80話 無職と魔女は原因を究明する
ポイッ
玲夜はこともなげに、何でもないことかのように依頼の生物を、否、剣に突き刺さっているただの化け物を受付嬢の前へと放り投げる。
「……っ?! な、なんですかこの歪な生物は!?」
が、そうと分かるのは玲夜とゼニスのみ。
受付嬢からすれば訳が分からない。
かろうじて悲鳴は抑えたが、受付嬢の目は化け物を直視しない。
「依頼されたものだ、あ~っと、とりあえずギルド長の……なんだっけ? パセリ? いや違うな、なんかえーっとパオーン、そうだパオーンだ、パオーンを呼んでくれ!!」
「……パオーン……ぷっ」
玲夜の間違いに思わず吹き出しかける受付嬢。
「間違った名前を大声で叫ぶんじゃない、ワシの名はパオリーだ!! ……あとお主も笑うんじゃない!!」
何とか名前を思い出して呼ぼうとしたら、奥の部屋から息を切らせながらパオリーが突っ込んできた。
「……よぉパオリー、1日ぶりか?」
「おぬしナチュラルに無かったことにしおったな…………まあ良いそれでなんだその化け物は?」
「なんだって……、お前の依頼の物だよ、今回の原因」
「…………ナニガ起きたらこんな化け物が原因になるのだ。 ま、まぁよいとりあえず話を聞こう、奥へ入るのじゃ」
パオリーにつられて部屋画と入ると玲夜は事の仔細をパオリーへと話していく。
普通に考えれば到底信じずらい話ではあるのだが、しかし実際こんな奇妙な、珍妙な生物を目の前にしたらパオリーも信じざるを得ない。
神妙な顔をしながらパオリーは玲夜の話に頷いていく。
話を聞き終えたパオリーはぽつりと一言。
「…………嫌な予想が当たってしもうたな、戦争をする気満々の様じゃな」
そのパオリーの様子に部屋の中にいた他のギルド員もみな一様に重い空気を醸し出す。
二人の例外を除いて。
「……まあこれが今回のあらましだ。落ち込むなり考えるなりは俺に報酬を払った上でにしてくれ、報酬の方はすぐに受け取れるのか?」
「…………あ、ああっ、報酬は確認等もあるから直ぐにという訳にはいかん。ただ冒険者ランクの昇格試験は直ぐにでも受けられるぞい! こっちにこい。」
パオリーは落ち込んでいたのもつかの間直ぐに元の調子へと戻る。
この空気感は今はまずいと悟ったのだろう、殊更に大きな声を挙げる。
意味は分かってはいるが正直うるさい……。
パオリーにつられて部屋を再度出る俺たち。
「あれ?でも今ギルドには試験できる人いなくないか?」
「みんな依頼に出ちまってるもんな、それに今昼だし」
仕事しているという割にギルドに結構人もどってきてるんだが?
じゃああいつらはなにしてるんだよと思ったが言うのは辞めた。顔がめっちゃ赤い。聞かなくても分かるあれどう考えても、酒飲んでるうん、自由だな!
「俺らも後で飲むか……」
酒なんて飲むのは久々だなぁ。
「で、訓練場前にきたははいいですが誰が相手をするんですか?」
「そうですギルド長。誰が相手するんですか?今ちょうどいい人は全て出払ってしまってます!」
「……クハハッ敏腕受付嬢の君は誰か忘れてるんじゃないかな?? この!!ワシがいることを!!!」
「まっ、まさかギルド長が、……しかし既にあなたは引退を……」
「ああそうだ!だがまた戦争も始まるかもしれん!ただでさえ奴らは数は多いのだ、老体に鞭打つわい、引退したとはいえまだある程度は戦えるつもりじゃしのう」
だが受付嬢はうんとは頷かない。「……ですが」といってなおも食い下がる。
これはただのギルド長と受付嬢の関係ではないような、あるような……。
そんな受付嬢の心配を横目に彼は大仰に笑う。
「そう心配するでない!戦争が起きると決まっとる訳では無いし、それに今回はBランクの適性があるかどうかを観るだけじゃ、そこまで危険はないからのぅ、だからやらせてくれーーー」
ポンと安心させるように手を置くパオリー。
こくんと頷く頷く受付嬢。
それを見て微笑ましいものを見たかのように目頭を抑え、ついでに酒を煽る冒険者たち。
次第にギルド長の過去の栄光が話され始め、人数も徐々に増していっている。
なんだこれ。
もうこのギルドの領域展開しちゃってるよ?
アットホーム感半端ないぞ?
「…………俺いらんくね?」
「いらないわね……」
だよね、俺らが昇格試験受けるとか言う話だったはずなのに気づいたら俺のこと誰も見てない。
だがまあある意味あれはいい雰囲気だと思う。
だから…………
「改めて出直すか。ったくこの空気に水を指すのは野暮ってもんだからなー、あ〜しょうがないな〜もう、本当は試験受けてバリバリに依頼してみたかったんだけどな〜まあ俺も気分良いし?1日2日なんなら3日4日ぐらい猶予をやるとするか、うん!!それがいい!!」
「…………ツッコミどころ満載だけどまあそれでいいでしょう、最近まともに休めてないし」
「試験はまたギルドに来た時でいいだろ」
ギルドの中は縁もたけなわと言った感じでお酒まで出始めている。玲夜とゼニスはそこらにいたものに伝言を頼み、皆に気付かれる前にさっさとギルドの扉を抜けていく。
その帰り道……
「……あいつらあんな感じでギルドとして大丈夫なのか?」
「……さあ?」
「でも悪くない雰囲気ではあったかもな、経験したことは無いが。 ……まあいい、とりあえず惰眠と酒でも貪るとするか? ゼニスは飲めるのか?」
「まぁ少しは?……え?でも寝ている夢の中でも修行しないの?」
「……え」
「え?」
その頃ギルドでは……
「さてさて、盛り上がってきたところで〜!!本日メインのお2人に出てきてもらうとしようか〜!!!我らを困らしていた憎き人間を捕獲したのはーーーー玲夜とゼニスーーーーーー!!!!」
「「いえーーーーい!!!!!」」
「…………」
「…………」
「「あれ?」」
会場の盛り上がりが最高潮に達したのにも拘らず一向に出てこない2人。
最初は待っていた一同も徐々に異変に気付く。
「……あれ?2人は?」
「そういえば最初からみてないような?」
「…………あ、そういえば」
と、ドア付近にいた一人の男が声を上げた。
「……なんだ?」
「仮面をつけた人たちのことをもし言ってるのなら盛り上がり始めた瞬間に帰られましたよ?」
「…………は?!?!」
一同驚愕。
「なんでも、この空気に水刺すの悪いし帰ろー、って言って」
「なっ!?」
パオリーは驚愕した。
あいつも空気を読むことが出来たのか、と。儂の名前は覚えてないくせにそんな細かな気遣いが出来たのか、と。
そして同時に思ってしまった。
「ならわしの名前も覚えろよ!!!…………っとだがうっかしりておった。わしも彼らがあまりにピンピンしてるから忘れておったが普通なら依頼達成後で緊張とか体力とかで疲労困憊してるはずじゃったな」
「そうですね、あまりに普通すぎて失念していました。今度来られた際には謝らねばなりませんね」
パオリーに同意する受付嬢。
「…………あ、それと」
「まだなにかあるの!?」
「1日2日3日4日と猶予をやろうかな、とも言ってました!」
「…………彼奴ら昇格する気あるのか?」
彼らの価値観が全く掴めないパオリーだった。
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