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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
2章 2人の世界~禁忌な2人は力を得る~
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58話 無職はボスへと挑む⑥ー相討つ

一週間相手申し訳ない!

金巨人戦、ラストです!

 

 「…………ん……っ」


 地面の硬さと身体を覆う疲労感に不快感を抱きながらも意識が覚醒していく。

 起き上がろうと足に力を入れたところでがくっと膝をついてしまう。


 「どの程度休んでいたのかしら」


 ただ剣戟と魔法の音が響いているので気絶していた時間はそんなに長くはないはず。せいぜい10分かそこらだろう。

 玲夜は約束通り、私が起きるまでは耐え抜いてくれたらしい。

 しかも私を魔法で覆ってくれている。


 (前に私が玲夜を護った時と同じようにしたのね)


 「…………なに…………これ」


 外へ出て唖然とする。

 ボス部屋である第100層、その地面には平と言える場所が見当たらなかった。

 地面の至る所にはクレーターのような陥没が出来、ある場所では溶解し、別の場所では底が見えないほどの穴へとなっている。

 それと所どころには凍り付いた場所、端には守護者の残骸。


 最後の方は意識が飛びかけで記憶があまり定かではないけど、どうやら何とかなったらしい。


 中心では金巨人と玲夜が対峙している。

 その二者の姿に私は思わず息を呑む。


 金巨人は漆黒で出来た鎧を身にまとってはいるが、その所々が剥げ落ち内部の肉が見え、頭部の兜は半分が欠けており、6本あった腕も3本まで減らされている。

 対する玲夜の方が事態は深刻で左腕は無くなっており、身体節々から出血している。多分骨も相当数折れているに違いない。

 しかも多分あの傷のつき具合からして金巨人がつけたものは左腕くらいだろう。後はすべて彼自身で付けたはず、となると―――


 「―――身体強化の重ね掛けね」


 しかも一つや二つじゃない、相当数使っている。


 私の考えが正しいことを証明するかのように玲夜が動き出した瞬間鮮血が噴き出す。

 私でさえも目でどうにか追いつけるほどの速さ。

 そんな玲夜の斬撃を金巨人は受けとめ、さらには余った手で反撃する。

 だが玲夜は引かない、身体すれすれでそれをいなし魔法を放つ。


 「獄炎」


 その距離で攻撃をすれば自分もそのダメージを受けることは必須。

 案の定、金巨人にダメージを与えることには成功したが自分も火傷を負っている。

 なのに、それなのに―――


 「―――嗤ってる」


 彼はこの生死を賭けた戦いの中で嗤っていた。

 敵を斬り、そして自分も傷つく。

 死ぬことを一ミリたりとも恐れてはいない。

 いや違う、恐れていないんじゃない。

 生きていることを実感しているといったほうが正しいか。


 だから玲夜は常人なら踏み込めない、相手の間合いへと入る一歩を悠々と踏み抜くことが出来る。だけど今までは私も比肩する玲夜の圧倒的な力のおかげでそれが露見しなかった。

