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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
2章 2人の世界~禁忌な2人は力を得る~
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49話 無職と魔女は辿り着く

 

 「なぁゼニス」

 「……?」


 視線だけをこちらにくれて、話の続きを促してくる。


 「お前って空飛べたりする?」

 「するわね」

 「するよなぁ」

 「あなたも自由自在に跳べるじゃない……ぷっ」

 「おい、笑ってんなよ!?」

 「だってさっきの竜との戦いを思い出したら笑えて来ちゃって……今度飛び方は教えるわ」


 それはありがたいが……。

 思い返してもあれは酷い戦いだった。


 「最初なんてもうサンドバッグ状態だったものね」

 「ほぼ避けてたけどな」

 「の割にすごいズタボロだったわね?」

 「…………」


 何もいえん。

 が、言い訳はさせて欲しい。


 「あんな上からばかすか撃たれたらそらああなるわっ!こっちは基本遠距離やらないし!」

 「まぁ、やろうとしてもめんどくさくなって突っ込むこと多いわよね、しかもそれで何とかなってしまうのが質悪いわ」


 そういう傾向があって、それがよくないのは認めるが……。



 「だからいい機会だったじゃない、遠距離戦をしてきて、しかもしっかりチームワークを取ってくる相手と戦えて、そういう相手への戦い方と自分の課題とか色々と見えてきたでしょ?」

 「まぁな、しかしそのために骨と血液と体力などいろんなものをどれだけ犠牲にしたことか……」

 「今の時間でその失ったものを回復出来てるんだからそれでいいじゃない」

 「そう、それそれ、疑問に思ってたんだよ」

 「…………どれ?」

 「なんで今俺たちは他愛もなく朗らかに雑談しながら、回復出来てるんだよ」

 「まぁこれを朗らかな雑談と言えるあなたのセンスは置いといて……そうね~」


 思案顔のゼニス。


 この層に入ってからただの一匹もモンスターの気配がしない。

 第78層の時のようなことが無いように警戒はしっかりしているし、気配探知とかもちゃんとしているがそれでもただの1体も引っかかってはこない。


 「元々この層には何がいたんだ?」

 「竜よ」


 竜か、竜ね、うん?


 「……さっき倒したのは?」

 「竜ね」

 「それってさもしかして……」


 もしかしてだよ、もしかしてなんだけど、万に一つの可能性だけど……


 「全部倒したとかあったりしない?」

 「あったりする……と言うか多分そうでしょうね」

 「俺が言ったんだけどさ、どういうこと?」

 「確かに95層でもおかしな点はあったにはあったのよ、元々95層は炎竜だけのはずだったのに他の竜も同じ階層にいたし」

 「確定やん」

 「ほぼ、ね。ここの階層に来るまでにも突然変異とかもかなりあったしその可能性を捨てきれなかったの」


 そういわれればそうか、確かに。

 あの木のやつとかセイレーン、アクアシャークもそうか。


 「てことはなにか、96層に至る竜たちはそろって95層に移動していたからここは今もぬけの殻ってやつか」

 「ええ、そういうことになるわね、というか…………いえ今はいいわ」

 「なんだよ、気になるじゃん」

 「一つの可能性を思いついただけよ、それもすぐにわかるから待ってなさい」


 そう言い切るとゼニスは先に進んでいってしまう。


 「ちょ、待てよ」


 90年代ドラマのセリフを言いながら俺はゼニスの後を追いかけた。

 そして本当にただの一匹もモンスターは現れなかった。


 97層


 モンスターはいなかった。


 98層


 またモンスターはいなかった。


 99層


 またまたモンスターはいなかった。


 この段階に至って俺は焦っていた、なぜかは分からない。

 だが焦っていた。


 「どうなってんの!?」


 モンスター全然いないんだけど!?

 もう99層の出口もすぐそこだよ、そろそろ敵も出てこないと、このままボス戦突入しちゃうよ!?


 「落ち着きなさい」

 「……これが落ち着いていられるかっ!?」

 「……なんで?」


 確かになんで?

 たぶんあれだな、「順々にやってくのが流れだろ」、みたいなあれだ。

 現実はやっぱりうまくいかないんやなぁ、ってそんなのは


 「…………ふ~、うん、落ち着いた」

 「それでなんであんなに興奮してたの?」

 「若気の至りってやつ」

 「おっさんのくせに?」


 くっ、心は若いし!

 てかその論理だとさ……


 「お前だっておばさんやん」

 「おばっ…………」


 あら?ゼニスが黙っちゃった?

 ここか、弱点は……ふははは。


 「あれれ~、おかしいぞぅ?まさか『おばさん』とか言われて黙っちゃったとかじゃないよな?あの天下の!長寿のゼニスさんに限ってそんなことありえないよなぁ?」

 「…………」


 無言のゼニス。


 「およよ、無視ですかぁ、黙っちゃってどうし……ってうぁ、おまっ、バカ、氷礫はダメだろって、数100越えてるよ?」

 「……ふふふ」


 うわ、ゼニスの身体から蒼いオーラみたいなのでてるんだけど!

 煽り過ぎたかも……。


 「すまん、すまん煽り過ぎた」

 「……なんのこと?」

 「って笑いながら氷結柱当てようとするの止めてくんね?」

 「避けなきゃいいのよ」

 「当たったら死ぬからっ!」

 「死なないんじゃない?」


 疑問形!?


 「んで結局ゼニスが言ってた可能性ってなんだよ」


 30分謝り続けて何とか許してもらったので聞いてみる。


 「はぁ、97、98、99も竜の巣だったのよ」

 「……あ~、つまり95層に全部移動してたってことか?」

 「そ」


 あ~、なるほどね、納得。


 「そりゃあの層めちゃくちゃきついわけだわ!」


 尋常じゃないくらいに敵いたし。


 「とか言ってたら着いたわよ?」


 目の前には無骨で竜が10匹は余裕で一気に入れるほどのめちゃくちゃでかい門。


 え?マジでデカすぎん?

 ま、いっか。


 「準備はいい?」

 「もちのろんよ」

 「……つまらな」

 「つまらないって何!?」


 こんな風に血の戯れをしながら俺たちは最後の門を潜り抜けた。


 



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