5話 王と宰相
本日2話目です
桜が訳してくれた結果からいうと、どうやら王様はそれぞれの分野のエキスパートの教師みたいなのを俺たちにつけてくれるらしい。 多分人によってステータスが大きく違ったからだろう。
「^%#$%^」
『入れ』
王が声を発すると、扉の前に立っていた衛兵が扉を開ける。
完全に扉が開ききると5人の男女が中へと入ってくる。
「!@#$%^&^%$#@#$%^&^%$#$%^&^%$#$%^%*@#$%^&*&^%&*(*&^%%^&」
『この4人は君達のサポートをしてくれる者たちだ。 右から教師のサーラ、ミシャス、タント、ランダ、それを統括するブランだ。何か疑問点や詳しく知りたいことがあったら彼らに聞いてくれ。ブラン』
「*&^*&‘」
『宜しく頼む』
統括する立場であるブラン1人が前に出てきて簡潔に挨拶する。 他の4人の目は俺たちを値踏しているような感じだ。
「あの一ついいですか?」
柊の発言にブランが無言で頷く。
「ミリアさんはサポートしてくれないんですか?」
「5*&*&^#$##$%^&*(()(*&^%$#@#$%^%$$%」
『サポートは此の国の者全員がすると思っていい。 そういう意味では彼女もサポートはする。 しかし主に教師をするのが私たちということだ。 ミリア様はこの国の三大騎士団の一つ、白銀騎士団の団長だから日々の日課もある、まぁ時間があれば教えたりもしてくれるだろう』
つまりはほぼあの人は教えてはくれないということか。 てか最初に俺たちを出迎えてくれた白銀の騎士ミリアさんは相当すごい人だったらしい、そりゃそうか。 勇者を召喚して変なのが出てきたとき制圧できないと困るもんな。
「(*&^%$%^&^%$%^&*」
『それでは別室にてこれからの予定を話す、質問もそこで聞くからな。 それでは陛下、失礼いたします』
ブランが先頭で執務室から出ていきそれに合わせて俺らも部屋を後にする。
「なんか怖そうな人だね……」
「なんか原田を思い出さない?」
「あー、あの強面な雰囲気な、分かる分かる」
おじさんには全くわかりません。 俺が困惑していると柊が教えてくれる。
「秋人たちが言ってるのはうちの学校にいた体育教師のことでね、いつも竹刀を持っていたんだよ。 あの誰にも意見させないブランさんの感じが似てるんだよね、原田先生に」
「はは。 中々ワイルドな先生だね。」
よく暴力沙汰とかで訴えられなかったな、今のご時世そういうの厳しいのに。
その後、俺たちが連れられたのは教室だった。 中には長机が並んでおり、その上に何かしらの本が分厚く積み上げられている、5人分。 なぜか一つだけ、な・ぜ・かボロいが。
「%^*&^%^*」
「そこに座れ、右から柊、秋人、夏希、桜、玲夜だ」
場所まで指定される。 そして俺にボロいものが回ってきた。 しょ、しょうがない、隣には通訳をしてくれる桜もいるしね、うん、良しとしよう。 はぁ……。
*
勇者たちがブランに引き連れられて執務室から出て行く。
「ふむ。中々に興味深いな」
手元に残った石版をじっくりとみながらわしは思わずにやけてしまう。 先程は軽くしか見れなかったからのぅ。
1人ずつのステータスを見ていくが全体的にスペックがとてつもなく高い。 一般人のステータスを軽く50倍は超えている。これは嬉しい誤算じゃ。
これならかの国にも……。
今はそのことはまだよいな。
それよりも……
そうして最後の人物のステータスに目を通す。
「やはりこのステータスはミスではないのか?」
そこに書かれているのは最初見た時と変わらない内容。
しかしそれはありえないのぅ。
石板のミスというのはないはずじゃ。 これはただステータスを他者に見えるようにするもの。
このステータスの通り、彼だけわしらの言葉を理解できていないようじゃったしの。 隣の女子が時折耳打ちしておった。
