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第23話 港町での出会い 1

3章開始です

 ──港町フェリトア。

 エルメイン王国南部に位置しており、国内で唯一の海に面した町である。


 遠くに見える港には、いくつもの漁船が停泊しており、灯台の光が何度も点滅しながら、真っ暗な海上に向けて照らされていた。


「ん、んん〜っ! 遂にフェリトアに到着しましたね」


 数歩前を歩くカティアが自慢の胸を張るように両手を大きく伸ばし、ふぅと大きく息を吐きながら肩の力を抜いた。

 そんなカティアに倣うように、俺もぐっと伸びをしながら言葉を続ける。


「町に入る時に何も言われなくて良かった良かった。もし町に入れないって事になってたら、ここまで無駄に歩いた事になってたもの……はあぁー、疲れた」


 俺達はこのフェリトアの町の近くで一旦魔動車から降りて、そこから10分ほど歩いてやってきたのだった。


「相変わらず体力が全くと言っていい程ないですね……。そもそもの話なのですが、あんな中途半端な場所で魔動車から降りる必要なんて無かったのではないですか?」


「まぁ、それも考えはしたんだけど……地に足をつけられてない今の状況じゃ、あんまり目立つような事はしない方が良いかなって思ってさ。王都の貴族の嫌がらせがもうこないとも限らないじゃん?」


 俺は息を吐き出しながら肩の力を抜いて、呆れた表情を浮かべているリサラに言葉を返す。


 何も知らない人からすれば、魔動車はただの大きな金属の箱のような物体。

 そんな物に乗ったまま町の中に入ろうとしたら、間違いなく門番に止められて大きな騒ぎになっていただろう。今はそんな事になるのは避けたかった。


「……まぁ、そう言われるとそうですね」


「それよりなんだけどさ、なんか全体的に町が暗く感じない?」


 俺は周囲を見渡しながら、町に入った時から気になっていた事を呟く。


 フェリトアの町は、既に夜を迎えているというのに、何故か街灯などといった照明の類が全く点いていなかった。

 そのせいか、町全体の空気が何処か寂れているような印象を感じてしまっていた。


「街灯などは町のあちこちにあるというのに、その殆どが点いていませんね……。点いているのがあっても、今にも消えそうなくらい弱い光か、点滅しているような物ばかり……。一体どうしたのでしょう?」


 きょろきょろと周囲を見回し、近くにあった明かりの点いていない街灯を見上げながらリサラが呟く。


「壊れたのなら誰かが修理するだろうし、流石にこれだけの数が点かなくなるまで放置は普通しないと思うけど……」


 とは言ったものの、じゃあ何の為にこんな状態で放置しているのかという話にもなってしまう訳だけど。

 そこら辺の詳しい町の事情は全く知らないので、何とも言えなかった。


 そんな事を考えていると、こちらを振り返ったカティアが腰に手を当てながら口を開いた。


「そんなどうでもいい事気にしてる余裕、今の私達にあるんですか~? それよりも、今後の事を考えましょうよー」


「……その通りですが、カティアに指摘されるとなんだか負けた気分になりますね」


 リサラの言葉に同意の気持ちを込めながら俺も小さく頷いた。

 しかし、カティアにとってその言葉は不服だったのか不満の声をあげた。


「ちょっとリサラ、それってどういう事なのさー! あと、バレないだろうと思ってるかもしれませんが、センパイもこっそりと頷かないでくださいよ! ちゃーんと私は見てるんですからね~!」


 頷いていた俺の事をしっかりと見ていたカティアにどんどん距離を詰められ問い詰められてしまう。


「わ、悪かったって……。それより今後の事なんだけど、先ずは宿探しをするでいいかな? 町の中じゃ流石に昨日みたいに魔動車の中で寝るなんて事も難しいだろうし……」


 迫るカティアをなんとか宥めながら、俺は今後の方針を伝えていく。


 一応、町の外に出て魔動車で寝て過ごすっていう案もあるにはあるけど、それを繰り返していたら間違いなくこの町の門番などに怪しまれるだろう。

 そうならない為にも、寝床の確保は最優先事項だった。


「分かりました。そういう事なら急いだ方が良いんじゃないですか? 宿が満室だったりしたら、折角王都を出てきたのに野宿をする事になっちゃいますし……。だからほら、カティアも室長にくっついてないでいきますよ」


「えっ、わわっ、ちょっとリサラ……! 歩く! 自分で歩くから~……!」


 俺の提案に賛成した様子のリサラがカティアの首根っこを掴んでそのまま歩いていく。

 そうして俺達は適当な宿を探す為に、町の中心部を目指して歩き始めたのだった。

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