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第69話 冒険者ギルドにて

定番のアレです

 まだカティアにやられた肘の辺りがジンジンする。

 骨が折れちゃったんじゃないかと思ったが、カティアの言葉通りそんな事は無かった。絶妙な力加減といい、本当に無駄に器用な奴である。


「ここがこの町の冒険者ギルドですかー」


 一方のカティアはというと、目の前の3階建ての大きな建物を見上げながら呟いた。

 オベールさんの屋敷から町の中を歩くこと数十分。俺達は冒険者ギルドの前にやって来ていた。


 冒険者ギルドとは、各国の都市や町に必ず1つ存在し、冒険者に対して仕事を斡旋したり、活動の支援を行ったり、冒険者を志望する者を受け入れたりする組織のことである。


「とりあえず、中に入ってみよっか」


「そうだな」


 フィリアの言葉を合図に、俺達はギルドの中へ入っていく。


「思っていたよりも人が少ないですね。もう少し人が居ると思ったのですが……」


「だね。田舎ってのもあって、そもそもこの町の冒険者の数が少なかったりするのかもね」


 ギルドの中に入ると、両手で数えられる程度の人数しか冒険者らしき姿は見当たらなかった。

 カティア達の言う通り、単純に冒険者の数が少ないだけなのだろうか。

 それとも、ここのギルドの冒険者の多くが依頼を受けていて、殆ど出払っている感じなのだろうか?


 そんな事を考えながら、俺達はギルドの受付に真っ直ぐ向かう。


「いっ、いらっしゃいませ、港町フェリトアの冒険者ギルドへようこそ!」


 俺達を出迎えてくれたのは、茶髪の眼鏡を掛けた気弱そうな印象の若い女性だった。年齢は俺とフィリアと同じか少し上ぐらいだろうか。


「えっと、貴方達は当ギルドには初めていらっしゃいます……よね? 本日は一体どのようなご用件でしょうか……。あの、も、もしかして冒険者登録をご希望だったりしちゃいますか……?」


 俺達をぐるりと見回した受付嬢は言葉を続けていくうちに、何故か困った様子でおろおろとし始めた。


 まだこちらの用件すら話していないのに、受付嬢のこの反応は一体どうしたのだろうか。


「あ、いえ、私達は冒険者登録をしに来たんじゃなくて、領主様から依頼を受けてやって来た魔術師なんですけど……」


「っ……! もう来てくださったんですね! あぁ、ありがとうございます! これでやっと毎日夜中まで残業しなくて済みます……!」


 フィリアの言葉を聞いた途端に、おろおろとしていた受付嬢は表情を一変してぱあっと目を輝かせ、ガバッといきなりフィリアの手を両手で取り、ペコペコと何度も頭を下げた。


「えっ、あっ、はい」


「それでは私はすぐにギルドマスターを呼んできますので、皆様はこちらで少々お待ちください!」


「わ、分かりました……」


 そして、呆気にとられているフィリアを他所に、受付嬢は矢継ぎ早に言葉を口にしていき、俺達に一度大きく頭を下げてから、ギルドマスターを呼びに上の階に消えてしまった。


「ええっと……。とりあえず、私達はここで待ってれば良いのかな?」


「まぁ、そうなるんじゃないか……?」


 何がなんだか全く分からなかったけど。


 こちらを振り返ったフィリアに曖昧な返事をして、俺達は一旦邪魔にならないように受付の前から離れる事にした。


「それにしても、壊れちゃった冒険者ギルドで一番重要な魔道具って一体どんな魔道具なんでしょうね。冒険者ギルドが魔道具を使ってる印象はあんまりないですけど……」


「ん……? 冒険者ギルドからの頼みって魔道具絡みの話だったの?」


「そうですよ……って、そういえばこの人はオベールさんが話してる途中で部屋を飛び出て行ったから、何も聞いてないんでしたね……」


 カティアの呟きに疑問の声をあげた俺に対して、リサラが呆れたような視線を向け、溜め息と共に肩を落とした。


「その件については悪かったよ。それで、冒険者ギルドに向かって欲しいっていうオベールさんの話って、魔道具の修理の依頼だったの?」


「うん。カティアちゃんが言ったように、冒険者ギルドで一番重要な魔道具が壊れちゃったみたいで、私達に魔道具の修理の依頼をしたいって話みたいだよ」


「成る程ね。あんまり面倒な作業じゃないと良いんだけど……」


 フィリアの説明を聞きながら、俺は頭の後ろで手を組んで、近くにあった依頼書が貼られたボードを眺める。

 薬草の採取、魔物の討伐、素材の調達といった冒険者らしい内容の依頼書から、荷物運び、店番、給仕の手伝いなどといった雑用係みたいな依頼書なども貼ってあった。


 ……冒険者って、こういうお使いみたいな依頼もするのか?


「依頼書をジーっと眺めてどうしたんです? 何か面白そうなのとかありましたか?」


「いや、そういうのは特に見当たらな……」


 側にやってきたカティアに返事をしようとした時だった。


「──美女を沢山侍らせて、さっきから見せつけてくれるじゃねえか。いやあ、羨ましいねえ!」


「……ん?」


 いきなり声を掛けられ、そちらに視線を向けると、そこには軽い雰囲気の3人組の若い男が居た。

ゴロツキから若い男に変更しました

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