第19話 魔動車を飛ばして 2
魔法による吹雪がおさまり、俺は静かに右手を下ろす。
俺達の前には、吹雪に包まれて一瞬で氷漬けになったハイウルフ達が地面に転がっていた。
「ふぅ。2人とも怪我はない?」
小さく息を吐いて、俺はすぐ後ろにいるカティアとリサラに声を掛ける。
「センパイが守ってくれたおかげで大丈夫ですよ〜。今のブリザードのせいでちょっと肌寒いですけど」
「私も大丈夫です。それにしても、本来なら森の中心付近などで縄張りを作るハイウルフの群れがこんな外側にいるなんて珍しいですね。この森で何かあったのでしょうか?」
氷漬けになったハイウルフの前でしゃがみ、森の奥に視線を向けながらリサラが呟く。
俺はそんなリサラの隣に立って、周囲に視線を向けながら言葉を返す。
「どうだろうね。単純に餌を探していたのかもしれないし、別の理由かもしれない。気にはなるけど、その辺りは冒険者達に任せておけばいいんじゃない? 冒険者でもない俺達がそれを調べる必要はないでしょ」
「それもそうですね。今の私達はそんな事を気に掛けている場合でもないですもんね……」
「センパーイ、リサラー。そんな真面目な話はいいから早く魔物除けの結界を張っちゃいましょうよ〜」
リサラとそんな会話をしていると、魔動車の側にいたカティアが催促の言葉と共にやってきた。
「あぁ、はいはい。分かった分かったよ。それじゃあ、今度こそ魔物除けの結界を張っちゃおう」
だる絡みするように抱き着いてきたカティアをリサラの方に押し付けながら、俺は2人に声を掛ける。
そうして3人で手分けをして、魔動車を中心とした魔物除けの結界を張り、野営の準備を始めた。
「魔動車を中心に結界を張りましたけど、何処にテントを張るつもりなんですか? 結界の範囲を広げないとテントを張るスペースがないと思うのですが……」
「いや、そもそもテントなんか張るつもりないよ? ストレージの中にテントなんてないし」
尋ねてきたリサラにそう告げると、リサラだけでなく隣にいたカティアまでもが驚きの声を上げた。
「えっ、じゃあ私達は何処で寝るつもりなんですか!?」
「そうですよセンパイ! もしかして、地面にそのまま寝るとか言うつもりなんです?」
「流石にそんな事は言わないよ。俺だって地面で横になるなんて嫌だもの。まぁ、2人はちょっとそこで待っててよ。ささっと寝る場所を作っちゃうから」
2人にそう告げてから俺は魔動車のバックドアを開けて車内に乗り込み、後ろの座席をパタパタと倒していき、平らな面にしていく。
「まずはストレージを展開して……。えーっと、あのマットレスは……あ、あったあった」
そして、そこから更にストレージを展開し、その中から特注の大きな立派なマットレスを取り出した。
「よいしょっと、これをこうしてこうすれば完成っと……!」
それを平らにした後ろの座席の上にポンと載せれば、あっという間にふかふかなベッドの完成である。
余程寝相が悪くない限り、2人なら余裕で寝れる広さはあるだろう。




