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第21話 到着、港町フェリトア 1

 翌朝。

 眩しい光を強く感じて目が覚めた。


「ん、んん……もう朝?」


 魔動車の窓から差し込む太陽の光を浴びて、今が朝の時間なのだと理解する。


「う、うぅ……ま、眩しい。体が溶ける……」


 ブツブツと呻き声を漏らしながら、俺は寝る前に防寒用として掛けていた毛布を頭から被り直して、眩しい陽の光から逃れようとする。


「ふわぁ、あふ……。カティアとリサラは……まだ寝てるか」


 大きな欠伸を漏らし、重たい瞼を持ち上げ、俺は身を前に乗り出して後ろで寝ているカティアとリサラに視線を向ける。

 2人は座席を倒した上に敷いたふかふかのマットレスで気持ちよさそうに寝ていた。起きる気配は暫くなさそうだった。


「ふわぁ……まだ眠いし、俺も二度寝しとこうかな……」


 再び大きな欠伸がでてしまう。ぐっすりと眠っている2人を眺めていたら、俺もまた眠りたくなってきた。


 もう地獄のような納期や締切なんかに縛られる事はないし、二度寝をしたって誰にも怒られないのだ。

 だったら二度寝してもいいだろう。今が何時なのかは分からないが、たぶん昼前には起きれるだろう。


「う、やば……」


 そんな事を考え始めたら一気に睡魔が襲ってきた。

 頭がカクンと落ちそうになってきて、俺は運転席の座席に寄りかかるように体を預ける。


「それじゃ、もう一度だけ……おやすみ」


 そう呟いて俺は遮光の魔法を窓に掛けると共に、毛布を頭から被り直して久しぶりの二度寝に就いた。




 ◇




「ん、んぅ……?」


 二度寝をしてからどれくらいの時間がたったのか。

 ふと目が覚めてゆっくりと目を開けると、いつの間にか助手席に座っていたカティアと目が合った。


「あっ、センパイ起きました?」


「……何してるの、カティア」


「センパイの寝顔鑑賞です。ふふー、良いものを見れました〜」


 目覚めたばかりでまだ寝惚けたままの頭で尋ねると、カティアは少し機嫌が良さそうに答えた。


「俺の寝顔なんか見ても面白くないでしょ……ふわぁああ──」


 目をごしごしと擦り、俺は体を伸ばしながら大きな欠伸をする。


 久し振りにぐっすりと寝たから、起きたばかりだというのに寝直したいくらいめちゃくちゃ眠たい。

 そういえば、今は何時ぐらいだろうか。結構寝てしまった感覚がある。


 そう思って外に意識を向け、遮光の魔法を解いた俺は石のように固まった。


「……なんか外が暗いんだけど」


 二度寝する前は眩しいくらいに外の景色は明るかったはずなのに、いつの間にか空の色は暗くなり始めていた。

 どうやらこれは完全に寝過ごしてしまった感じだった。


「いやー、私も目が覚めたら外がすっかり暗くなっててビックリしちゃいましたよ〜。んっ、んぅ~! はふぅ……」


 そう呟きながら、カティアがぐーっと体を伸ばす。


「あ、その感じだとカティアも起きたのは遅かったのね」


「センパイが用意したあのベッドのおかげでこんな時間までぐっすり熟睡でしたよ〜。それにほら、リサラだってまだ夢の世界なんですから」


「ほんとだ……。なんか静かだと思ったら、リサラはまだ寝てたのか」


 カティアに言われてベッドの方に視線を向けると、そこにはリサラが未だに気持ち良さそうに眠っていた。起きる気配は全く感じられなかった。


 流石は最高級品とでもいうべきだろうか。寝心地の方は抜群に良いようだ。


「どうします? リサラを起こした方がいいですかね」


「んー、そうだね。どうせ後で魔動車から降りなきゃだし、今起こしちゃった方がいいかな」


「はーい、分かりました〜」


 座席から降りたカティアが、リサラが眠っているベッドの方に向かう。


「リサラ、リサラ〜、いつまで寝てるのー。起ーきーてーよ〜」


 そして、ベッドで寝ているリサラの体を大きく揺すりながら、起きるように声を掛けた。


「ん、んぅ〜……なんなんですか、カティア」


「あ、起きた。おはようリサラ〜」


「ふはぁ……。おふぁようございまふ……」


 無理やり起こされて、とても眠そうに目を擦りながらリサラが両腕を上に向かってぐーっと伸ばす。

 まだ半分ほど夢の世界にいるのか、いつもの真面目で凛々しい姿と違って、今のリサラはなんともふわふわとしていて可愛らしく感じられた。


「その様子だと、リサラもぐっすり眠れたみたいだね。良かった良かった」


「あぁ〜、しつちょーも……おはようございま……す……?」


 目覚めたばかりのリサラに俺も声を掛けると、こちらに視線を向けたリサラがペコリと挨拶をした所で固まってしまった。


「えーっと……おはよう、リサラ」


「あ、ああっ! えっ、えっと、あ、あの……!」


 とりあえず俺も挨拶を返そうと思って、固まってしまったリサラに声を掛けると、リサラは急に我に返ったように慌てた様子で視線をあちこちに彷徨わせ、側にあった毛布を抱き寄せてから……。


「ぶ、ブラインド──ッ!!」


 顔を真っ赤にしたリサラが叫ぶように魔法を唱え、俺の目の前は完全に真っ暗になったのだった。

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