75話 無職と魔女は原因と出会う
いつもより長めです。
俺たちはギルドから依頼を受けて早々山へと入山した。
「なぁゼニス、……この感じというか……あぁなんだ? 雰囲気っていうのか? それがさ、なんか似てる気がするんだよ、ファナの母親に感じたものと」
「呪い、汚染、そんな感じかしら、私も同じようなものをこの山それ自体から感じているわ。……でもそうなると、いよいよ今回の話はきな臭くなってくるわね」
「……こうも連続して色々起こると人為的なものを考えるしかないよな」
こんなことが自然と起こるとは考えにくい。
イシュバルか、それともほかの国、はたまた同じ獣人。
無数の可能性が考えられる。
「……そうなったらそうなったで、相手は誰か、どうやってやっているのか、いろいろとまた疑問は出てくるけどね」
同じことをゼニスも考えていたらしい
「ゼニスでもどうやっているのかは分からないのか? そういうのはゼニスの方が得意だろ?」
「ジョブ的に言えば、それこそ魔物使いとかそっち系かしら? それか狂暴化させるような薬か何かを使っている……とか? 考えられるのはそんなところかしらね。 そうじゃないとすればこの山のモンスターが逃げ出すほどのナニカがいるか……」
「……結局は原因が分からないと推測の域から出ないか」
「ええそうね……それでどう?そっちはみつけた?」
「いーや、それらしきものは……ゼニスは?」
「こっちも変わらないわ」
俺とゼニスは山に入って以降、今までずっと別行動していた。
だからこれまでの会話は必然すべて念話。
なんとか今は飛行の魔法と念話、それと敵の警戒、それくらいなら難なく閉口思考出来るようにはなってきた。
というか依頼中であろうとなんだろうと修行は続けている。
ある意味実戦も修行っちゃ修行だが。
全ては復讐の為、俺だけじゃなくてゼニスと俺ら二人の。
ゼニスはゼニスで何かを練習しているらしいし。
ゼニス曰く、
「この世の中、前進するか後退するかしかない、停滞なんてありえない。停滞それすなわちも衰退の一つ。 だから常に成長し続けなさい。 ちなみにこれは経験則よ」
だそうだ。
なんてことを考えながら探しているうちに、何だかんだ探して既に1時間は経っている。
「一応山下の方を今は探しているが、やっぱり上っぽいよな」
「ええ見過ごしをなくしたかったからね、でももうあらかた見たしそれにファナのお母さんに感じた毒素、呪いのようなものも上に上がるにつれ濃くなっていく、だからそろそろ本命の上へと昇っていきましょう」
山頂に向かうにつれ、山は独特な雰囲気を発しており、呪いのようなものを強く感じる。
上空から見た限り、侵入を警戒したと思われる落とし穴のような古典的な罠などが所々に設置されていて今回のことが明らかに人為的なものなのは確定だ。
誰かとまでは分からないが一つ言えることがあるとすれば、
「こいつは酷く臆病で、そして性格がひん曲がってるのはくそ野郎だな」
「あら? すごい偏見ね」
「まぁもし性格が素直でいいやつだったとしても面倒をかけた時点で処遇は確定だけどな」
「なんだかんだあって全くゆっくり出来てないものね、せっかく私も久々に外の世界に出れたっていうのに。 邪魔してくれてほんとに」
「なんかあれだな牢獄から出所してきた受刑者みたいなコメントだな」
「まんまそうだもの、ついでにそのたとえでいえば冤罪で終身刑ってところかしら」
「ははは、時の牢獄……かぁ。 お互い人間の業というものが身に染みているねぇ」
ゼニスとくだらない話をしてお互い笑っているが、その間にもモンスターは狩り続けている。
俺は上空からモンスターに魔法で八つ裂きにし、時には切り裂き、ときには氷漬け。
とにかく殺しまくった。
「そろそろ合流するか」
「……そうね、どこで落ち合う?」
落ち合う……って言っても正直どこでもいいんだよなぁ。
……あ。
「なら山頂でよくないか? そこなら目印はいらないし、無駄足にもならない」
「後どのくらい?」
「……もう着いた」
「私も」
あれだな、ここだけの会話をみたら駅前で待ち合わせをしていた人達みたいな感じだな。…………まあ地球ではそういう機会は訪れなかった訳だが。
「……よう朝ぶり」
「何それさっきまで会話してたじゃない」
ごもっともで。
「……で? あれがモンスターの異常発生原因なのかしら?」
「じゃね?まぁちょっと役不足感は否めないが。 俺は、こうもっと金巨人みたいなのを想像してたんだけど」
「あんな化け物みたいなのいずれは戦うでしょうけど今はまだ遠慮しておきたいわ」
苦笑交じりだがそれは偽らざるゼニスの本心だろう。
基本強気のゼニスにそこまで言わせるんだからやっぱあの金巨人は強かったんだよなぁ。
それに引き換え……
「はぁ」
目の前にいるのは比較的巨大な黒いオオトカゲ。
まぁまぁでかいが、それでもドラゴンほどじゃない。
鉤づめも牙も凶悪だが、だが……
「正直余裕だな」
まぁ警戒するとしたらその上にいるマントのやつ。
十中八九あいつが主犯だろう。
俺が一応声を書けようとしたその瞬間。
「……我が配下を殺したのは貴様たち、か?」
なんで疑問形?
