85話 無職のリベンジ
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?ぁぁぁ、お、俺の腕ぇぇぇぇ!?」
斬られた方の腕を空へとかかげ悶絶する蒼騎士。
周りの騎士たちは未だ呆気に取られている。
「どうだ? 狩猟者が獲物になった気分というのは?」
「……うっ、ぐぅぅっっ?!?!」
俺の言葉に蒼騎士は答えない。
「……へぇ無視するのかぁ、じゃあしょうがないかぁ」
切断された箇所を足で踏みつける。
「……うギャァァァァァぁ?!?」
なんとか逃れようと必死に暴れるが、玲夜の足は微動だにしない。
悶絶する騎士。それを嘲笑う仮面の男。
そんな異常な姿にゼニス以外、誰も動けていない。
「……おいおいお前らそれでも騎士か? 仲間が敵にやられてるんだぞ?あまつさえ、死に向かって突き進んでいる、それなのに呆けていてお前らそれでも、本当に騎士か?実はただの平民なんじゃないか?」
煽るような玲夜の言葉に蒼騎士たちは各々の得物の柄を握りしめ、奮起する。
「……俺に立ち向かうってことはこれ以上のことをやるからな? それでもいいならかかってこいよ」
足で踏む力を強める。
「うぅぅぎゃぁぁぁぁっ?!」
スラム街にも響く絶叫。
「っ?!?」
奮起して出たはずの足がそれ以上続かない、完全に騎士たちは尻込みしてしまっている。
何より最初に指揮官が倒された為、どうしたらいいか戸惑っている。
それを見て玲夜は嗤う。
遊んでいる、蒼血騎士団をただのおもちゃとして。
そこにいた全員がそう感じていた。
「な、なにをしている。は、早くこいつを倒さんかっ!!」
玲夜に嬲られながら必死に指揮しようとする蒼騎士。
だがそれは悪手だ。
「そ、ソーラ副隊長!!」
「なに勝手に喋ってんだ?あぁん?」
「……ぐうっ?! だ、黙れ外道がぁぁ」
「……げ、外道? 俺が、か?」
「それ以外にいないだろうが!!!」
外道ねぇ。
…………ぷっ。
「何を笑っておる!!」
「……くははっ、あー、まさかお前らにそんなことを言われるとは思ってなかったからさ」
「いつまでもふざけた態度をしやがって」
「本気になる必要がないからな、お前ら10人程度」
「ッ?!」
俺の挑発にももう乗ってこない。
副隊長がやられたからか、かなり警戒してるっぽい。
(まぁいまさらだとは思うが)
「これで外道かぁ、じゃあこれから行うことをお前らがなんと呼ぶか楽しみだなぁ」
「……えっ……」
隊長がやられた以上に凄惨な事。
それを俺は今からやると宣言した。
明らかに蒼騎士たちの戦意がなくなっていくのが分かる。
「おいおいどうしたぁ何をされるか考えちまったのか? そりゃそうかお前らも今まで散々やってきたもんないざそれが自分に返ってくるとなると怖いよなぁ? …………例えばこんな風にしたり?」
「ぁえっ……」
玲夜はいつの間にか蒼騎士たちの中心に。
そして1番近くにいた騎士の腕を取り、そのまま捩じり切った。
「うぁぁぁっ?!」
吹き出る血液。
まるで血液の雨のように俺の仮面を濡らし紅い色に
「なんだ意外と簡単と人間の腕ってのはもげるものなんだな」
「……ひッ」
おっ、いい感じにビビってきたな?
それじゃ次は……
「悲鳴を上げたオマエかなぁ?」
それはこの中でも比較的若めの人物。
「くっ、来るならぁこい!!!」
「止めろ!!そいつはこの中でも期待の若手なんだ!!!」
「そうなのか、お前がな……」
蒼血騎士団の期待の若手。
それつまり……。
「未来の性悪騎士だろう??」
「なっ?!?」
「ふひぎゃぁぁぁぁっ?!」
今回は利き手である右腕と、右足を縊り取ってみた★
「なっ、ななな」
もはや言葉の体をなしていない。
その勢いのまま私怨を少しだけ晴らしていき、身体が無事な騎士の残りが二人になったところで声が聞こえた。
「……うっ」
そこで唐突に聞き覚えのある声が聞こえた。
因みに今のやつは両耳をちぎり取っている最中。
「ん? あそういえば、えーっと……大丈夫か?」
見ればサーラの顔が心なしか青い。
そう言えばさっきめちゃくちゃ血を流してたか。
だからこそ気遣いの言葉をかけてみたんだが。
「…………」
……え、まさかの無視!?
「…………ぐきゃ」
「うん?……あ」
思わず握った手に込めて間違って蒼騎士の頭つぶしちゃった。
あーあ、せっかく生きて苦しませようとしてたのに。
まぁやってしまったことはしょうがない。
とりあえずは
「……ひっ」
なんか引きつった声と共に失神した。
「……え」
き、気絶した?
え、え、なんで?
「ちょっと待てちょっと待てお姉さん?」
ちょっと、いやかなり動揺してるぞ?
1時期はやったネタが顔を出すくらいには動揺している。
てか俺気絶されるの今回が初めてじゃないよな?
そんなに俺って怖いのか?
一回落ち着くんだ俺。
……えーっと、本当にどしたらいいでっしゃろ。
「はぁ」
なんかこれ見よがしにため息をつかれた!!
「……玲夜」
ゼニスからの視線が痛い。
「……はい」
決してゼニスが怖いから目を合わせないんじゃいぞ?
ただそう。
えと、そう!
敵がまだ近くにいるから目を離せないだけ。
ほんとうにただそれだけなんだーよ?
「こっち見なさい」
恐る恐る振り返る。
……
…………
………………笑ってらっしゃる。
「あとでお話しましょうね?」
「……はぃ」
「とりあえず今は残ったそいつらと動けない奴の後片付けをすましなさい、またあれをするんでしょ?」
「ああ、もちろん」
「じゃあそれを済ませて帰るわよ目的は済ませたし」
*
日が昇り始めたそんな時間。
交代した城の門番がある箱と一人の人間を発見した、それも10個近くの箱。
まさかな。
脳裏によぎる貴族の生首。
かつて同じような状況を見たことがこの門番はあった。
いやまさかな。
ただあの時とは状況が違う。
一つ一つの箱も小さい。
何より人がいる。
「おい、大丈夫か!?」
近づいてよく見てみれば任務に言っていたはずの蒼血騎士団の男。
顔は血や鼻水、涙出まみれ、かつての自信ある姿はそこには無い。
あるの何かに恐怖する目だけ。
「つ、つつ伝えることがある」
「なんだ、言ってみろ」
別の門番が箱に手をかけ、そして後悔した。
「うぎゃぁぁぁぁぁっ」
中にはバラバラにされた死体が10体分丁寧に入れられていた。
「なんていえと伝えられたんだ!!」
『また逃げられたな』
そう言った瞬間、男の身体は爆散した。




