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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
3章 外遊~禁忌な二人は自重しない
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68話 無職の望みは得られない

7月になってしまった…

 

 ゼニスの変な勘違いを解消してから数日。

 俺たちは俺が知っている数少ない街へへと出ていた、そうサランの街へ。


「街自体はそんなに変わらないのね、昔よりは幾分か、というかかなり緊張感はないけど」


 ゼニスは田舎から都会へ出てきた田舎娘のような感想を抱いている。


「そうだな、でもこれでも頑張ってるほうだぜ?昔はもうちょいのんびりしてた」


 だから俺はこの街の先輩として後輩にご教授して差し上げる。


「いや昔って三日かそこらでしょ?しかもその緊張の原因をつくったあなたが何威張ってるの」


 なのにゼニスからはジト目で見られた。

 解せぬ……せっかく先輩が教えてあげたというのに……


「それにしても……」


 街行く人が俺らをチラ見していく。

 そんなに珍しいか?黒髪は。

 こういう不躾な視線は心地悪い。


「ほら行きましょ、こんなとこに長くはいたくないわ」


 ゼニスも俺と同じ気持ちだったらしくそそくさと先を歩いていく。


「ああ、だが一個より道でもしようぜ、この鬱陶しい視線をどうにかするために」

「……あなたっ、まあいいわ」


 なぜかジト目で見てくるゼニス。

 何だと思ってるんだ?


「いいからいいから」


 向かった先は外套を売っている店。

 そこで黒いフード付きの外套を2着購入する。

 もちろん店員にはゼニスが幻術をかけ俺らの存在を覚えていないように偽装はした。


「……案外まっとうな方法だったわね」

「一体何をすると思ったんだよ」

「皆殺しかしら?」

「この程度でそこまでしねえよ?! ていうかおまえ「まぁいいか」ってそういえば言ってなかった?!」


 ちゃんと考えたらこの女の方がやばくないか?ねぇ!


「あなた今までの行動でそれを自信持って言えるの?」

「そんなのもちろん……」


 ダンジョンでは皆殺し。

 でも外ではまだ殺してない、うん。言えるな!!


「言えるさ!」

「ふーん。じゃあもし危害を加えてきたら?」

「お仕置きだ!!」

「それ言い方変えただけじゃないの?」

「……よし外套を着て目的地へ行こう!!」

「露骨に話逸らすわね、まぁいいけど。 それでも問題はないしね」


 *


 色々あったがようやく目的地に着いた。


「へぇここが冒険者ギルドかぁ」


 目の前には謙遜して言えば小汚い大きな居酒屋のような店、率直に言えばいかにもごろつきのたまり場と言った感じの風体の建物が。


「ここは昔と変わらないのね」

「へぇ来たことあるんだ」

「ええ何度かは」


 そりゃ魔神との最前線で戦ってたんだもんな、そりゃ来たこともあるか。

 中は存外綺麗で予想していたほど汚くはない、中にいた人間は見るからに行儀悪そうだったがそれも関わらなければ関係ない話だ。

 今回俺たちが来ている服はどこにでもあるようなローブ、からまれるようなこともあるまい。


「なんだお前たち、ここに何しに来た」


 入ってすぐのところに紙が掲示板にのようなものへとまばらに張られている、多分これがよくある依頼を張り付けておく板みたいなものだろう。ここから紙を取って依頼を受領するそんな感じのはずだ。

 まぁゼニスに一応確認するわけだが。


「ってことでいいんだよな?」

「ええ、そして前にある人が座っているあそこのカウンターが受付ね、たぶんそこで冒険者について説明してくれるはずよ、まぁ昔と変わってなかったらの話だけど」

「陰気くせぇお前らのことだよっ!!」


 ゼニスがいたのはかなり昔の話、システムが変わっててもおかしくはないが冒険者というものが残っている以上俺はそこまで大きな変化もないようには思う。


「……まぁいってみればわかるか」

「おい!!」


 カウンターにいたのは目が少しきつめの妙齢の女性。


「……本日はどのようなご用件で?」


 言葉こそ丁寧だが、その態度は見るからにこちらを歓迎する様子はない。


「冒険者登録するにはどうしたらいいんでしょうか?」

「そうですね、とりあえずその後ろの男を何とかしたらお話しします」

「はぁ?」


 後ろを見ればさっきから騒いでいたやつが真後ろに立っている。


 何だこいつは、まあいい。


「……それで冒険者になったら知っておくべきことが書かれてある、みたいな紙はないのでしょうか?」

「俺を無視するとはいい度胸じゃねぇかっ!!」

「……早くしてくれませんかね、こちらも暇じゃないので」


 さして自分が気が長いわけでもないことは自覚している。

 一向に返事がない受付嬢。


 マジでなんなん、ここは。

 もう早く帰りたいんだが


「……はぁもう知らないわよ、はいこれ」


 カウンターの下から数枚の紙が出てくる。

 やっぱあるのかい、さっさと出せばいいものを。

 さっと書面を流し読みし、思った通りのものがそこに書かれてあるのを確認する。


「やはりこんな感じだと思ったんだよなぁぁぁ、とんだ無駄足じゃないか」

「何一人で納得してやがんだあぁん!?」


 もうここに用はない。

 本当はあったが今かそれは全て無に帰した。

 なら今日やることはほとんど終わった、さっさと拠点へとかえって惰眠を貪ろっと。

 ゼニスなんてもう反転している、いや行動早いかよ!!


 とりあえず俺の進行方向を邪魔している後ろで()()をつぶすよう拳を振る。

 が、届く寸前でその羽虫が何者かに蹴り飛ばされる。

 何の警戒もしていなかった羽虫は勢いそのまま壁下とめり込む。


 まぁどうでもいいので出口を見やると、ゼニスが既に道を歩き始めているのが見えた。


「おい、待てって。ちょはええぇよ!!」


 俺は慌ててギルドを出てゼニスの後を追った。


 *


「……誰だぁ俺を吹き飛ばしたやつぁ」


 玲夜がギルドを出て数分、意識を取り戻した男は目の前の光景を見て眼が点になる。


「俺だよ」

「アラド……さん」

「……ったくお前誰にでも喧嘩売るんじゃねぇよ、せめて売っちゃいけない相手ぐらいわきまえろ」


 めんどくせぇ、と頭をがりがりかきむしるアラド。


「……でもひ弱そうなやつらでしたぜ?」

「外見でなんてそいつの強さは分かんねぇよ、そういうやつは三流だぼけが。 そんなんだからお前はD級から上がれねぇんだ」

「で、でもですね」

「いいか? あいつらはやばい、お前俺が飛ばしてなかったらどうなってたと思う? 首から上が吹き飛んでたぞ」


 アラドの言葉に周りで聞いていた者もさすがに眼を見張らせる。

 疑い半分、信じているもの半分と言ったところか。


「そ、そんなまさか、あいつは俺の方見てすらいなかったんですぜ?」

「その必要すらなかったんだよ」


 はぁ、とアラドは嘆息する。

 こりゃこいつが昇格できるのはまだまだ先の話だな。


(そにしてもあいつら、なんの躊躇もなく腕を振りぬいていた、本当に殺す気だった)


 Bランク冒険者上位のアラドでさえ奴が振り向くギリギリまで気づかなかった。


「何者だったんだあいつらは……」


 それはギルドに居た者全員の総意だった。

土日には上げられるようにします!!


感想お待ちしてます!!

誤字脱字報告助かります!!今後もしていただけると嬉しいです。

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