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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
2章 2人の世界~禁忌な2人は力を得る~
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46話 無職の秘策

 

 「そうじゃないわ、もっと水中から呼吸出来る分の空気をかき集めてそれを身体全体で受け止めるの」

 「がびゃぁぁぁぼんなんでばかりゅばげねぇぇぇ」

 (そんなんでわかるかぁぁ)

 「あら?しゃべれるほど余裕があるの、ならまだ行けるわね」


 今の状況は簡単。

 人1人分入るほどの水球に人が閉じ込められている、あ、その人とはもちろん俺。


 「げぇえほっ」


 余裕なんてない、もう10分はこんなことやってるんだもの。

 てかまじで息が出来ねぇ!?


 「ゔぁ、ゔぁじでやゔぁい」


 と言ってもゼニスが助けてくれるわけじゃない。

 そんなことをしてくれないのはこいつとの長年における修行でもう分かっている。


 だから俺は脱出するために、朦朧とする意識をかろうじてつなぎ止めて、魔法を放つためイメージを膨らませる。

 とは言っても難しい事はない。

 ただ単純に死ぬ気でコツを掴むだけ。


 自分が生き残るために足りない要素、それを水中から補足するイメージ。

 まぁイメージはこんな感じだ……が実践をするのは難しい。


 「デギダッ……ブハッ」


 かろうじて出来はしても、回収できるのは一呼吸分のそのさらに100分の1ほど。

 つまりは……


 「さっきよりほんのちょっぴり得られる空気が増えたわね」

 「ばびょなぁぁぁ」(だよなぁぁ)


 取り敢えずはま魔法で外と俺の口まで空気穴を創り出す。


 「ゼェゼェハァ…………、し、死ぬかと思ったぁ」

 「こんなんで死んだらお笑い草よ?」

 「…………」


 ゼニスの憎まれ口にもこたえるほどの余裕がない。

 あぁ、空気がうめぇぇ、って言おうと思ったけどそれほどでもないな。

 よくよく考えればそりゃそうだよな、この階層死骸だらけだし。


 「まぁ冗談はさておきよ……」


 ゼニスが言わなくても彼女の言いたい事は分かる。

 てか冗談に聞こえなかったけどね、絶対本気でいったよね?


 「……間に合わないな」

 「そうね」


 俺らの考えの正しさを証明するようにはるか遠くからドシンドシンという地響きが聞こえて来る。

 その正体はもう見なくても分かる。

 と言うか今はまだ金巨人とはお目見えしたくない。


 「一刻も早く先に進みたいところではあるよな」

 「ええ、でもあなたはまだ水呼吸を実践で使えるようなレベルではないし。 最低でもあと2〜3日は欲しいところね」

 「……んなこと言ってないものねだりしてもしょうがないだろ」

 「ええ、だからここは別の案を考えましょう」


 別の案……っつったってなぁ。


 「そんなパッと出てくるもんじゃ…………あ」

 「うん、何かいいアイデアでも?」


 金巨人で思い出した。


 「……金巨人から逃げ…………じゃなかった、戦略的撤退したときに使ったあの魔法はどうなんだ?」

 「正直きついわね、1階層毎の広さは知ってるでしょ? いくら私が正しいルートを覚えてるといっても流石にそんな都合よくポンポンと転移は使えないわよ、それに距離とかマナの制限もあるし」

 「……だよあなぁ、使えるなら今まででももっとバシバシ使うはずだし、ん?でもじゃあなんであの時は転移をってああ、そうか」

 「分かったようねええそう、それしか方法がなかったのよ、本当ならあんな非効率な技使いたくなかったわよ」


 苦々し気なゼニスの表情。

 対して俺もまた悲しい気持ちになっていた。

 だってそうだろ? 誰もが1度は夢見たあの転移が非効率なんだぜ?

 でもよくよく考えたらそうだよなぁ、距離の制限があって多量のマナを使うなら走ったほういいよなぁ、やっぱこれが現実かぁ。


 はぁ…………っと思考が逸れた、じゃあまぁこの案は取り敢えずなしってことで。


 けどうーん。

 まじでどうすっかな、やっぱ一番のネックは水中ってことだよなぁ。


「ゼニスはなんかある?」

「…………」


 ……沈黙が答えっってことね?

 

 そうだな、視点を変えて考えてみるか。


「なぁ魔神だったらどうするんだろうな」

「あぁ、それは考えても無駄よ? 奴なら多分そのまま正面突破、強すぎるから普通に堂々と通るわ」

「……そ、それは参考にならないなぁ」


 堂々と通る……かぁ。

 水中じゃなきゃ俺らもそんな風に通ってくるんだけど……な?


 いやそうか……逆に言えば水中じゃなければいいってことか……


 「何か思いついたの?」

 「ああ、多分いける……と、って何で分かったの?」

 「顔」

 「……え?」

 「何ていうのかしら…………あなたいいアイデアが浮かんだら、『ぐへへへ』みたいな感じで笑うのよ」

 「……えっ」


 思わず顔に手を当ててみる。

 言われるほど口角は上がってないと思うんだが……。


 「そりゃ今は上がってないに決まってるでしょ、あなたよくその癖やるから気をつけた方がいいわよ」


 はぁ、とため息までつけてくる。


 「しかも出てくるのは9割突飛なアイデアなのよねぇ……」


 出来の悪い子供を見るような眼で俺を見てくる。

 ってあれ?これって……


 「……お前俺のことよくみてんのな」


 俺の言葉にゼニスは照れたかのように俯く。


 「す、すまんっ! や、やっぱ恥ずかしいよな、ご、ごめんな」

 「…………」

 「ぜ、ゼニス?」


 多分俯いた顔の下は赤面してるに違いない。

 だからめちゃくちゃ冷気が伝わってくるけどこれは幻なんだ、うんきっとそうだ。


「…………はぁ?」


 はい、出ました、「はぁ?」

 マージで怖いやつ。


「そりゃこれだけ長い間一緒にいるのだから癖の一つや二つ見つけてもおかしくないでしょう?逆に見つけてない方がおかしいわよ」


 …………確かに。


「そんな下らないこといってると凍らすわよ? ……はぁで、あなたの秘策……「そうその通り!」……は?」


 困惑したような顔をしているな、ゼニス。

 ふっ、お主もまだまだやのぅ。


「ふっふっふ、俺の秘策……それはなぁ」


 少し間を置いたおかげでゼニスも俺に注目している。

 今か今かと待ち遠しく思っているにちがいない。

 

 しょうがない、答えを言うか。


 「氷結だ!」


年の瀬ですねぇ。

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