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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
3章 外遊~禁忌な二人は自重しない
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78話 無職は蹂躙する 弐


【人獣融合】


ランダがそう唱えるとオオトカゲとランダがいた場所を起点としてマナが吹き荒れる。

ゼニスの様子を伺えば、今回の戦闘で初めて驚いた表情を浮かべていた。


「……どうかしたか?」


「いえちょっと、昔の魔術に似てたからね」


…………昔の魔術?


「【人獣融合】とかいう魔術が、か?」


「ええ、昔の名前は【人魔一身】……だったかしら? というかあれは似ていると言うより人魔一身の劣化版の方が正しそうね」


目の前の煙が晴れた先には変化したランダの姿。


「……ッアッアァぁァ……こ、これが。 せ、成功ダ! イ、一か八かノ……賭けデハあったが成功した、ゲヒャヒャヒャ、シャァァァッ!!」


彼の肉体は3メートル以上にもなり、身体の至る所が黒に染まっている。

手足の爪は異常に伸びており、下半身に至っては足がなぜか4本ありまんま爬虫類。そして言葉もトカゲみたいになっている、キモイ。


正に「人獣融合」。

トカゲが獣なのかは疑問が残るが。


「……これは人獣融合じゃなくて人虫融合では?」

「……たしかに」

「しかもしゃべり方まできもくなってるし」

「不完全な人虫融合の弊害じゃない? 本来の術式とは程遠いから副反応も出るんでしょ」


あ、人虫融合が思いのほか気に入ったみたいだな。

自分で言っていてなんだが響きもめちゃくちゃキモイ。


「本来の【人魔一身】はああいう風に力技でやるものじゃないのよ、融合するものと信頼関係をもった上でなすもの、それによってお互いの力を何倍にもはねあげる。だから彼の姿はほら」


見てと視線で前を促してくる。

徐々に彼の姿は異形の姿へと近づいていく。


「こ、これが古のチカラ……カっ!! ……湧き出……るアフレ出る、な…なんという全能感ッ、いま……今なら全て出来る気がする……ゾ」

「それは気のせいだ、間違いなく」

「……ォオン?? オマエ、カ。 ちょうど……良いト……コロにいる」

「さっきからいたが?」

「……レイ……ヤッ……ツキシロォォぉォぉォぉォぉッウァァァァァァッ!!!!」


……ウェ? か、会話が成立しなくなった。


「もう完全に呑み込まれたわね。 これが失敗した末路。 人としての自我は失われ、ただ災禍をもたらす異形となる、いえ違うわね、本来はなった、かしら?」

「どういうことだ?」


いまいち要領を得ないゼニスの物言い。


「単純な話、昔は“そうだった”ってだけの話。 私の時代は今よりももっと全体的にレベルが高かったから、でも私たちからすればこれは災禍になり得ない、ただの化け物。失敗作の中の出来損ないよ」

「……ああ」


めっちゃボロクソに言うねゼニス。


でもまあランダの力は強くなったのかもしれない。

だが代わりに……


「シェヒヒャァぁぁぁぁッ」


鉤づめを振りぬいてくる。

ギリギリで避けようとして玲夜は見た。

爪が途中で急激に伸びたのを。


「……へぇ、大道芸を覚えたのか?」


それでも余裕で反応できるのだが。


「…………いつもいつもバカ二、シヤッがってウェェェ!?」


「はぁ?」


何の話だ?

俺こいつをバカにしたの今回が初めてなんだが?

城の時にはそんな余裕なかったし。


「いつもイツモイツモォォォ、俺があまり上手くマナが使えないからってぇぇぇ!!見下した目をしやがってぇぇ、ブランもなんだ、「お前の格闘術❛は❛って!!」 だから目に……モノ見せてヤルッ、コこの技を使って、ジュ、獣人共を皆殺しにして認めサセる!!!!」


あぁ、こいつが勝手に喋ってくれた。


「言う相手間違えてない?玲夜じゃなくてブランに言いなさいよ、あ、言えないからこんなことしてるのね」


1人で辛辣に突っ込んで納得しないでくれゼニス。


……でもまあわかった。どうやらこいつはあの勇者の教官の中では見下されてた、とそう思ってるわけだ。

ホントのところがどうかは知らんし、戦争で功績を出すというのは見直す方法として間違っていない。

でも決定的に間違えたところがある。


「……お前は間違えた」

「……ナニ?」


さっきまで自分の世界に引きこもっていたやつが俺の言葉に耳を傾けた。



「その力確かに強くなった、スピードも速くなった、だが確実にさっきより総合的には弱い」


「…………弱…………イ? 俺が?この力を持つ俺がかァァァァ!!!!」


「ああ、ほらこいよ試してみせよう」


「バカにするなよ、たかが人間の、勇者のおまけの分際でぇぇェェェ!!」


「…………おまけ、ねぇ?お前はさっきからその付属品にも負けてるんだけどな?オマケに負けるお前は一体なんだ?」


思わず失笑してしまう。


「…………黙って死ねぇぇぇぇェェェ!!!!」


ランダは闇雲にただその身から溢れ出るスピードに乗って俺へと爪を振るう。


「シュァァッ!!!」


避けた俺に向かい何かの液体を口から噴射。


「汚っ!?」


汚いので避けると、落ちた地面がもくもくと白煙を吹き出す。


酸か、毒か、とりあえ人体に有害なものなのは間違いない。


「……ス、隙だらけだ、し、死ねぇぇぇ【⠀バーティカルスラッシュ⠀】!!!」


当たれば必死の一撃。

ちょっとした丘とかなら半壊させられるほどの威力…………かもしれない。


「……ハッ!!」


その一撃を玲夜は下から思い切りパンチを打ち上げることによって相殺、いやランダの爪を叩き上げ、折った!!


「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」


「さっきまでのお前ならそんな直線的な攻撃はしてこなかったぞ?変身したら脳が無くなっちまったんじゃねえのか?それと今までの経験も。今のお前はまんまただのモンスターだよ」


「も、モモ、モンスターだとぅぅ!?……ち、違う俺はァ!!」

「黙れ」


ランダの目にも止まらぬ速さで玲夜は剣を振り抜く。


「…………何を…………シタ?」

「あ?知覚できなかったか?ならそろそろ来るぞ?堪えてみろよ?」


玲夜は凄惨に笑い、指を鳴らす。


パチンっ!!!


その瞬間。


「……ッグギャァァァァッッ!!お、俺のうぅぅぅ腕、足がぐぁァァァァッッうぁっ………………」

「ん?気絶したのか?」


ランダは今両手と4本の足全てを切り落とされた状態。

一気に無くなったことで脳が処理しきれなくなったのかもしれない。


「……おいおい気絶すんなよ、強くなったんじゃないのかったくおい!!」


小突いて見ても起きる気配はしない。

弱すぎだよお前の切り札。


「それはどうせ起きないわ。とりあえずそのなに?生物?化け物?そのよく分からない虫を連れてギルドに帰りましょ?そろそろちゃんと休みたいし、拷問はその後でいいわ」



疑問の体を取ってはいるが彼女の中では決定したらしい。ゼニスは、人の返事も待たずそそくさと下山し始める。

…………この化け物を置いて。


「俺がもてってことか」


「浮かせて帰るのよ、修行だからこれ」


「ウェ」


「ひとまず依頼は達成できそうね」


その日、2人のC級冒険者が誕生した。



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