「異世界召喚で呼ぶはずだった人数は4人。 5人目がきた時には良い誤算だと思ったがどうも違うようじゃな。 しかしなんじゃ、このステータスは。 普通の一般人でもステータスは50〜100ぐらいはあるがのぅ。 それが基本10とは……。 HPだけは200あるようじゃが。 うーむ、どうしたものか」
考えるがあまり良い案は浮かばない。 過去に例がないしのぅ、このような事態は。 だが城に置いておくというのもあり得ない、使えん奴はいらんし。
ふむ……
「おい、宰相のフォンをここに呼べ」
部屋の前で待機していた衛兵に指示すると10分ほどでドアをノックする音が聞こえる。
「フォンです、お呼びでしょうか陛下」
「ああ、入れ」
宰相のフォンが髭面を携えながら部屋へと入ってくる。
「して、何用でしょうか陛下」
「ああ、このことなんじゃが」
机に置いてある石版を指差す。
「拝見します」
そして見終わって一言。
「なるほど、陛下が私を呼んだ意味が分かりました」
「この、レイヤ・ツキシロの件でございましょう?」
「ああ。そうじゃレイヤ・ツキシロの対処に困ってのう。 流石にこれは予想外で、他の者たちは予想外という意味では同じじゃが、いい意味でじゃ。育て方は前例通りでいいんじゃが……。 こやつ、率直にお主はどう思う?」
「このステータスでは成長は見込めないでしょう。 ジョブも無職。 無職など今まで見たこともありませんが……。 元々のステータスも一般人以下でさらに言葉もわからないと来ている。 彼を育てるならまだそこらの腕に自信のあるものを鍛えた方が有意義でしょう」
「……それはそうなのじゃが、しかしそうは言ってもな。 無闇に城から出ていけとは言えまい。 勇者たちの手前もある」
フォンは顎に手を当て、そして自身の髭を撫でる。
「陛下、このような案はいかがでしょうか」
「申してみよ」
フォンはニヤリと嗤う。
「彼には勇者の一行はやめて貰います、穏便な方法で。ただという訳にもいかないでしょうから何かしら、金銭などが考えられますが。 それを一生働かなくてもいいほどに渡しましょう、手切れ金として。 さらに家も用意してやります」
「なかなか豪奢な振る舞いではないか?」
金を渡すのは納得出来なくはないがそこまで渡す必要もないような気がする。 使えないやつに渡すのは勿体ないじゃろう。
「もちろん彼には一銭も渡しませんよ。 あんなどこぞの馬とも知れぬ無能にはもったいない額ですからなぁ。 ただこれは勇者殿たちに納得してもらうために必要なことです。 まず勇者殿たちには力的に彼は一緒にいられないということを理解してもらいます。 して次は……」
フォンが耳元に寄ってきて小声である話を持ちかけてくる。
「どうですかな? 私のアイデアは」
「素晴らしい考えじゃな、じゃが……」
「陛下はあのことを憂慮されているのですか?」
やはりフォンは知っておったか、このことは王家のものしか知らないはずなんじゃがな。
「ああ、そうじゃ。 もし勇者が殺された場合災いがもたらされるという王家のものにしか伝わっていない伝承じゃ」
「陛下、まことに申し上げにくいのですがそれは正確な伝承ではないはずです」
「なんじゃと!?」
「正確な伝承はこうです。『勇者を直接害し、また亡き者とした場合その者たちには災いが降り掛からん』」
特に違いはないように思えるのじゃが……
というかこ奴はなぜそこまで知っておる!? いや今はそんなことはどうでもいいのぅ。
「大事なのは直接という部分です。 ここまで言えば聡明な陛下ならもうお分かりですよね?」
ふむ、直接……か。
ああ、なるほどのぅ。
「どうやらお主を呼んで正解だったようじゃ、早速部隊を編成せよ。 <青>でいいじゃろ。
……じゃがその前に今はまずお主のナイスアイデアに乾杯しようじゃないか」
部屋にあるヴィンテージものの醸造酒をグラスへと注ぎ、フォンへと手渡す。
「お主のアイデアに」
「陛下の思慮深さに」
互いのグラスを軽く当てる。
「「乾杯!」」
王の執務室には二人の笑い声が響き、そして玲夜の運命が決まった。
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