4話 無職は気を遣われる
この話から1話平均2000字ぐらいになります。
あやうく石板を折りかけた俺だが、落ち着く。落ち着くように意識する。
俺は大人だ。 何かに夢見て、そしてその度に絶望に苛まれてきたということも今に始まったことじゃない。 ただ今までと変わらないというだけ、それもちょっと悔しいがまあしょうがない。 異世界来ていきなりチートを使って俺TUEEEをかましたかったけどそれもまああれだ。 一旦保留にしよう。
やることは地球にいた時と変わらない。 しなきゃいけないのは現状理解と現実的に、いやここでは異世界的に実行可能なプランを立てていくこと……か。 うん、やっぱり地味だ。 こんなんだから地球でも評価されなかったんだよなぁ。 そしてやると一番まずいのは現実逃避。
「玲夜君のはどうだったんだい? 」
「そうよ。私たちのも見せたんだからあんたのも見せなさいよ。不公平じゃない! 」
柊と夏希、君たちはすぐに後悔することになるだろう。 もうこうなりゃやけくそだ。 ってやけくそもまずいか……、どっちにしてももう見せるしかない。
俺は無言で自分の石板を4人の前に差し出す。
「えーと君の職業は……む。無職……? ステータスも……え? 軒並み……じゅ、10? HPは比較的高いけどもでも……」
「……」
「……」
「……」
俺のステータスの脆弱ぶりにみんな驚き慄いたようだ。 みんなのと比べると弱すぎるよね本当に、だから言っただろ? 後悔するって。 あ、言ってないか、思っただけだった。
数十秒の沈黙のあと柊が必死に絞り出したフォローはというと、
「……なんかのバグじゃないかな? 後で城の人とかに聞いてみようよ。 もしかしたらすごい優秀な職業かもしれないし、ゲームとかみたいにジョブチェンジみたいなことが出来るかもしれないだろう?」
結構無理があった。
*
翌日、宣言通り俺達は昨日の玉座の間……ではなくて今回は王の執務室へと呼び出されていた。 どうやら昨日の玉座の間は重大なイベントとかがない限りは使われないらしい。 あの後、部屋へと来た白銀の騎士が説明してくれた……らしい。らしいというのは言うまでもなくその内容を柊が訳して教えてくれたから。
なんと無駄な時間だろう、マジで二度手間! ほんとにごめん、柊君。
ちなみにその時にみんなのステータスとか諸々のことを白銀の騎士が聞いていき事情も詳しく教えてくれた……。
柊曰くどうやら人間の国たちははある1人の魔王によって滅ぼされかけているらしい。 それを倒せるほどの強さがあるのは神から祝福された異世界人しか居ない……という話のようだ。 ちなみに今回の魔王は邪神とかいうのに祝福されているらしく今までにいた魔王よりも圧倒的な強さを誇っているみたいだ。
「て$-&'¥-"[(]¥+$’」
執務室には豪奢な椅子に腰掛けた王がいた。 その顔は昨日に比べ纏う雰囲気は柔らかい、その言葉尻には威圧感こそあるが昨日ほどの絶対的な覇気は感じられない。 どこか労りのようなものが含まれている……ような気がするだろう、普通なら。 だが……社会人をやってきて人の顔色を窺ってきた俺からすれば、王の顔は作りものっぽくて嘘っぽい。
「お話はミリアから伺いました。 私たちがその邪神に祝福された……魔王を倒さないとこの世界が滅びる。そして同時に僕たちも元の世界に帰れなくなる。 それを回避する唯一の方法がその魔王を倒すことだということもね」
白銀の騎士はミリアという名前だったのか、事務的に話してたイメージでNPCみたいだったんだよなぁ。
「%^&」
お、これはわかった気がする。 ああ、とか、その通りだ!みたいな感じだろう。 これだけわかってもしょうがないんだけどさ。
正直、柊が話していミリアから聞いたさっきの話は胡散臭いとしか言いようがない。 だからといってそれを俺らがどうこうできるかというとそういうことでもない。 つまるところ俺らは王のいう通りに、とりあえずは魔王討伐をしなきゃどうしようもない。 そのことは柊たちももう気づいている。
「そうは言っても私たちは戦い方を、はっきりいって全く知らないのですがどのようにして戦えばいいのですか?」
柊の疑問はもっともだ。 だがその辺はちゃんとあっちも考えているらしい。
「@#$%^&*&^%$$&*(^%$#@#$%^&#@!^&&^^&^%*#&*((^%$^&&%$##$%^&%$&^%*&^%$*&^%^&^%?」
今回は完璧に分からなかった。
隣にいた桜が訳してくれる。 ちなみに俺が異世界の言葉を理解できないことはここの4人はすでに知っている、昨日ステータスを見せた時に恥の一つや二つ一緒だからと告白した。 そもそも言語理解のスキルないのがステータス見ればバレるしね、どうせ。 しかし俺だけ言語理解もないとかどんないじめだよって話だ、マジで。 何にでも文句言う昨今の日本だったら明らかにクレームものだぞ。
『大丈夫だ、安心するがよい。いきなり戦いに行かしたりはせんよ?手始めに5人のステータスを見せてくれるかね?それに応じてどうするかを決める』って言ってるらしい。 どこをどうしたらそういう風に聞こえるのかは、今は考えないようにしよう。
言われた通り全員素直に石板を渡す、柊だけはメモ帳だが。
柊達の石板を見た王様は一人一人のステータスをみてまず驚愕する。
「@*()&^%$%^&^%」
「こ、これは……」
桜が律儀に訳してくれる。 優しい。 優しいけどもあの反応ならおじさんの俺でも分かるけどね。うん、でもありがとう。 その優しさが嬉しい。
そして今度は俺の石板に目をやる王。 その瞬間目が点になる。
「は?」
なぜか俺にも今の言葉は分かった。 全然嬉しくないけどね!
だが流石に一国の王か。 すぐに表情を作り直す。
「%^&**&(*&*&@####(&^^%$(&&&^&%%*」
「ま、まあ勇者どのたちのステータスは色々な意味で予想外だな」
なんか王様にまで気を遣わしてしまったようだ。
本当にごめん。
夜の8時にもう一度更新します
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