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第43話 幼馴染のお願い 1

「たっだいまー!」


「おう、戻ってきたかマリーナ。まだ準備の途中だから、(あん)ちゃん達も昼飯はもう少し待っててくれよ」


「あ、はい。分かりました」


 町の軽い散策を終えた俺達はマリーナの元気な声と共に宿に入ると、昼食の準備をしていた親父さんに迎えられた。

 エプロン姿ではあるものの、右目に大きな傷のある厳つい見た目の親父さんに出迎えられるとほんの少しだけ身構えてしまう。


「ところでマリーナ、頼んでおいた食器はどうしたんだ。まさか案内に夢中で買い忘れたとかいうんじゃねえよな?」


 食材の下ごしらえをしていた手を一旦止めた親父さんが手ぶらのマリーナに問いかける。

 その問いかけに対して、マリーナは俺の左腕に抱きつき、


「お皿はちゃんと買ってきましたよーだ。お兄さん、うちのお父さんにちゃんと私がお皿を買ってきたっていうのを見せてあげてよ!」


 ぷくーっと頬を膨らませながら親父さんを指差した。


「はいはい、それじゃあマリーナは魔法の邪魔になっちゃうかもしれないからセンパイから離れようね~」


「えっ、わわわっ!?」


 すると、側にやって来たカティアがマリーナの肩に手を置いて、そのままゆっくりと俺から引き離していった。


 別にマリーナがくっついていても魔法の邪魔にはならないのだが……。

 まぁ、絶対に魔法を失敗しないとも言い切れないから、万が一を考えたら離れるべきなのかもしれないけど。


 そんな事を考えながら俺は何も置いてないテーブルの上にストレージの魔法を展開する。


「さてと、しまっておいたお皿はっと……」


 そして、テーブルの上に現れた手のひらサイズの青色の光球の中に手を突っ込み、その中からマリーナが購入したお皿を次々に取り出していく。


「なっ、なんだその魔法!?」


 すると、その光景を見ていた親父さんが驚きの声をあげた。


「凄いよね~、お兄さんの魔法。私が買ったお皿が全部入っちゃうんだもん。お陰で重い荷物を持たなくて良かったけど、とってもびっくりしちゃったよ」


「あんなのを見たらそりゃ誰だって驚くだろ……。俺は一瞬金持ちとかが持ってるって噂のアイテムボックスかと思っちまったぜ。なぁ、兄ちゃん。その魔法はアイテムボックスとは違うんだよな?」


「あぁ、この魔法はアイテムボックスとかとは違いますけど、それらを参考にして新しい魔法として生み出したんですよ」


 親父さんの疑問に対して、俺は手のひらにストレージの光球を展開しながら答える。


 稀にダンジョンの奥で発見されるという、道具を無限に収納出来る貴重な魔道具であるアイテムボックス。

 俺達3人で生み出した魔法であるストレージのそもそものベースとなっているのは、そのアイテムボックスである。似てると言われるのは、当然といえば当然だった。


「……なんかサラリととんでもねえ事を言ってねえか? 要するに、兄ちゃん達はアイテムボックスの代わりになる魔法を作りだしたって事なんだよな?」


 親父さんの疑問の声に、カティアが肩を落としながら口を開いた。


「まぁ、言葉だけ聞いたらその通りなんだけど、この魔法色々と大きな問題があるんだよねー……」


「「大きな問題……?」」


 マリーナと親父さんは口を揃えてカティアの言葉に首を傾げ、カティアはそんな2人に理由を説明し始めた。


「このストレージって魔法、魔道具であるアイテムボックスみたいに誰でも気軽に使えないっていう致命的とも言える大きな欠点があるんだよ。簡単に言うと、難しすぎるんだよねー。センパイと一緒にこの魔法を考えた私やリサラですら難しすぎて扱えないんだもん」


 お手上げといった様子で両手を上にあげたカティアが、こちらに視線を向ける。


 そう。このストレージという魔法、現状この世界で俺しか扱えないのである。

 俺とカティアとリサラの3人の知識を総動員して「ストレージ」という魔法を生み出したまではいいのだが、優秀な魔術師であるカティアとリサラにすら扱えない複雑で難解な術式が完成してしまったのだ。


「誰でも……とまでは言わないけど、色んな人に簡単に扱えない時点で()()としての評価はとんでもない欠陥品って感じに──」


 なるよね、と言葉を続けようとした時だった。


「うぅ、どうしよう……。あんな事言っちゃったけど、ディー君引き受けてくれるかな……」


 ガチャリと入口の扉が開いて、何やらお悩み中といった様子のフィリアが帰ってきた。

兄ちゃんに読みを振ってみました


「にい」ちゃんでも「あん」ちゃんでも、特に気にすることではないかもしれませんが

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