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幕間 一方、その頃魔導研究所では

超久しぶりの王都サイドのお話です

 ◇◇◇



 ディラルト達がフェリトアの町で働き始めた頃、王都の魔導研究所では、数年ぶりに多くの魔術師が朝早くから何かに追われるように忙しそうに活動していた。

 そんな余裕の無さそうな研究所の所長室には、各研究室の室長達が集まっていた。


「おい! 1週間も経ったというのに、何処の研究室も何も成果が出ていないとは一体全体どうなっているんだ!」


 第一魔術研究室の室長であり、この魔導研究所の所長も務めるラウス・ゲッシルーは苛立ちを隠しきれず、声を荒げながら自らの机をダンと叩いた。

 それに対して、呼び出された3人の他の研究室の室長達は困惑した表情を浮かべていた。


「そ、そう言われましても、成果が出ていないのは我々の研究室だけではなく、所長の第一魔術研究室も全く同じような状況ではないですか……」


「そうですよ。それなのに、我々だけが一方的に非難されるのはおかしいのではないですか?」


「2人の言う通りだと思いますね。この場で私達に文句を言いたいのなら、所長は毎日何もせずに昼寝などをしないで、しっかりとした成果を出してから言うべきだと私は思います」


 眼鏡の位置を直しながら話す細身の魔術師の言葉に、他の呼び出された2人の室長も賛同するように大きく頷く。

 一方、その言葉を聞いたラウスの顔はどんどんと真っ赤に染まっていった。


「なっ、お、お前ら……! 人が黙って聞いていれば、偉そうに好き放題──!」


 今にもラウスの感情が爆発しそうになった瞬間、時刻を知らせる鐘がゴーンゴーンと2回鳴った。

 すると、顔を真っ赤にしていたラウスはハッとなった表情を浮かべ、慌てた様子で身だしなみを整え始めた。


「所長? 何処かへ行かれるのですか……?」


「俺はお前達と違って、これから陛下に進捗報告をしに行かねばならんのだ。俺が王城から戻ってくるまでに、少しでも成果が出るよう開発に励むんだぞ! いいな、お前ら!」


「ああっ! ちょ、ちょっと所長──!」


 他の室長達に向けてそう言い放ち、ラウスは荒々しく所長室のドアを閉めて、王城へと向かったのだった。




 ◇




 王城にやって来たラウスは、早速謁見の間へと通された。

 謁見の間にいたのは、豪華な椅子に座るエルメイン王国現国王であるアルマール、その側には宰相であり、ラウスの父親でもあるラズミーが立っており、他には護衛の騎士が数名いた。


「開発などで忙しいであろう所を呼び出してすまないな、ラウス」


「いえいえ、これも魔導研究所の所長である私の役目でございますから」


 アルマールはラウスの言葉に小さく頷いてから話し始めた。


「……そうか。では、本題の方に入ろうか。つい最近魔術師の異動などが色々とあったと思うが、現在の魔導研究所の様子はどうなのだ。今回はどのような魔道具などを開発しようとしているのだ?」


「え、あっ、そ、それはですね……」


 予想もしていなかった事を聞かれ、真紅の絨毯の上で(ひざまず)ていたラウスは言葉に困ってしまった。


 何故なら、まだどのような魔道具を開発するのかすらも全く決まっていない白紙の状態だったからである。

 国王陛下が具体的に開発の進捗状況を聞いてくると思っていなかったラウスは、その質問に即座に答えられなかったのだ。


「む……? どうしたのだ、ラウスよ」


「い、いえ、実はまだ開発がかなり難航している所でして……」


 ラウスは顔を上げれないまま、腹の奥から声を絞り出すように国王アルマールの質問に答えた。

 それに対して、アルマールは目を閉じたまま言葉を口にした。


「そうなのか……。久し振りに新たな魔道具の開発に随分と苦労しているようだな」


「え、えぇ。なかなかに難しい所などもありまして……」


「第七はなくなってしまったが、ディラルト達が辞めたわけではないから、研究所の業務などに影響はないと思ったのだがな……。ところで、暫く顔を見ていないが、ディラルトの奴は元気にしているのか?」


「っ……! え、えぇ、ディラルトの奴も元気にしております」


 アルマールの言葉に対して、ラウスは咄嗟に嘘をついた。

 すると、すぐにアルマールの隣にいた宰相のラズミーが話題を切り替えるように口を開いた。


「へ、陛下。魔導研究所が新たな魔道具などの開発に苦労しているのは、あの平み──ディラルトの奴が報告してきたものよりも更に優れた物を作ろうとしているからでしょう。えぇ、我が息子のラウスが所長を務めているのですからそうに違いありません。ここは完成の報告を待つのが宜しいかと……」


「……ふむ、そういう事なら期待して待つことにしようか。では、ラウスよ。今後の報告を楽しみにしているぞ」


「……は、ははっ! お任せください!」


 国王アルマールの言葉にラウスは胃が締め付けられるような思いになりながらも、なんとか言葉を絞り出して、返事をするので精一杯だった。




 ◇◇◇

もう少し書くべきだった気もなくはないです


国王様は第七が無くなったことは理解してますが、ディラルト達がクビになったことはまだ知りません

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