70話 無職と魔女は冒険者する
冒険者するという謎ワード……。
それと遅くなってすいません!!
なんか毎回言ってる気がする(´;ω;`)
俺たちが無事ノーラの冒険者になって1週間。
冒険者ランクはF~Sまである中でまだEにしかなっていない。
冒険者になったときとかクエスト中とか、最初のうちは冒険者のやつから丁重なもてなしを受けたりしててお礼参りしてたら1週間経ってしまった。
だからランクも一個しか上がらなかった。
まぁお礼参り以降変に絡んだりしてくるやつもいなくなったので今後の為の初期投資と思えば安いものだろう。
そんな怒涛の1週間で分かったこと、それはこの街では基本的に武力がものをいうことだ。
それがここでの単純明快な一つのルール。
だから俺らからしたら非常に住みやすいし尊敬されるはず。
……そのはずなんだが、なんか避けられてる気がするんだよなぁ。
やっぱ最初に絡んできたやつをパンツ1枚にして魔法で磔にしたのがまずかったか?
なんてのんきに考えながらも俺は今も依頼をこなしている。 まぁ常駐のやつだけど、多分……。
「……しかしこうなってくるともう作業だよなぁ」
手近にいるゴブリンを殺して、近くにいるゼニスに話しかける。
本当に何の変哲ないゴブリン。ダンジョンにいた時のような一癖も二癖もあるようなゴブリンじゃない。 本当に5~60センチの緑色をした醜悪で鈍重で棍棒をもった二足歩行のあやつ。オーソドックスなやつ。
俺を崖際へと追い込んだあいつらだが今の俺にとってはそこまで恐怖じゃない。
数万匹のモンスターのデスマーチをを経験した俺にとってはこんなの余裕すぎる。
ただただ闇雲に突っ込んでくる敵に向かって魔法を放つ。
そんな作業。
もうちょっとなんか毒はいたり電気を纏わせたり、そういう捻りが欲しいよなぁ。
ゼニスに至ってはめんどくさくなったのか自分の周りに冷気を張り巡らして自分に近づいてきた敵だけ倒すようにしてる。
しかも冷気の内側にはモンスターを呼び寄せる撒き餌まで用意している周到ぶり。
「たしかに暇ね……」
「そりゃそんだけ敵をオートで倒すよう仕掛けてたらそりゃ暇だろうな」
「でも効率的よ?」
「そのおかげでさっきからモンスターが続々と増えてきているんだが? 減らないんだが? お前の周りにあるモンスターの彫刻も増え続けてるし」
「まぁまぁそうカリカリしないの、それよりも今回の依頼って何だったのかしら?」
「……多分ゴブリン10匹の討伐、オーク一匹の討伐、ノーマルフラッグ5匹、ヘルハウンド5匹そのあたりだったはずだぜ?」
ゼニスが覚えていない訳じゃない、そもそもゼニスは今回の依頼を聞いていない。
俺がギルドに行って適当に何枚か見繕って受注する、そんな感じで今ここに至る。
そして俺も適当に選んでるから正直覚えていない。
そしてゼニスは何のモンスターを狩るかも知らないまま虐殺。
彼女曰く、
「これだけ死体があれば依頼のモンスターもいるでしょ」
との事。
なんて脳筋思考なんだ。
俺でもそんなことちょっとしか考えてなかったって言うのに……。
撒き餌をするためにちゃんと周りへの配慮を警戒して人気のなさそうな場所を選ぶ冷静さもある魔女……。
言うなれば冷静さを兼ね備えた脳筋魔女。
うん、ぴったりだ。
「氷柱」
初めて自発的に攻撃したかと感心してたら俺の方に向けて攻撃しやがった。
「こんにゃろっ!!」
体を後方に思いっきり傾けずらずもマト○ックスのネオばりのよけ方をしてしまう。
俺の顔面ギリギリを莫大な質量の氷柱が通り過ぎそのまま後ろのモンスターたちを氷壊させてゆく。
まぁこんなのは日常茶飯事。
大人の俺は優しく許してや…
……前を見れば氷柱が馬鹿みたいに向かってきてる。
「いやさすがにそれはむりぃぃぃ!!」
なんとか形になり始めた魔法をこんな形で、しかも味方からのフレンドリーファイアで試すことになるとは……。
仕方ない!!
