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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
2章 2人の世界~禁忌な2人は力を得る~
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42話 魔女は過去を夢見る①


 辺りを見渡せば1面のジャングル。

 木は大木と言っていいほど大きく、1本で優に20メートルは超えているだろう。

 その木には蔦が生い茂り苔むしている。


 しかし生物は1匹たりとていない。


 「玲夜気をつけなさい、ここの階層もやはり私が知っているものとは異なっているわ」

 「へぇ、じゃあ前はどんなだったんだ?」

 「そうね……確かここはケルベロスの巣だったかしら、後、樹は数本はあったかもしれないけどこんなにジャングルみたいにはなってなかったわ。 少なくともこんなに大きいものは無かったわね」

 「ケルベロス? 確か1回戦ったよな? あの地獄の番犬」

 「地獄の番犬かどうかはともかくとしても三つ首なのは確かね。 基本的には群れ単位で行動するからそういった意味でいうなら地獄の番犬たちだけど」

 「……まぁつまりその地獄の番犬たちは自身が守るべき門番をほっぽり出したらしいな」


 

 玲夜の言う通り今私たちがいるこの第78層に入ってからケルベロスには一匹も出会っていない。

 というかそもそも……


 「生物に出会わない」

 「モンスターの退化、もしくは絶滅……でもそんなことってそうそうあるものなのか?」

 「完全にモンスターが絶滅ってことはそうそうないけど、あるとしたらえさ不足による自然消滅か、それかもう一つは……」

 

 そう言いかけた瞬間、何かが脳に直接響いてくる。

 

 「ん? なんだこれは、音、いや歌……か? なんか心地良い」

 「……歌……この心地良く眠くなる感じ…………」


 これは昔出会ったあれの歌声に似ている。

 ということはつまりこのままこれを聞き続ければ……


 「今すぐ耳を閉じなさい!」

 「いや…………そんなこと言われてももうがっつり聞いちゃってるんだが……」


 会話している間にも既に身体が動かなくなり始めている。


 「…………くっ」


 なんとかこの歌声から逃れなければまずい、このままでは幻術に2人とも囚われてしまう。

 というか玲夜はもう既に意識を手放している。


 (……彼は幻術に掛かった経験はないから幻術に対する耐性が私よりないのか)


 この500年にわたる訓練でも玲夜には幻術系に対するものはほとんどやっていない。

 ダンジョンにいるモンスターは全部把握しているからと、たかをくくって近接戦闘に特化して時間を割いたのが逆に裏目に出たわね。


 まぁいまさらそんなことを言ってもしょうがない。

 とりあえずこの幻術は音を媒介にして発生していると予想がつく。

 つまりは空気振動で自身の耳まで届かないようにすれば幻術にはかからないはずだ。


 『…………さえ……いな………』


 もう私の頭の中にも幻聴が聞こえ始めている。


 「……くっ、エアーズロック」


 なんとかマナを練って自分の周囲に風の魔法を発動。

 外と中を風で区切り音が届かない様にする。


 「…………頭に響く幻聴が消えない?」


 そう考えているうちにもどんどん身体は動かなくなっていき思考にも陰りが出始める。


 「グレートロック」


 余裕があるうちに玲夜の身体を覆うように大地を隆起させて壁をつくる。

 

 「気休め程度にしかならないけどないよりはましね」


 幻術相手に今までのように正面切ってぶつかるのは悪手。 

 その場合だとこっちが先にやられる可能性が高い。 

 だからまずは幻術を出している本体を見付けるのが先ね。

 幻術を使用しているモンスターを想像し、探知する魔法を使用する。


 思いのほか簡単に敵は見つかった。

 いやそもそもあちらは隠す気もなかったのだろうが。


 「…………へぇそういうこと、敵は一体じゃないわけね」


 私たちの周り全てに敵、それも一寸の隙間もできないくらいに。

 この周りにある大木全てがモンスターってわけね。


 「でも音だけを鳴らすなら後は凍らせればそれで――」


 既に音は切ってあるからすぐに幻術にかかることはない、そう考えた瞬間。

 大木から無数の眼が現れ、葉からは花粉のような粒子状のものまで放出される。 

 しかもすべてのモンスターが一斉に。

 眼と花粉が現れた瞬間、一気に幻聴の音が大きくなり、視界もぐにゃりとゆがみ始める。


 そうか……周り全てからおなじ幻術を使われているから共鳴して幻術がつよく


 「……連携も取れるとは考えなかったわ」


 急いでマナを練り玲夜の周りに覆ったのと同じものを自分の周りにも創る。

 これで時間は稼げる。

 後は……


 「私が幻術に打ち勝てばいい」


 別に今までだって幻術に掛かったことがないわけじゃない。

 解き方だってわかっている。

 問題なのはそれがどの程度で解呪できるか。

 正直それはやらないと分からないけど……

 

 もう体は全く動かない。

 

 (幻術に掛かるなんていつ以来かしら、しかもモンスターのなんて)

 

 思わず自嘲してしまう。

 この()()()()()()もなって全く戦闘とかもしてなかった仇が出たか。


 「これじゃ私も玲夜のこと言えないわね」


 そんなことを思いながら私の意識は暗黒へと沈んだ。


 


 



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