63話 無職は予期せぬ再開を果たす
まさかの本日2話目!!
2章の最後にステータスをいれたのでよかったら確認してみてください!!
「どういうつもりだゼニス?」
自分の口から予想以上に冷たい声が出た。
ゼニスが裏切るとは思えないが、それでも先ほどの魔法の意味は分からない。
「落ち着きなさい、玲夜あなた今自分で思っているよりもよほど険しい顔してるわよ?」
ゼニスが魔法で鏡を作り出しこちらに向けてくる。
見れば確かに言われた通りかなりひどい顔をしている。
まぁそれも仕方ないといえるが。
「二度も、しかも別々のやつにやろうとしたことを邪魔されればそりゃ苛つきもする」
「あらそれは大変」
「そのうちの一回はお前も被害者で、そしてもう一回はお前が元凶だからな?」
なのにまるで他人事のように言う。
「だから落ち着きなさいって」
「…………ふぅっ」
確かに少し冷静さを失っていたかもしれない、まぁ意地でも口には出さないが。
「落ち着いた? 話をしてもいいかしら?」
「ああ」
「私がさっき斬撃を止めた理由は単純、情報を聞き出す為よ」
情報?
それはさっき俺が――
「――俺が聞いた、って顔をしてるわね」
「……そんなに俺ってわかりやすいか?」
ちょっと不安になってきた。
「普段なら別だけど今はあなた気分を害してるみたいだから」
「はぁ、まぁいい、で説明の続きは?」
「さっき彼女たちは答えなかったわけじゃない、答えられなかったの」
「……答えられなかった? なんで?」
そう聞いた瞬間、ゼニスが呆れた目をしてこちらをみてくる。
「なんだよ」
「ねぇさっきのあいつらの攻撃どう思った?」
「はぁ?どう思ったって、「なんだこれは」が正直な感想だな」
「もう少し具体的にお願いできるかしら?」
「ふざけてんのかって思ったな、うん」
俺を更に苛つかせる要因の一つにはなったし。
「別にあれ彼女たちがふざけていた訳じゃないわよ、むしろあれで全力」
「……は? そんなことないだろ、前に魔導をみたときはもっと――」
「それって玲夜が何も使えない時の事でしょ?最後にあなたが魔導を見たのはいつ?」
いつって、多分あの蒼い騎士たちの時?
後は城での魔導の練習の時、ぐらいか?
ん?案外数がないな。
「思い出効果とでも言えばいいのかしら、過去の、昔あなたが無力だった時に見た魔導の印象を必要以上に強いものと思い込んでしまっていたみたいね、だから認識の齟齬が起こった」
「……そんなことも、あるの、か?」
無いとは言い切れない、普通に修行していた期間も含めたらかなり昔のことだしな。
「それにさっき玲夜は質問に答えなかったといったでしょう?」
「ああ言った」
だからめんどくなったんだし。
「あれちょっと違うわよ、確かに答える気はなかったかもしれないけど」
「……それの何が違うんだ?」
「彼女の沈黙は意図せざるもの、じゃあなにがそうさせたのか」
「…………」
全くわからん、俺はなんもしてない。
てことはゼニスがなんかしたなうん。
「私は今回何もしてないわよ、本当に」
確かにさっきの攻撃でもなにもしてなかったしな。
まぁ結果的には何かする必要もなかったわけだが……。
話を戻すと訳が分からないってことになる。
「これも単純な話、あなたの殺気」
「殺気?」
出してないけど?
「あなたから自然と流れ出る、ほらさっき玲夜苛ついたでしょ、あれ」
「そんなのまじで微々たるものじゃね?」
「彼女たちにしてみればそうじゃなかったのでしょう」
「……ふーん、で?」
「情報を取っておきたいから何人か生かして、特にあの長みたいな人は絶対」
「俺がやる前提なのな?」
「あら今回私は譲ったつもりだったのだけど?」
「はは、そりゃ助かる」
そこでようやく玲夜はミリアたち白銀騎士団の方を向く。
「今攻撃すればいいものを……って態勢の立て直しをしてるのか」
さっきは動けていなかった騎士たちの半数がこの短い間に動けるようになっている。
(これ以上動かれるとめんどいな)
「ふぅ、んじゃやるか」
とんっと軽く足をつくと玲夜は一瞬でミリアの前へと移動する。
「……くっ、はぁっ!!」
驚いたのは一瞬。即座に腰にある剣に手をかけ斬りかかってくる。
そのひと振りも美しい。
だがそれでも――――
「――――遅い」
拳をミリアの手首に打ち付けてひるませそのまま意識を刈り取る。
「ぐっ、なぁっ…………はぁ、こ……のっ?!」
ミリアを横向きに抱え、一旦ゼニスのところまで舞い戻る。
「これでいいか?」
「ええ、希望を言えばあと何人かほしいけど」
「出来たらな」
「そう」
団員たちはこちらに向かって魔導を放とうとしていた。
団長を取られて戦意喪失はしなかったらしい、ある程度優秀な集団だと思える。
まぁそれもそもそも団長を奪われるなって話だが。
「だからと言って何かが変わるわけじゃない、お前らは俺たちの敵だ、火魔法【獄炎】」
空を覆いつくさんばかりの白炎が白銀騎士団を襲う。
いや襲うはずだった。
「我願い奉るは水の精霊なり、青は生を生み出し、また死を運ぶ。 万物の源流であり万物の終着点。 大滝をもって我が敵の攻撃から我らを守りたまえ『アクアフォール』!!」
どこからか聞き覚えのあるような声が聞こえ、次いで白銀騎士団の周囲をぐるりと高圧の水流が現れる。
獄炎とぶつかり合い、多量の水蒸気が巻き起こる。
水蒸気が晴れた先には軽症の火傷を負った白銀騎士団が。
しかしそれよりも俺を驚かせたことがある。
「…………ローリー」
城で俺と楽しく日本語談義を交わした金髪のゆるふわカールイケメンが、今回は厳しい顔でこちらを見ていた。
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