まずは上方へ思いきりジャンプ。
「そう避けるのね、なら落ちてきたところを――――――ってへぇ。飛べるようになったの」
飛んだまま降りてこない俺をゼニスは感心した顔で見上げている、そして魔法を放つ手も止めている。
その言葉を聞いて俺は苦い顔になる。
なぜならこれは別に飛んでいる訳じゃないから。
「……まだ飛べてはねぇよ、こりゃただ浮いているだけだ」
「あら? てことは?」
ゼニスは意味ありげに、もっと正確に言うならば性格悪そーに微笑んでいる。
絶対ろくでもないことを考えているに違いない。
「動かない的ね」
「味方だ、的じゃねぇよ!?」
「それじゃ味方を実戦で鍛えてあげないと」
さすが脳筋魔女
すぐに魔法攻撃を再開する。
一応氷柱の角は取ってらしく当たっても死なないようにしてるみたいだがそれでも当たったらめちゃくちゃ痛いのは間違いない。
なんだその無駄な気遣いはっ!!
それが出来るなら普段から俺にもっと優しく…………うん、それはそれで気色悪いな。
「今余計なこと考えたでしょ? ウインドブラスト!」
「んにゃろ!! 白炎!!」
痛いのはごめんなので魔法を発動させ氷柱を一気に蒸発させる。勢いそのままに白炎はゼニスの周りにのモンスターも消滅させていく。
建前はゼニスを守るためのモンスターのせん滅、本音は煙と暑さによるゼニスへの嫌がらせ。
ははは、我ながらなんて名案なんだ。 今頃蒸気の下ではゼニスが嫌そうな顔をしているに違いない、出てきたゼニスの顔が見物だなぁ。
想像するだけで楽しいもの。
「いやーゼニスをモンスターの魔の手から助けるためとはいえ、煙にまみれさせてしまうとは、いやー心苦しいなぁ(棒)」
「……ご丁寧に棒までつけてくれてありがとう」
ゼニスの不機嫌そうな声が聞こえるとともに蒸気が一気に晴れる。
多分風系の魔法かなんかだろう。
だが残念なことにそこまでゼニスは汚れていなかった、まぁ顔は嫌そうではあるが。
ちっ。
「私を助けるためにしてくれたんでしょう?」
「ああ、もちろんだとも!! 絶対に守らなきゃって思ったね!!」
「モンスターの死骸売れなくなったんだけど?」
「え?そこ?」
案外ゼニスさん金銭面がけち臭い?
「今また余計な事思ったわね、あら? あなたを下から狙うモンスターがいるわこれは危ないわー危ない危ない(棒)」
ゼニスもわざとらしく棒をつけてくる、やられたらやり返すということだろう。
下を見れば一応ゴブリンどもが粗末な弓でこちらを狙ってきている。……2匹だけだが。
「あの距離なら当たらないから問題な……「あれは危ないわかなり危ない、私があなたを守ってあげるから安心して」……え? 話聞かない?」
ゼニスはそう言って大きめの氷結柱を創り上げる、ちょうど俺の真上に。
「んんん? ゼニスさん? 俺まで斜線上に入れちゃってるよ? ま、間違ってるよ? しかもそれ明らかオーバーキル……」
「あら? そうかしら? でもあれじゃない、そんなの些細な違いよね?」
悪魔の笑みだった。
あいつ俺を霜焼けにする気でいやがる。
しょうがないここは嫌々だがまた風弾で進路変更を……
「逃がさないわよ?」
ゼニスは俺の周囲を氷で覆っていき逃げ場をなくしていく。
それは俺をか? ゴブリンをか!?
ゼニスの眼が言っている、俺だと。
だってゴブリンなんて視界にすら入ってないもの。
ゼニスが魔法を放とうとしたその瞬間。
「ちょ、らめぇぇぇぇぇ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「「……ぅん?」」
俺のとは違う甲高い悲鳴、それも切羽詰まったような声がどこかから聞こえてきた。
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