50話 無職と魔女は最後の戦いに挑む
お待たせしました、本編です。
とうとう来た、第100層。
長かった……ほんっとうに長かった。
時間にしてみれば修行してた時の方が圧倒的に長いんだろうけど、このダンジョンで過ごした時間が濃密だったせいかそれ以上に感じる。
だがそれも終わる。
「……感傷に浸っているところ悪いんだけどそろそろ行ってもいいかしら?」
「そんな急かすなよって言いたいところだけどそうも言ってられないよな?」
「ええ、わかってるんだったらさっさと行くわよ」
「はいはい了解っと」
「はいは一回でしょ?」
お母さんかよっ!?
魔法を受けたくないから突っ込まないけどさぁ。
最後の門を開けると中にはただ一体の無骨で巨大な守護者。
その更に後ろには上へと続く階段。
十中八九あれが外へと出るための階段だろう。
「金巨人と戦った時の作戦で行くのはどう?」
「無理、あれは奇襲だから出来る作戦だしそもそもモンスターの性質が違う」
「性質?」
「そう、金巨人は好戦的なモンスターだけどこのガーディアンは違う。奴が優先するのは外へと抜ける階段を守護すること。だから私たちが悠長に話していても攻撃してこないでしょ?」
「……確かに」
見た目は大楯と剣と言う騎士風のスタイルで突っ込んできそうなのにな。
いや騎士でも防衛はするのか。
「でもこっちが攻撃したら話は別だけ……どっ!」
言い切ると同時にゼニスは貯めていたマナを開放、極大の魔法を放つ。
「氷棺」
超大の氷が守護者を囲い込むように展開されそのまま守護者を押しつぶし、さらに追い打ちをかけるように内部では氷柱が守護者を串刺しにする。
俺は長剣を携え、そのまま氷漬けの守護者へと肉薄したのと同時に氷棺が爆散する。
そこにはあれだけの魔法を喰らいながらも全体的に軽微な損傷しか受けていない守護者、所々に傷はあるけど期待してたほどのダメージは入っていない。
「……ははっまじか、あんなやばい魔法喰らってこれか」
俺が受けてたらかなりきついってのに、いやそんだけこいつの外皮が固いのか。
先にバフを自分にかけておいて良かった。
やることは変わらないんだけどな。
長剣で、軽く損傷している部分だけを狙って斬りつける。
返ってきた感触は肉を切り裂く感触のそれとは違う。
二度、三度と斬りつけるが切り裂ける感触は帰ってこない。
「うぅぅ、かってぇっ!?」
俺が斬りつけたところは数センチ傷が深まったかどうか。
そして遅れてくる手のしびれ。
バックステップで守護者から一旦距離を取る。
前を見れば守護者の眼がギラリと赤く点灯している、どうやら起動したらしい。
「……おい、ゼニス、あいつやばくね?」
「一応性能は自分たちで造ったから分かってはいたけど改めて対峙するとよりそれを実感するわね」
あ、あれを自分たちで造ったの!?
んじゃ過去のゼニスもやべぇじゃん。
「てことは過去のゼニスはこいつを倒せたのか、なら倒し方も……」
そう、期待に満ちた目でゼニスを見つめてみても帰ってくるのはいつもと変わらない怜悧な視線。
「倒し方とかないわよ?正攻法のごり押しが正解」
「んじゃどこかを押せば機能停止とかも?」
「ない、というかそもそもそんなもの作って罷り間違って魔神に押されたらどうするのよ」
「確かに……」
「それに過去の私でもこの守護者は倒せないわ。その当時持っていた最高のものを惜しみなく注ぎ込んだのがこれ、ミスリルとかアダマンタイト後は少量のオリハルコンとかね、ああ一応言っておけばオリハルコンは世界で一番硬い金属で、ミスリルとアダマンタイトはその次に硬いもの、性質は違うけど。」
「過去のゼニスでも勝てなくてそれかなり強いやん」
しかも最高級のものを使ってらっしゃる。
「昔の話だから、今は違うけどね?」
「……え?」
あれ、ゼニス力失ってるとか言ってなかったっけ?
「何か勘違いしてるようだけど今の私は昔の私より強いわよ?」
「……なんでって、うおっ!?」
守護者から魔法が飛んで来たっ!?
左右に飛んで回避していくが予想以上に数が多く避けきれない。
長剣で残った分も斬り伏せていくがそれでも全てを防ぐことは出来ず幾分かダメージを受けてしまう。
「って一発一発がおもいっ!?」
ただ致命傷は確実に防いだ。
代わりに長剣にはひびが入ったが。
「あ~きっつい」
「……あら疲れたの?」
横を見ればゼニスも多少ながら傷を受けている。
ここまでほぼ無傷で戦ってきたゼニスにしては珍しい。
「ははっなわけ、戦いはこっからよ」
受けた傷も既にかけてあった{常時回復}によって回復している。
それにしてもマジか、今回俺はちゃんと {破壊}{毒}{斬鉄}{雷神}{硬化}を付与し更に身体には{身体強化}{軽量化}{半狂戦士化}{常時回復}も纏わせていた。
その結果がこれ。
とか言ってもやる事は変わらないけど。
そして再度守護者へと詰めようと足を踏み出したその直前、後方からたたきつけられる強烈な殺気。
咄嗟にありったけの防御魔法を自分たちの来たほうへと展開する。
「{水壁}{風牢}{獄炎層}」
三重の防御魔法を展開するが、業火の矢によって一気に破られる。
咄嗟に造ったから抜かれるが矢の勢いを削る事には成功した。
これなら弾ける。
ひびいりの長剣で業火の矢を弾き飛ばす、その代わりに長剣は粉々になったが。
水壁を破ったことによってできた水蒸気が消えた先にいたのは恐怖の存在。
今この瞬間には絶対に戦いたくなく、普段でさえも遠慮したい、そしてあのゼニスをもってしても一時撤退を選択させたこのダンジョン最強の存在。
「久々だなぁ、金巨人よぉ」
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