第26話 再会の幼馴染 1
新ヒロイン登場回
「お兄さん達、おまたせ〜! 遅くなっちゃってごめんね」
お酒を向こうのテーブル席に運んできたマリーナが、俺達の元に戻ってくるなり謝罪の言葉を述べた。
「ねぇねぇ、あそこのテーブルで何を話してたの?」
カティアに尋ねられたマリーナは、苦笑いを浮かべながら小さなため息を吐いた。
「あ〜……話してたっていうか、軽いセクハラ受けてたって感じかなー。おっぱい触らせてくれ〜とかそんな感じ。付き合いが長いからっておじさん達にはほんと困っちゃうよ」
そんな言葉を口にしているが、マリーナからは心底嫌がってる様子は感じなかった。
長い付き合いだからこそ許せる。たぶんそんな感じだろう。
「……って、お兄さん達に愚痴ってる場合じゃなかったね。早速席の方に案内するね!」
「あぁ、お願いするよ」
◇
「それじゃあ、お兄さん達は空いてるところに適当に座っちゃって〜。メニューとかはすぐに持ってくるから!」
そして、マリーナに案内されたのは6席あるカウンター席だった。
先客は奥から2番目の席に座っている1名のみ。既に酔い潰れてしまったのか、その客はテーブルに突っ伏していた。
フードを被っていて性別ははっきりとは分からないが、服装からしてたぶん俺達と同じ魔術師だと思う。
「おおっ、ちょうどいいところに戻って来た。バトンタッチだ、マリーナ。嬢ちゃんが酔い潰れちまったから相手を任せる」
マリーナがメニューを取りに行こうとした所で、厨房の奥からエプロンを身に着けた、右目に大きな傷があるガタイの良い男性が姿を見せた。
その男性は、氷が入った水のボトルを片手に持ちながら、酔い潰れている客に一度視線を向けてから、マリーナに声を掛けた。
どうやら隣の席で酔い潰れているのは女性だったようだ。
一体何があって酔い潰れるまで飲んでいたのか少し気になってしまう。
「私、今ちょうど新規のお客さんの案内中なんですけどー。それに、お姉さんにはあんまりお酒は飲ませないほうがいいって話になってたじゃん! どうして今日も酔い潰れちゃってるのお父さん!」
マリーナは腰に手を当てて明らかに不満のこもった声を漏らし、男性に非難の視線を向けた。
というか、この人がマリーナのお父さん!?
全く似ていない……いや、本当に親子なのかという疑問が浮かぶくらいである。
カティアとリサラもそう思ったのか、目を丸くして男性に視線を向けていた。
「しょ、しょうがないだろ。こっちだって商売なんだから……。それに、今日はまだ2杯しか酒は飲ませてないんだぞ? 前は今日の倍以上の量を軽く飲んでたのに、今日だけこんな簡単に酔い潰れるだなんて思わないだろ……」
マリーナの態度にたじろぎながら、お父さんと呼ばれた男性はカウンター席で突っ伏している女性客に困惑した視線を向けた。
すると、その視線に反応したのか、先程までテーブルに突っ伏していた女性がふらふらと体を起こした。
「ん、んぅ〜……!」
大きく伸びをするようにぐーっと体を後ろに反らし、それによって被っていたフードが脱げ、酔い潰れていた女性の素顔が晒される。
「あれ、お酒がからっぽ……。あの〜、お酒のおかわりぃ……もらえますか〜」
まだお酒を飲むつもりなのか、マリーナの親父さんにお酒の追加を希望する銀髪の女性。
俺はそんな女性の横顔を見た瞬間、思わず声を出していた。
「……フィリア?」
俺の声にピクッと反応し、女性はこちらに顔を向ける。
「…………」
「…………」
そのままお互いに言葉も発さずに数秒ほど見つめ合う。
そして……。
「あぁ〜!! ディー君だ〜!!!!!」
そんな声を上げると共に、俺の幼馴染であるフィリアは両手を大きく広げながら勢いよく抱きついてきて、俺は避けることも出来ずにそのまま床に押し倒されたのだった。
寝落ち+半分くらい書き直ししたりで更新遅れました




