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第1話 解散通告

全体を見直してかなり改稿してみました

めちゃくちゃ大変だったので話を一から見直すことはもうしないと思います、たぶん

 魔術の発展によって長く栄えてきた国、エルメイン王国。

 そんなエルメイン王国にある、新たな魔法や魔道具を開発する研究機関であるエルメイン王立魔導研究所。


 そこにある第七魔術研究室の室長を務めている俺──ディラルト・カールクリフは、エルメイン王国宰相であるラズミー・ゲッシルーからの呼び出しを受けて、エルメイン城の謁見の間に来ていた。


「──以上がお前をこの場に呼び出した理由である」


 いつものようにネチネチと有難いお言葉を宰相閣下から頂くのかと思っていたら、今日は全く違った。


 かなり難航していたとある魔道具に組み込む予定の術式の最適な組み合わせがやっと分かって、ずっと重かった肩の荷が降りて眠気がもの凄かったのだが、先程渡された書状を見てすっかり目が覚めてしまっていた。


「あの、全く訳が分からないんですけど……」


 俺はこの場に来て早々に渡された()()()()と書かれた1枚の書状から顔を上げ、前方にいるネズミみたいな顔をした男に視線を向ける。


「書いてある文字も分からないのか、ディラルト。お前が室長を務める第七魔術研究室は、本日をもって解散する事が先日の議会で決まったのだ」


 冗談なのかと思って固まってしまったが、どうやらこれは嘘でも冗談でもないらしい。

 手元にある書状にはしっかりと王家の押印がされており、書状に記された研究室を解散するに至った理由もしっかりと記されていた。


「本当なのですか、陛下」


 しかし、俺はこの書状が信じきれず、それを確かめるようにラズミーの後ろで玉座に座る人物へと声をかけた。


 エルメイン王国現国王であるアルマール・ファン・エルメイン。恰幅の良い優しそうな見た目の老人である。


「……本当だ、ディラルトよ。議会での投票を行った結果、第七魔術研究室を解散する事が決まった」


 普段のおおらかな雰囲気とはまるで異なり、心苦しそうに陛下は絞り出すような声で言葉を吐き出した。


「そう、ですか……」


「室長がディラルトに引き継がれてからというものの、成果も特に出していない研究室など存在させておく価値もないし、ただただ予算の無駄でしょう。解散されるのは至極当然ではありませんか、陛下」


 そこにラズミーが言葉を重ね、こちらを見下すような視線を向ける。


「成果を出していないって……他の研究室が丸投げしてきた術式や魔道具の開発などは、全部うちの研究室が代わりにやってきたのですが?」


 事あるごとに……というか、嫌がらせのようにうちの研究室は他の研究室から仕事を押し付けられていた。

 それも重要な仕事からどうでもいい仕事まで多岐に渡っていて、お陰で3人しかいないうちの研究室は押し付けられた仕事を片付けるだけで精一杯だった。


「はんっ! それが何だ。今更お前がどう言おうと、議会での決定は絶対だ。第七の解散は揺るがないのだ!」


 しかし、ラズミーにはこちらの事情や言い分などどうでもいいらしい。こちらの話を全く聞こうともしなかった。


「……うちの研究室を解散させて大変なことになっても知りませんよ」


 俺はこれ以上は何を言ってもダメだと理解しながら、最後の忠告をラズミーにする。


「はっ、はははっ! いきなり何を言いだすかと思えば……お前達第七がなくなっただけで大変な事になる筈がなかろう。流石に自惚れが過ぎるぞ、ディラルト!」


 高笑いをあげるラズミーから視線を外し、俺は小さくため息を吐く。


「俺はちゃんと忠告しましたからね、ラズミー宰相。……それでは陛下。私はこれで失礼させていただきます」


「うむ……第七の引き継ぎも含めて今まで良くやってくれた。こんな事になってしまってすまなかった、ディラルトよ」


「いえ、こちらこそ今までご迷惑をお掛けしました」


 謝罪の言葉を述べた陛下に一礼してから、俺は静かに謁見の間を後にしたのだった。

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