第11話 今後の話し合い 1
俺達がやって来たのは、王都の中でもそこそこ良いお店。予約やドレスコードが必要ない店の中では、一番良いとも言われているような店である。
そんなお店で、超久しぶりな携帯食料以外の料理を頂こうと思っていたのだが……。
「悪いがあんたらにうちの料理を提供する事はできない。他の店をあたってくれ」
お店の中に入るや否や、厨房から姿を見せた料理長らしきおっさんにそんな事を言われて、俺達は邪魔者のように店から摘まみ出されていた。
──それから王都にある他の店を巡り続ける事1時間弱。
俺達はレストランや酒場だけでなく、食料品店や雑貨店などからも出入り禁止のような扱いを受けて、仕方なく噴水広場にやって来ていた。
「物の見事に全滅でしたねー。センパイ、夕食どうします?」
「もう諦めた方がいいんじゃない? 今まで訪れた店の対応を見ると、俺達が王都にあるお店で食事するのは絶対無理だろうし。多分大丈夫な店を探すだけ時間の無駄な気がする」
「も~、私達が一体何をしたっていうんですか! どうして私達がこんな扱いを受けなきゃいけないんですか!」
広場にある3人掛けのベンチに並んで座って、カティアの質問に溜息を吐きながら答えていると、とうとう我慢の限界を迎えたリサラが大きな声をあげた。
店側から入店を断られても一切反論しなかったのは、ずーっと我慢していたからだったようだ。
「出入り禁止になるような事なんか何もしてないのに、こんな扱いなんて絶対おかしいですよ!」
「リサラの言う通りだねー、うんうん。なんか知らない間にとっても面倒な事になりましたねー、センパイ」
そう言って隣に座るカティアが俺の肩にちょこんと顎を乗せて、そのままだらーっと体重を預けてくる。
「こんな事が出来るのなんて、王族か王都の中でもかなり力のある貴族ぐらいだろうからねぇ……。まぁ、仕事を辞めさせられたタイミングで俺達に嫌がらせしてくるといったらゲッシルー家ぐらい──」
すると、それに反応したかのように俺のお腹がぐぅう〜と大きな音を鳴らした。
「大きな音ですね。そういえばセンパイってご飯食べたの何日前です?」
「んー、多分3日前かな? 時間かかりそうだったから徹夜で術式の改良してたし、今日は昼ご飯が食べれると思ってたら、お城に呼び出されたお陰で逃したからね」
「なーるほど〜。そりゃ大きな音も鳴りま──」
カティアにお腹をさすりながら答えると、再びぐぅう〜と大きなお腹の音が鳴った。
「今のは俺じゃないよ?」
「私でもないですよ?」
音の主は俺でもカティアでもない。
そうなると、残るのは……。
「っ、っ〜〜〜〜!」
視線を向けた先には、うずくまる様にお腹を抑えたリサラが耳を真っ赤に染めながら声を押し殺していた。
きっと今のリサラは耳だけじゃなく頬なども真っ赤になっているのだろう。
「まぁまぁ。センパイ程じゃないけど、私もリサラも昨日から何も食べないで作業してたからねー。お腹が鳴っちゃうのもしょうがないよ」
「っ〜〜〜! 本当に、なんでこんな目に遭わなきゃいけないんですか〜!」
カティアが慰めの言葉をかけると、嘆くようなリサラの声が広場に響いたのだった。