39話 無職は魔法を創作する①
ファブります
そう、俺が思いついたのはファブリーゼだ。
あれよこれよとゼニスに何とか説明するべきかとも考えたが、普通にこれは見せたほうが早いということで説明は後回しにしている。
まぁそれは置いておいてここからは魔法のお時間だ。
このファブリーゼに期待する効果は2つ。
一つはアンデッドといった聖系統のモンスターに有効であること。
そしてもう一つは匂いを抑える、つまり正常な空気にしてさらにはいい匂いにまでさせることだ。
原理はそんな感じ。
分かりはするのだがーー
「具体的なイメージが湧かない」
ファブリーゼのCMは印象的だから覚えてるんだけどなぁ、あの千の鳥とかいう芸人さんのCMは。
ただそれが魔法のイメージにはつながらない。
消臭イオンとかか?
とりあえず蝙蝠型のモンスターを倒しながら魔法の創作に勤しむ。
モンスターに対する舐めプで危ないと思うだろ?
ははは、これがなぁ全く大丈夫じゃないんだよ
実際か・な・り・アブナイ。
敵は1体じゃないんだぜ? 上からは蝙蝠型が多数、下からはモグラ型が多数、そして頭の中では魔法の創作。
もうねパンクする、めちゃくちゃ頭痛い。
だがやるしかない。
ファブリーゼ魔法、略してファブ魔法、の創作はアンデッド対策としても匂い対策のためにも絶対必要。
また同時に並列思考の修行にもなっている。
ゼニス曰く
『戦闘中に一点のみに集中するなんて三流のすることよ。 常に1対1の戦いになる事なんてありえない。 そういう状況を創ることも大事だけどそれよりも今は多対1でも勝てるようにするほうが先決。 てことでちゃんとやりなさい?』
てとうことらしい。
ちなみにその時にちょっとした反骨心から「お前出来んのかよ」と言ってしまったら実演込みで簡単に証明されてしまった。
これが出来れば戦闘しながら脳の半分は休ませるなどもできるらしい。
正直意味わからん。
なんかゼニスの八つ当たりの気がだんだんしてきた。
だって説明しなかった時めちゃくちゃジト目をされたし。
あ、止めて。
今、氷結柱は良くないぞ、うん。
謝るから、変なこと考えてごめんて。
「はぁ」
ということで現在。
ゼニスの様子を見てみれば俺よりも多くの敵を両手に別々の魔法を絶え間なく放ち殲滅させている。
しかもこっちを向いて「何してるの? こっち終わるけどあなたも早く終わらせない」というような目線まで送ってきている。
余裕ありすぎだろ!?
意味わかんな…………ってうおっ、あぶねぇ……。
顔の真横に蝙蝠の毒針が飛んできた。
下からはモグラ型のモンスターの爪も襲い来る。
とりあえず移動は欠かさないようにして、右手に宿した火の魔法で蝙蝠の一帯を焼き尽し、モグラは左手で地中に杭を錬成し串刺しにする。
同時にファブ魔法の創作をする。
具体的なイメージはいまだに降ってこないが理論的には行けるはずなのでとりあえず作ってみる。
「よく言うしな、『当たって砕けろ』って」
いつまでも理論を考えててもしょうがないんだ、やりながら思いつくこともあるだろうし。
ということで作ってみる。
まずはさっきのいい匂いとアンデッドの排除というのだけをイメージして粗削りで作る。
それを液体にしたいため、自身の水魔法と組み合わせていく。
さらにそれを風魔法と組み合わせて噴射できるようにする。
「…………出来た」
いうだけならすごく簡単だが実際にこれを戦闘中にもやるというのは難しい。
現に成功させるのにかなりの階層をかなり踏破してしまった。
「今第何層だっけ?」
「第62層よ」
うわ、やば。
開発から試作品の完成まで25層以上かかっているじゃん。
まあ日数だけで見れば二日だけなわけだが。
俺らがこうも急速に、そして碌に休憩も取らずにダンジョン踏破を優先するのには訳がある。
理由は二つ。
金巨人と外の勢力の問題。
まず外の勢力だが十中八九俺らが外に出て戦闘になった場合勝てると踏んでいる。
なんせ俺らのステータスは俺がいたころの勇者たちと比べても抜きんでているからね。
だがそれは万全に見たらの話。
金巨人や最後の門番を倒した後に戦うとなった場合はいささか厳しい。
出来ることならすぐにでもふかふかのベッドで眠りたいわけだ。
これが一つ目の理由。
この理由が8割を超すわけだが金巨人の存在がやはり大きい。
ゼニスの計算上今のままでは確実にステータス差で負けるとのこと。
俺らも当の半分を上ってきてかなりレベルを上げたがそれでも足りないらしい。
それを聞くと前のゼニスどんだけ強かったんだよって思ってしまう。
閑話休題
まぁとりあえずファブ魔法の試作品が完成したわけだ。
となるとやっぱり試し打ちがしたくなる。
「あぁ敵に会いてえな」
「何、戦闘狂みたいなこと言って、とうとう気でも狂った? ここまでは『俺は早くここを出て惰眠をむさぼりつくすんだ、ぐへへへへ』って言ってたのに」
「…………おい『ぐへへへへ』なんて俺は言ってないぞ」
「小さいことはいいじゃない、それよりもほらお望み通り敵が来たわよ?」
目の前には大量のゴブリンとそれを指揮するゴブリンキングが迫ってきている。
やはりイメージ通り相当な悪臭を放っている。
そして同時にこいつらは俺の因縁の相手でもある。
だから徹底的に無残に倒してやる。
「さーて、それじゃ実験といきますかぁ、ぐへへへ」
「…………あなたやっぱり言ってるじゃない」
「…………これはわざとだよ?」
俺は口元を引きしめて実験相手へと向き直った。
面白いと思っていただけたら評価の方、してもらえると嬉しいです。
感想もお待ちしてます!




