第12話 今後の話し合い 2
「──で、結局これなんですね。もぐもぐ」
王都のお店で夕食を食べる事を諦めた俺達は、噴水広場のベンチに並んで座って、慣れ親しんだ四角柱状の携帯食料を齧っていた。
「手持ちで食べれる物って言ったらこれしかないんだもの。あ、飲み物は各自水魔法で用意してね」
この携帯食料、手軽に食べれて栄養も豊富といい事尽くめなのだが、食べ過ぎると口の中の水分が奪われて飲み物が欲しくなるのが唯一の欠点だった。
「私達らしいといえば、んぐんぐ、とってもらしい夕食ですけどねー。あ、私次はプリン味が食べたいです」
頭の中でそんな事を考えていると、最初に渡した分を早くも食べ終えたカティアがお代わりを求めてくる。
「そんな冒険するような味を俺が用意してる訳ないでしょ。はい、これカティアの分。リサラもおかわりいる?」
「……貰います」
膝の上に展開したストレージの中から新しい携帯食料を取り出して、両隣に座るカティアとリサラにチョコレート味を渡す。
「センパイの奢りで美味しい料理をいっぱい食べれると思ってたんですけどねー。はぁ〜あ、とても残念です」
早速俺から受け取った携帯食料の包装をビリビリと破き、カティアが愚痴をこぼしながら、パクリと口に咥えた。
「俺も携帯食料じゃなくて、いいお店で美味しい料理を食べたかったけどねー。この状況じゃ諦めるしかないでしょ?」
そうカティアに答えてから、俺も手にしていた自分の分の携帯食料にパクリと噛り付く。
「そうですけどー……。というより、明日以降の食事どうしますセンパイ? 外食は当然のように無理ですし、食材も新しく買えないから自炊とかも無理ですよね?」
「あー、そうだね。かなり困ったねー」
「っ……! そ、そうですよ! 室長はこの携帯食料があるから多少は大丈夫かもしれませんが、何もない私とカティアはどうすればいいんですか!?」
カティアの言葉に、隣に座るリサラがハッとした様子で声をあげた。
今の俺達は王都のありとあらゆるお店から出入り禁止状態。
食料なども一切買う事が出来ず、このままでは食事にもありつけないような危機的な状況である。リサラが焦るのも無理はないだろう。
「うーん、どうしよっか。僅かに食べ物の蓄えがあるとは言っても、俺も2人と状況はあんまり変わらないしなぁ……」
ベンチに体を預けて、ぐーっと全身を伸ばし、暗くなり始めた空を見上げながら、俺は今後の事を考える。
正直な話、研究所をクビになっただけなら新しく仕事を探せばいいと、俺は大した問題じゃないと思っていた。
だけど、王都の色々なお店を訪れて、その全ての店に入店を断られてからは、そんな楽観的な考えは一瞬にして崩れ去った。
まさか俺達が研究室に籠って必死になって仕事をしている間に、こうも完璧に王都中の店に手を回されているとは夢にも思っていなかった。
こうなってしまうと、もう王都で生活していくのはかなり難しいだろう。
そんな考えに至った俺は、2人に対してとある提案をしてみる事にした。
「いっその事、王都から出て行っちゃうなんてどうかな?」