というかどこかで聞いた覚えのある声な気がする。
……うーん。嘘ついたかも。
そんなことを考えている間にも会話は進んでいく
「ええ私たちよ、あの雑魚共を葬ったのは私たち。ただただ不愉快だわ」
「くっ、私の魔導を侮辱しおったな、この雌が!!!」
「まるで童貞を拗らせた男みたいね?」
「やめろ、言ってやるな。 事実だとしても羞恥で顔を真っ赤にしているじゃないか、その上死んだ魚みたいに口までパクパクさせている、全くデリカシーのない……」
やれやれだぜ。
「何上から目線なのよあなたも変わらないじゃい」
「…………貴様ら私をコケにしてぇぇぇ、その顔絶対忘れな…………ん?」
な、なんだ?
なんでそんなこっちをじっと見つめる?
き、気持ち悪いんだが?
「あら?……まさか2人でそっちの道へ?」
ゼニス……違うだろう、
いくら道中ストレスが溜まっていたからってここぞとばかりに発散するのはやめてくれ。
だがどうやらゼニスの煽りが聞こえたのは俺だけのようだ。
何故か俺を注視つづけ、そして唐突に笑い始める。
「くくくっ、ふはははははははっ、そうかそうか、お前かぉ、あはははは、すごい偶然もあったもんだなぁおい」
え?なんか急に笑い始めたキモ。
俺もゼニスも普通に引いてしまう。
いやまぁこんなことを起こすやつだからろくな奴ではないけどここまで奇人だったとは。
「どうやらピンときてないようだなええ?…………いやはやまさかとは思ったが、ははは。どうやら私はついているらしい」
「気でも狂ったか?」
「……いやいやまさか生きていたとは……これは私も本当に運がいい。こんなことになるとは。で、なんだったかな? 気が狂った?この私が?ありえない。どちらかと言えば気が狂うような目にあったのは君の方だろ? レイヤ・ツキシロ」
こちらへの嘲笑を隠そうともしない。
レイヤ・ツキシロ。
俺の名前。
顔だけでそれを判断した。
ということはそれつまり……
「イシュバルか。それもあの王に近しい関係」
「どうやら君も思い出してきたようだな、いやあれかあの頃の記憶は意図的に封じていたのかな?…………ぷッ」
「はぁ、別に忘れてた訳じゃねーよ、た、だお前が誰か未だわかんねーんだよなぁ正直印象薄いって言うかさ?」
俺の安い挑発に男はこめかみをぴくりとさせる。
存外プライドの高い男らしい。
「…………まあ私を覚えていなくても無理はない」
「おっ、自分でキャラ薄いの認めたのか?」
これは驚きだ。
「違うっ!貴様と実際あったのは1度だったからだ。まあ私はこの世界にはこのような無能が存在するのか、っと衝撃を受けて覚えてはいたが」
「そりゃどうも」
「そんな可哀想でデコピンで気絶するよう貧弱な君に高貴な私の名を教えてあげよう、どうせ死ぬ命だ!! 光栄に思え!!」
いや言うて俺お前にそこまで興味無いんだが?
どちらかと言えばこんな気味の悪い男の名前を知りたくもないが?
どうせ殺すし
てかデコピン?
そんな俺の思いとは裏腹に奴はマントのフードを下ろし、その素顔を露わにする。
「私の名前は、ランダ・シュナイザー。勇者たちの教官を担当させていただいているものである!!」
前言撤回、興味出てきた。
さぁどうやって嬲り殺そうか?
いつもお読みいただきありがとうございます
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誤字脱字報告いつもありがとうございます、めちゃくちゃ助かってます!!
あと気づいたら1000ポイント突破してました。
ありがとうございます!!




