第40話 優秀な魔術師ですから 4
「魔道具の修理が終わったよ〜」
「えっ、もう魔道具の修理終わっちゃったの!?」
修理が終わった事を報告しに食堂に向かうと、カティアの言葉にテーブルで夜に使う予定の食材の仕込み作業をしていたマリーナに驚かれてしまった。
「修理を始めるって言ってからまだ30分ちょっとしか経ってねえぞ……?」
マリーナの側で同じように作業していた親父さんも驚いた表情を浮かべながら、壁に掛かった時計と俺達を何度も交互に見つめる。
そんなに驚かれるほど早かっただろうか。いつも通り普通に作業してただけなのだが……。
「そんな驚かれるほど修理早かったですかね?」
「新しい術式を作り直したわけでもなく、そっくりそのまま修復しただけですし、そんな大して時間がかかることはしてないと思いますけど……」
両隣に立つカティアとリサラが小さな声で話しかけてくる。
どうやら2人も俺と似たような事を思ったらしい。ちょっと安心である。
「あ、親父さん。魔道具がちゃんと修理できたかを確かめて貰えますか?」
俺は一歩前に出て、親父さんに声をかける。
「ん? 魔道具の修理は終わったんじゃねえのか?」
「修理の方は終わったんですけど、あの魔道具を今後も使うのは親父さん達ですからね。修理する前と同じように動くのかをちゃんと親父さんたちにも見てもらわないと」
「そういう事か。あぁ、わかった。今行くぜ」
親父さんにそう告げて、俺達は再び厨房へと向かった。
♢
「ちゃんと直ってやがるし、なんか魔道具の見た目が新品みたいにピカピカになってやがる……」
「あ、外装の方も折角なので魔法で綺麗にしておきました。使い勝手とかも修理前と変わってませんよね?」
「あ、あぁ。特に変わった感じはねえな」
厨房の真ん中の台に置かれた銀色の魔道具を前にして、目を丸くしながら驚いている親父さんの言葉にリサラが説明をしていた。
「よいしょっと……ここら辺だったかな」
その間に俺は修理した魔道具を両手でひょいと持ち上げて元あった場所に戻しておく。
「意外とかなり力あるんだね、お兄さん」
「あぁ、これは魔法のお陰だよ。そうじゃなきゃ俺一人でこんな重たい魔道具を持てないからね」
俺は元の場所に戻した魔道具に手を置きながら、声を掛けてきたマリーナに対して言葉を返す。
すると、マリーナは気まずそうな様子で言葉を続けた。
「えっと、その……お兄さん。魔道具を直してもらっておいて聞くのもあれなんだけど、この魔道具の修理代っていくらくらいになるのかな……?」
ん? 修理代?
予想もしてなかった単語がマリーナの口から出てきて、頭の中に疑問符が浮かぶ。
どう答えようか考えていると、背後からくいくいっと服を小さく引っ張られた。
「センパイセンパイ。修理代の事を聞かれてますけど、お金取るつもりだったんです?」
いつの間にか俺の側にいたカティアが小さな声で耳元で囁くように尋ねてきた。
「いや、そういうのは全く考えてなかった。カティアは?」
「私もセンパイと同じです。こういうのってお金取るものなんですかね?」
「どうなんだろ。俺達は別に魔道具の修理屋でもなんでもないしなぁ……」
カティアにそう答えながら、不安そうにこちらを見つめるマリーナの方に視線を戻す。
「マリーナ。魔道具の事だけど、修理代とかは別に払わなくていいよ。俺達は別に修理屋でもなんでもないからね」
「え、えっ!? 本当にそれでいいの!?」
修理代はいらない事を伝えると、マリーナは驚いた様子で大きな声をあげる。
俺はそんなマリーナに対して、一つ付け加えるように言葉を続けた。
「ただ、その代わりと言ってはなんだけど……後でこの町の案内を頼めたりするかな?」
次話は幕間の話(フィリア視点)を予定してます
完全に余談ですが評価ポイントが500を超えました!ありがとうございます!
今後も間隔開けながらですが、更新頑張っていきたいと思います!




