33話 無職はボスへと挑む①
遅くなりなり申し訳ありません!
「ふぅ、緊張するな」
俺とゼニスはダンジョン一層目の扉の前に立っていた。
「緊張? よく言うわ、戦いになった瞬間に嬉々として刃へと突っ込んでいくくせに」
「おい、人を死にたがりみたいに言うなよ、そもそも当たらないと分かっているんだから怖がる必要もないだろ?」
「だからって攻撃を最小限だけしか動かないなんて普通の人にはまずできないわよ? それもただの素人だった人にはね。だから精神異常者なんて職業が出るのよ、ああごめんなさい今はサイコパスという職業だったかしら?」
「…………やめてくれ」
俺は普通なんだ。
ちょっと、人より孤独耐性とか強いだけなんだ。
そしてちょっと特殊な環境に置かれていただけなんだ。
クラスに一人ぐらいはいるようなやつなんだよ!
「まぁ馬鹿話はこれくらいにしておいてさっさと行きましょうか」
おい!
俺の心を傷つけるだけ傷つけてさっさと先に行くな!
「ああ……」
そう、なにかを言い忘れたかのようにこちらを振り向くゼニス。
「もしこのダンジョンを踏破出来たら…………」
あれ?
これってあれじゃね?
告白的なやつ。
そして次に来るのはお決まりの…………
死亡フラグ!
まずいそれだけはまずい。
今、このダンジョンのボスへと向かおうという、今、このときに言ってはいけない!
だから俺は……
「ゼニス、ちょっと待て」
しかしゼニスは俺の静止も聞かずに決定的なセリフを言ってしまう。
「おっぱいでも触らせてあげましょうか?」
「あぁぁぁぁ死亡フラグがぁぁ、…………ってあれ? 死亡フラグじゃない、いやそうなのか? ってえ?ンお、お、おっぱい…………ですか?」
や、やばい、テンパりすぎて敬語になってしまった。
し、しかしおっぱいか。
やる気がかなり出てきたかもしれない。
出てきたどころではない、やる気しかないと言ってもいい。
やる気で満ち満ちている。
もうリアル元気100倍だ。
ゼニスの豊満な2つのスイカを好き放題できるのか…………。
ぐわんぐわん、たゆんたゆんできる…………。
ぐへへへへ。
……おっと、自制自制。
おっぱいどころで喜んでたらダメだぞ?
しかしあの豊満な…………。
ってああ、やばいおっぱい無限ループに突入しかけてる。
恐ろしきかなおっぱいよ。
危うく戦う前にやられる所だったぜ?
「…………ふっ、望むところだ」
「何カッコつけてんの? さっき思ってたこと全部言葉に出てたわよ?」
「え? マジ?」
「ええ」
恥っず。
これじゃ俺がおっぱい触ったことない童貞ってのがバレるじゃん。
……ってよく考えたらゼニスは知ってるじゃん。
それにあいつも魔女だし。
なら恥ずかしがる必要もないな。
*
「よし、気合いも万端だ。さあ行こう」
「単純な男ね」
俺は意気揚々とそのまま第1層の扉を開いていく。
扉を開けきった瞬間……。
当たったら即死しそうなほど特大の何かが飛んでくる。
「うわっと」
予想より早いじゃん!
俺は辛うじて横っ飛びでそれを回避する。
外れたそれは後ろの木々をなぎ倒し、地面にぶつかり爆発する。
着弾の後、一拍遅れて爆風が吹きすさぶ。
「やっばいな、ゼニスは……ってもちろん大丈夫か」
扉の反対側にいたゼニスは防御系の魔法を発動しているのか髪一つ乱していない。
次いで2発、3発と同じ規模のものが扉から飛来する。
「おいおい、まじで爆撃されてるみたいじゃねぇか」
「だから注意しておいたでしょ? 最初っから超電磁砲来るわよって」
「ああ、そのおかげで生きてられたようなもんだ。 じゃ気を引きしめなおして当初の計画通りに行くか」
「私は元からそのつもりなんだけど」
ゼニスに冷たい視線を向けられる。
無視無視、この500年ぐらいでもう慣れた。
「…………じゃ、じゃあ俺が突っ込むわ」
だから言葉が詰まったのはただ言葉がうまく出てこなかっただけ、ただそれだけなんだ。
「ええ、援護はする……けど」
「分かってる、基本は感覚だよな」
ゼニスにニヒルな笑みを浮かべてみせ、そのまま今は収まっている扉から中に一気に入る。
部屋へと入った瞬間、濃密な殺気が俺たちを襲う。
(はっ、これが魔神への時間稼ぎかよ、やってらんねぇ)
大小様々な大きさで、様々な種類の攻撃が俺たちを襲う。
時には業火の矢が、不可視の刃が、謎の漆黒が、俺たちに明確な殺意をもって殺しに来る。
それをすべて紙一重で、自分の感覚だけで避けていく。
ただ避けるだけでなく、次第にこの部屋の主へと肉薄していく。
もちろん近づくにつれ、攻撃の密度も増していく。
「キッツいなぁ……」
だがよけられる。
攻撃が全くできないが、今は問題がない。
そう、今は。
そんなことを考えていた。
それが一瞬の油断を招く。
何かおかしい。
そう思って横を見れば避けたはずの攻撃が肉薄している。
(ちっ、ホーミングみたいなもんかっ)
それを上半身を無理やり、ひねりなんとか避ける。
だがこれは……
「罠か」
無理な動きをしたせいで次の着地の瞬間まで動けない。
そんな俺に巨大な鉤爪が迫る。
(とうとう物理攻撃か)
その後ろからはさらに様々な魔法の嵐が全方位を埋め尽くしている。
「ははっ」
強すぎる。
今の俺じゃ勝てる予感がしないな。
認めよう、今の俺にお前は倒せない。
だが……
「生きのこりゃこっちの勝ちだ、ゼニス!」
もうゼニスが部屋の主の後ろに回り込むだけの時間は十分に稼いだ。
だから俺は全身の力を……抜いた。
「任せなさい」
それからは覚えていない。
ただ思うのは……
(やっぱ人に身体を好き勝手に魔法で動かされるのはきっっいなぁ)
そんなことを考えながら俺はこの異世界で何度目かの失神をした。
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唐突にパインサラダ出してしまい申し訳ありません
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