第37話 優秀な魔術師ですから 1
フィリアを見送り、色々と騒がしかった朝食を済ませた俺達は2階の部屋へと戻っていた。
現在の時刻は朝の9時半ぐらい。普通の人はもう働き始めているような時間である。
「お腹も膨れたしこの後はどうしよっかー?」
俺は窓際にあったイスに体を預けるように座りながら、手前のベッドに仰向けに寝転んでいるカティアと、同じベッドの空いているスペースにちょこんと座っているリサラに話しかけた。
「どうするって言われても……こちらが逆に聞きたいくらいなんですけど」
手持ち無沙汰に両手の指同士を合わせていたリサラが返事をする。
すると、リサラの側で枕を抱きしめながらベッドで寛いでいたカティアが口を開いた。
「何もしないでベッドでこうしてゴロゴロしてるでいいんじゃないです? 締切とか納期はもう全部関係なくなっちゃいましたし、センパイも王都を出る時にのんびりしたいって言ってたじゃないですか〜」
「うーん。まぁ、そうなんだけど……」
あの終わりの見えなかった激務からやっと解放されたって気持ちはあるが、こうも明るいうちからベッドでゴロゴロするのも、それはそれでなんだかもったいない気がして、あんまり気が進まなかった。
「あの、暫くはこの町に留まるんですよね?」
窓の外を眺めながらどうするか頭を悩ませていると、リサラが小さく手を上げながら話しかけてきた。
「そうだね……。面倒な問題が舞い込んできたりして他の町に行きたいって意見が出ない限りは、この町に滞在しようかなって思ってるけど。何かいい案でも浮かんだの?」
「いい案かは分かりませんけど……。それでしたら、町を歩いてみませんか? 暫く滞在するなら、この町の事も色々と知っておきたいですし、身の回りの物とかも新調したいなと思いまして……。王都では何も買えませんでしたから」
そういえば王都じゃ色んなお店から出禁扱いされたせいで、食料とかだけでなく、衣類だったり消耗品だったりとその他色んなものが調達できなかったんだった。
これから暫くこの町で暮らすなら、そういった物とかは早めに調達しておいた方がいいだろう。
「それじゃあ、今日の予定は買い物ついでにこの町の散策にしよっか。カティアはどうする? お留守番でもしてる?」
リサラにそう返事をして、俺はベッドで寝転んでいるカティアにも声をかける。
すると、カティアはベッドからもぞもぞと体を起こして、ぐーっと伸びをしてから口を開いた。
「んんーっ、そんなのセンパイに付いていくに決まってるじゃないですか〜。私一人だけ部屋でお留守番なんて退屈ですもん」
「……ということは、3人で買い物に行くってことで良いんでしょうか?」
確認をするようにリサラから言葉を掛けられ、俺はイスから立ち上がりながら返事をする。
「そうなるね。んじゃ、このままここで時間を潰してないでさっさと外に出よっかー」




