第44話 幼馴染のお願い 2
「フィリア、今日の仕事はもう終わった感じなのか?」
俺はさっきまでしていたストレージについての話を切って、帰ってきたばかりのフィリアに早速声を掛けると、何やらかなり驚いた反応がフィリアから返ってきた。
「うえっ!? あっ、ディーくん……! う、うん、今日の仕事はもう終わったよ!」
「お姉さん、今日は随分と早いんだね〜。いつもなら夜遅くに帰ってくるのに」
「あっ、マリーナちゃんも……。うん、今日は特別に早く上がって良いよって言われたからいつもより早く帰ってこれたんだ」
俺の側にやってきたマリーナの言葉にフィリアは返事をする。そんなフィリアの表情からは疲労の色がかなり見えた。
宿を出てからまだほんの3時間ちょっとしか経っていないのに、フィリアのこの疲れ方を見るにかなり重労働な仕事を任されていたりするのだろうか?
流石に力仕事とかをさせられたりはしていないと思うが、幼馴染としては少しフィリアの仕事が何なのか気になってしまう。
朝食の時にフィリアの仕事をちゃんと聞いとけばよかったかもしれない。
「お勤め御苦労さんだな。ところで嬢ちゃんは昼飯はもう済ませたか? もしまだなら、俺や兄ちゃん達の分と一緒に嬢ちゃんの分も今から作っちまうが……」
今度は親父さんがやって来て、フィリアにもう昼食を済ませたのかを尋ねた。
「あ、お昼ご飯はまだです。……えっと、それじゃあお言葉に甘えて私も一緒にいただいちゃっていいですか……?」
「おう、了解だ。それじゃあ、嬢ちゃんも兄ちゃん達と一緒に適当に料理が出来るのを待っててくれ」
「あ! それじゃあ、私も今のうちにお店の服に着替えてきちゃうね!」
フィリアの返事を聞いた親父さんは、そう言って頷きながら昼食を作るために厨房へ入り、マリーナもあの給仕服に着替えてくると言って自分の部屋に戻っていった。
マリーナと親父さんが俺達の側からいなくなり、2人と入れ替わるようにカティアとリサラが俺の側にやってきた。
「センパーイ、ところでお昼食べた後ってどうしますー?」
「この後というか、どうせなら今後の予定を決めた方がいいのではないですか? この町に着いてからの事は何も考えていないのですから」
「っ……!」
「今後の予定ねぇ……。まぁ、このまま何も決めてないよりかは決まってた方がいいか。それじゃあ、お昼食べたら部屋に戻って今後の事を考えよっかー」
……とは言ったものの、現状俺の頭の中には何も浮かんでこなかった。
リサラが言った通り、のんびりする為に王都からこのフェリトアの町に来たわけだが、町に着いてから先の事は何も決まっていなかった。
適当に新しい魔道具を作るとか? それとも既存の術式の改良をするとか……?
うーん……軽く候補を自分の中で挙げてみたけれど、どれもしっくり来ないというかあまり気が乗らなかった。
さぁ、どうしよう。食後の2人との話し合いで今後の事が決められるのだろうか。
「ね、ねぇ、ディーくん。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな……?」
カティアとリサラから今後の事を尋ねられて腕を組みながら考えていると、フィリアが俺の服の袖を掴みながら遠慮がちに尋ねてきた。
「ん? そんな変に畏まってどうしたんだ、フィリア」
「あ、うっ……。え、えっと、それはその……!」
そう言葉を返すとフィリアは俺から視線を逸らして、恥ずかしそうに頬を染めながらあちこちに彷徨わせ始める。
それからフィリアは意を決したように俺の事を見つめ返しながらフィリアは口を開いた。
「でぃ、ディーくんは明日って何か予定はあるかな?」
「明日? いや、特に何もないぞ。明日がどうかしたのか?」
そう答えた途端、フィリアは嬉しそうにぱあっと目を輝かせながら感極まったように俺の手を両手で握り、
「そ、それじゃあ……! 明日……! 明日私に付き合ってディーくんっ!」
そんな言葉を勢いよく口にしたのだった。
ちょっと露骨というか無理矢理すぎたかなーとか思ったり思わなかったり
そんなわけで4章終わりです。次話から5章に入ります
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