 それが表層化したのは最近、ダンジョンの終盤になってから。


 だから彼は狂人化出来るのだけど、多分今も使ってるでしょうし。

 本人はなぜリスクもなく使えるのかわからないって言っていたけどそれは違う、ただ元々くるっているからリスクが無いように見えるだけ。


 「なんて今は言っててもしょうがない」


 私も今の状態で最大限のことをしなければ。


 復活の魔女が静かに動き出していた。



 *



 対して玲夜。

 ジグザグに移動し、敵に的を絞らせないように動いていく。

 全ては最後の1撃を当てる為。


 もうそれ以上は剣を振ることが出来ないし、じり貧になるだけ。

 ここらへんが勝負のつけ時。


 高速で移動しながらも魔法を放ち煙幕を立てる。

 奴の視界をふさぎ一気に最後の魔法を構築していく。


 思えばこのダンジョンに入るために最初に使ったのもこの魔法だった。


 基本的なイメージはあの時と変わらない。

 根本の魔法のイメージは{破壊}

 斬鉄と硬化の魔法を追加でかける。

 あの時は更に自身のMP半分と性欲を使って魔性力斬にした。

 今回はあの時とは状況が違う。


 左腕はないし、身体も裂傷だらけ。

 マナもそこまで残ってるわけじゃない。

 だから半分なんて半端な者じゃなくて、マナも気力も体力も、そのすべてをこの一撃に込める。

 失敗なんて考えない。


 後はただ放つのみ。

 煙幕を挟んで突っ込もうとした寸前、金巨人のマナが膨れ上がるのを感じる。

 金巨人が放つマナの余波は蝋燭が最後に燃え上がるような激しさと力強さが兼ね備わっておりこの戦いの中で、1番のプレッシャーを感じさせる。


 「んじゃ、最後の力比べと行こうか」


 超速のスピードで加速をつけ一気に金巨人へと肉薄する。

 対して金巨人は玲夜を待ち受けている。


(お前のすべてを跳ね返してやるってことか)


 俺の剣は金巨人が創り上げた防御魔法を易々と切り裂き、次いで金巨人の手斧と激突する。

 派手な火花が辺りに飛び散り、自然と鍔迫り合いになる


 「……こなくそぉぉぉっ」


 持てる力を振り絞り、手斧を徐々に徐々に押し込んでいく。

 後一歩と言うところまできて背後に違和感。

 振り返らずともわかる金巨人の魔法が後ろから俺へと迫っているのが。

 俺が剣を振り切るのが先か、魔法が当たるのが先か。


 結果はすぐに訪れた。


 「俺のほうが早い」


 金巨人の手斧を粉砕させ、そのままの勢いで金巨人を右肩から左腕にかけて袈裟斬りにする。


 「ぐがぁぁっぁぁぁ」

 「……ははっ」


 斬ったその数瞬後、俺の身体の中心を漆黒の矢が突き抜ける。

 お腹に違和感を感じ次いで喉の奥から熱いものがこみ上げ立っていられなくなる。


 「……がふっ!!」


 膝から地面へと崩れ落ちるが、それでも目線だけは金巨人に向けたまま。

 体を斜めに切り裂かれた金巨人の目はしかしいまだ光を放ち続けている。


 「し、ぶとい……な」


 (う、うごかない)


 指をピクリと動かすことさえ出来ない。

 腹からは血がとめどなく流れだしていて刻一刻と死へと近づいていく。

 だが金巨人はそれをゆっくりと待つつもりはないらしい。


 眼に残りのマナが込められていく。

 そのスピードは先ほどまでとは比べるまでもなく遅い。

 しかし今の俺に何が出来るわけでもない。

 だから唯一出来ることをする。


 「さぁ、共に逝こうか金巨人よ」


 お前もその攻撃を放ったら死ぬことは分かってる。

 だから最期は目線を逸らさずにいよう。


 そしてマナがたまり金巨人からビームが発射されるその瞬間、空より銀の棺が金巨人へと落槌する。


 「氷棺(アイスコフィン)


 超重量の物体は死にかけの金巨人を押しつぶし、圧砕する。


 「さっきとは逆の形になったわね」


 氷棺の上にふわりと降り立つ滑らかな銀髪。


 「よ、よう、無事で、よかったな」

 「ええ、まぁおかげさまで」


 いつもの憎まれ口、皮肉を言えるぐらいになったらしい。

 ぱっと見、怪我もそこまでなさそうだ。


 「ふぅ…………がふっ、げほげほっ」


 なんて人の心配してる場合じゃない、俺の方が血反吐が止まらなくなってきた。

 もう意識も持たない、なら最後に言わなければ。


 「お、おれ、は…………と、り…………あえ……ずね…………る」

 「……いいから今はさっさと寝なさい、氷結」


 ゼニスの氷が俺を覆っていく。


 (え?なんか永眠させようとしてる?ってあ、もうだめ、だ)


 俺は意識を手放した。

もうちょっとで二章終わります。


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