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第57話 初めての休日

新章開始

 まだ太陽も姿を見せたばかりで、薄明るい空の風景を窓越しにぼーっと眺める。

 いつもと変わらない朝の時間、いつもと変わらない町の景色。

 だけれども、窓から見る今日の町の景色はいつもとちょっと違って、ほんの少しばかり特別な感じがした。


「んっ、んうぅ〜っ……!」


 俺は酷く凝り固まった体をほぐすように、両手をぐーっと大きく伸ばして、ゆっくりと息を吐き出しながら力を抜いていく。

 そして、背後のベッドでまだぐっすりと寝ている2人を起こさないように注意しながら、俺は噛みしめるように小さな声で呟いた。


「まさか、この日がやって来るなんて……!」


 このフェリトアの町にやって来て、今日ほど清々しい気持ちで眠りから目覚められた日はないだろう。

 何故ならそれは、今まで王都で魔法や魔道具の研究ばかりしていた俺には全くの無縁だったもの。どんなに欲しいと強く願っていても、決して手に入れる事が出来なかったもの。


 そう──今日は()()である!




 ◇




 体力を付けようと決心してから、早くも3日が経った。お陰で全身の筋肉痛も多少はマシになってきた気がする。

 休日という事もあって、いつもより少し遅めの朝食を食べ終えた俺は、一緒のテーブルに座っていたカティア、リサラ、フィリアの3人に、朝早く起きてからずっと考えていたことを尋ねる事にした。


「ねぇねぇ。休みの日って、普通は何をするんだろう?」


 起きてから数時間ほど頭の中で考えてはいたのだが、結局どうするのがいいのかは何も案が浮かんでこなかった。

 なんだか時間の無駄使いをした気持ちにもなってくるが、あまり深く考えない事にした。


「ふわぁ〜、休みの日ですか……? そんなの私達に聞かれても困りますよ〜。今まで休日なんて1度も無かったのに、急に休日の過ごし方なんて聞かれても答えられる訳ないじゃないですか」


 カティアは大きな欠伸をしながら、胸を張るように両手をぐっと上に伸ばして俺の問いかけに答えた。

 確かにカティアの言う通りだった。俺と一緒に休まずに働いていたカティアとリサラの2人に答えられるわけがなかった。


「……フィリアはどう?」


「え、えっ、私!? 私もちゃんとした休日は1度もなかったから、休日をどう過ごすのかなんて聞かれても答えられないよ!」


 隣に座っているフィリアにも尋ねてみたが、フィリアの口からも、カティアと同じような内容の返事が返ってきた。


 そういえば、昨日の帰りにセシルさんが「明日こそちゃんと休んでください」って何度もフィリアに念押ししていた気がする。

 ……なんというか、似た者同士というか、類は友を呼ぶって感じだ。

 まぁ、休み無しで働き続けてきたっていう悲しい集団なんだけども。


「……というより、休日の過ごし方を聞いてくるなんて、一体全体どうしたんですか?」


 すると、俺の斜め右の席に座っているリサラが、頬杖をつきながら尋ねてきた。

 そこに、対面に座るカティアも疑問の言葉を続けていく。


「リサラの言う通りですよ〜。急にどうしたんですか、センパイ。変なものでも食べたか、熱でも出ましたか?」


「いや、そういう訳じゃないんだけどさ。折角念願叶って手に入れた初めての休日だし、どうやって過ごすのが一番いいのかな〜って思ってさ……」


「……態々そんな事を大真面目に考えなくてもいいんじゃないんですか? 何かやりたい事があるなら別ですけど」


「うーん、そういうものかな?」


「そういうものだと思います。休日の過ごし方なんて、人それぞれですよ」


「……じゃあ、そういう事にするか」


 リサラの言葉を聞いて、ふーっと肩の力を大きく抜いてから、俺は大きく体を伸ばす。

 確かに言われてみるとそんな気がしてきた。あんまり深く考える必要はないのかもしれない。


「ねぇねぇー、さっきから何の話をしてるの〜?」


 今日はこれからどうやって過ごそうかなと考え直していると、今度はそこにマリーナがやって来て話に加わった。


「あっ、マリーナ。朝の仕事はもう全部終わった感じなの?」


「うん。あとはお父さんがやってくれるって。それで、カティアさん達は何の話をしてたの? なんか休日が〜とかってのは、うっすらと聞こえたんだけど」


「あぁ、実はね──」


 一番近くにいるカティアが、マリーナに事情を掻い摘んで説明していった。


「成る程成る程……。休日の過ごし方ね〜」


「そうだ。マリーナちゃんは何かいい案とかあったりするかな?」


 フィリアが尋ねると、マリーナはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、自信満々に胸を張りながら答えた。


「もっちろん。私に任せてよ!」


 何だろう。俺は急に面倒な流れを引きよせてしまった気配がしてきた。


「それじゃあ、今から私がディラルトさん達に休日の過ごし方を教えてあげるね!」


 そして、トンと自分の胸を叩いて胸を張ったマリーナの言葉に、俺達は揃って顔を見合わせたのだった。

いつの間にか総合評価が2000ptを突破してました。ありがとうございます

なるべく更新頻度を上げれるよう頑張っていきます

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