゃ凄かったっすよ! 一瞬だったんですけど、ホントもう凄かったっす!」


 カティアが審判役を頼んでいた2人が、慌てた様子で訓練場にやって来た受付嬢に話し掛けた。

 一方のジュナと呼ばれた受付嬢の方はというと、俺とカティアを見るや否や、一目散にやって来て深く頭を下げた。


「本当に、本当にすみませんでした……! うちのギルドの者が申し訳ありません! 大丈夫でしたか!? 怪我とかしてませんか!? うちのギルド、潰されちゃったりしませんか!?」


「えっ、あ、うん。私は全然大丈夫だからそんな頭を深く下げないでよ」


 目に涙を浮かべながら謝ってくる受付嬢の余りの勢いに、俺もカティアも困惑するばかりだった。

 審判役を頼まれていた2人や、野次馬として訓練場に来ていた冒険者も不安そうな視線を受付嬢に向けていた。


「ディーくん! カティアちゃーん!」


 ギルドを潰すって何の話だろうと思っていると、少し遅れてフィリアとリサラがやって来た。


「物凄い衝撃音がしましたけど、2人とも大丈夫だったんですか?」


「見て分かるようにカティアは大丈夫だよ。俺もただカティア達の模擬戦を見てただけで、何もする事なかったし……」


 リサラにそう答えて、ふと訓練場の入り口に視線を向けた時だった。

 30〜40代くらいのかなりがっしりとした体格の男が訓練場に新たにやってきた。


「あ〜っ! 来るのが遅いですよ、ギルドマスター!」


 すると、男の姿に気付いた受付嬢が大きな声で呼び掛けた。

 どうやらあの男がこの冒険者ギルドの代表らしい。


「別に俺が急いだ所で状況は特に変わんねえだろうが。はぁ……」


 そんな言葉を呟きながらギルドマスターと呼ばれた男は俺達の前を通り過ぎていき、そのまま一直線に冒険者3人組の所に向かい、


「ったく、この3バカどもがっ!」


「いでっ!?」


「んぎっ!?」


「あがっ!?」


 ガン、ガン、ガンッとリズム良く冒険者3人組の頭に拳骨を落とした。

 勢い良く拳を落とされた3人組は、全員仲良く頭を押さえて悶えていた。


 うわぁ……。あれはかなり痛そうだ。見ていたこっちまで頭を押さえたくなった。


「うちのバカどもがとんだ迷惑掛けて悪かったな。ギルドマスターとして謝らせてくれ。悪かった。念のために聞くが、そっちの2人は特に怪我とかはしてねえよな?」


 そして、拳骨を済ませてこちらに戻ってきたギルドマスターは謝罪の言葉を口にしながら頭を下げ、怪我などをしていないか俺とカティアに尋ねてきた。


「うん、私もセンパイも怪我とかは一切してないよー。ただ、木剣は完全にダメになっちゃった」


 ごめんねーと謝罪の言葉を返しながら、カティアはずっと手にしていた木剣をギルドマスターに手渡した。


「これは……。また派手にぶっ壊れてやがるな。一体どう扱ったらこうなるんだよ」


 ギルドマスターは受け取った木剣の状態を確かめながら苦笑いを浮かべた。


 良く見てみると、カティアが渡した木剣には大きなヒビが入っていて、今にも真っ二つに割れそうになっていた。

 これではもう剣として使い物にならないだろう。


「いやー、剣を扱うのってかなり久しぶりだったから、ちょっと力込め過ぎちゃったんだよねー。やっぱり弁償とかした方が良いかな?」


 相変わらずのほほんとした様子で説明するカティア。

 一方それを聞いていた俺達は揃いも揃って軽く言葉を失っていた。


「……。いや、その必要はねえよ。この木剣は冒険者志望の連中をテストする時に使うものだし、倉庫の方にまだいっぱい余ってるから、1本くらいダメになろうがこっちは全く気にしねえよ」


「そっか。なら良かった〜」


「んじゃ、本題の依頼の説明もあるから俺の部屋に来てくれ。ジュナ、案内の方は頼んだぞ」


「は、はい! 分かりました! それでは皆さん、ご案内します!」


 気を取り直した様子のギルドマスターは、受付嬢に指示を出した。

 こうして多少のハプニングを無事に終え、俺達は受付嬢に案内されて再びギルドの中に戻るのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読んで一つだけ。主人公は登場人物ほぼ全員から見下されているなーと。 今後の布石なのかどうかわかりませんけれどね。
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