閑話④ イシュバル
すいません、遅くなりました!
一昨日には投稿するはずだったのですが、寝落ちましたっ!
すいません!
「さてブランよ、勇者たちのこの2ヶ月進捗状況を聞いておこうか」
「はっ、勇者達はそれぞれ我々が当初予定していたペースよりも強くなっております。 全5階層のガナのダンジョンはもちろんのこと、20階層のランも攻略間近となっております。 我々といえどもあと1年もすればステータスの上でなら彼らに抜かれてしまうでしょう」
「さすがは勇者たちと言ったところだな、なぁフォン?」
「ええ、周辺諸国を出し抜いてでもあの勇者4人を召喚したのは成功でしたね」
「このまま成長すれば他国や魔王にも対抗できよう」
(やはり王は柊たちを他の国との戦争のためにも利用したいのか……)
「そのことで一つご報告が」
跪いていたブランが顔を上げないまま王へと進言する。
「申してみよ」
「はっ。 彼らを魔王軍との戦いに投入するのは最低でも後3年、いえ2年は待っていただきたいのです」
「ほぅ、理由は?」
王の眼光が鋭くなる。
「彼らの元の世界では生命に対する倫理観が高かったようです。 未だにダンジョンのモンスターを討伐することにすら僅かな迷いを感じています。 モンスターでさえそうなのです、これが人型になったりでもしたら彼らがなんの迷いもなく戦えるとは……」
「ふむ、なるほどのぅ」
顎に手をやり思案する王。
「おぬしはどう思う、フォン」
「それでは僭越ながらこのわたくしが愚考致しますに……」
そこで言葉を止め、キツネのように細い目をさらに細め、ニヤリと笑うフォン。
「洗脳でもしたらどうでしょうか?」
「なっ」
フォンが発した狂気の言葉にブランは吃驚した。
「続けよ」
「洗脳してしまえば倫理観など問題ではなくなります。 国にとって都合のいい駒にすることも可能かと……。 まだ他国には勇者たちのことは漏れていませんし今なら……」
「それは止めておくべきではないでしょうか、戦いにおいて自身の判断力、経験がものをいう時があります。 それこそ実力が上に行けば行くほどその傾向が高くなります。 それを自身の意思がない傀儡のようなものにしてしまっては……」
「なるほど、ブラン殿の言っていることも正しいのでしょう。 私はこと武に関してはからっきしですからね」
フォンは笑顔を消し、眼光を鋭いものへと変化させ言葉を続ける。
「時にブラン殿こんな話はご存じですか」
「なんの話です?」
「ある二つの国が、二人の人物を分け合ったそうです。 一人は今最強の男、一人は後5年もすれば確実に最強になるといわれた男です。 そして二つの国がそれぞれの男を取って1年後に戦争をしました。その時どちらの国が勝ったでしょうか」
「それは……」
今最強の男が率いる国であろう。
だがそれがさすことはつまり……
「勝ったのは今最強の男が率いた国です。 そして付け加えるならば、今我が国が求めているのはこの話でいうならば最強の男です」
ダメ押しとばかりにフォンは言い切る。
そしてその意図が分からないほどブランは脳筋ではない。
「……分かりました、1年半が限界です」
「1年です」
「なっ…………いくらなんでもそれは」
「無理ですか? いえやってもらいます。 そうでなければ……」
フォンはその先の言葉は続けない。
ただ先ほどの話でいえば、洗脳してでも使うということだろう。
もしくは国が亡ぶか……。
そして勇者召喚という禁忌を犯したこの国はばれた瞬間に立場が危うくなる。
というか近隣国との戦争になる可能性が高い。
侵略の意図ありとして。
「1年で魔王の部下たちとは渡りあえるようにはしてください。 王もそれでよろしいですか?」
「うむ……それでは」
「失礼する!」
突如、ノックもなしに王の言葉を遮って執務室に入ってくる白衣を着た金髪の顔立ち整ったもの。
ブランとも友人と言える者。
「何者だって……これは賢者ローリー様」
「賢者様、ここは王の執務室ですぞ!!」
「おっ、一か月ぶりくらいだね、ブラン」
ローリーはフォンの話を無視してブランの方を向く。
「おっ、お久しぶりです賢者ローリー」
「そんな硬い口調じゃなくてもいいのに」
「一応王の御前ですので」
「ああ、そうだ、こんなところで話している場合じゃなかった」
何かを思い出したかのようにローリーは王の方を向く、眼光を鋭くさせて。
「おい、レイヤをどこにやった」
レイヤとは確か5人目の勇者パーティー。
彼は確かどこかの土地で裕福な生活を送っているはずだったが。
「彼はサランの土地で」
「いなかったが?」
「いや彼は確かに」
「……ああ、レイヤ・ツキシロはいたよ、丸々と肥え太り女を侍らせた性格の悪そうな、まるでどっかの王と懇意にしている貴族の放蕩息子のようなやつならな。 だが僕が聞いているのは地球から来た月城玲夜のことなんだ」
「何をいっているのかわからんなぁ」
明らかに何かを知っていそうな王の口ぶり。
「白々しいな、王」
「貴様、王に対して敬意を払え!」
フォンが咎めた瞬間、ローリーの全身からあふれ出んほどの殺気があふれ出る。
「黙れ、小童が」
「ひっ」
「で、どこにやった?」
ローリーに殺気をぶつけられ、顔から冷汗を垂れ流している。
一触即発の空気になる中、新たな者が執務室に駆け込んでくる。
「失礼いたします!」
「なんだノックをせんか!」
「緊急の事態のため、無礼を承知で失礼します!」
「……内容によっては処断する。して要件は?」
「はっ、今、城の封印の警鐘がなりました。 どっ、どうやら、災厄の森の封印の一層目が解けたようですっ!」
「なっ、災厄の森だとっ!? あそこは確か蒼が行って無職のやつが……」
フォンが焦ったように独り言を呟く。
「蒼が災厄の森へ? 王よ、まさかお前」
ローリーがフォンの独り言を聞き取り、次いで王を睨み付ける。
「知らん」
王はそれをまた素知らぬ顔で受け流す。
「お前、余り調子に乗るなよ?」
「……ふんっ、それにしても災厄の森の封印の一層目が解けるか、とうとうエルフのやつが動き始めたのか……? それともただの誤作動か、どちらにしても調査隊を派遣するしかないのぅ、ローリー、お主そこに入ったらどうだ? そしたらお前が探しているご友人にも会えるやもしれぬぞ?」
「いや入らない、騎士団のペースで行くより私一人の方が早い」
「それは残念じゃ」
王の言葉も聞かずローリーは部屋を出ていこうとし、ドアの前でこちらを振り向かないまま声を発する。
「フロー、貴様この事ただで済むと思うなよ?」
王という敬称を取り払い本名を告げたローリーは
捨て台詞を吐くと扉も閉めず去っていく。
「よろしかったので?」
「どうせ奴はこちらでは扱いきれない、いないほうがましだ」
「これだからただ長いだけ生きてる不気味な奴は」
「よい、それよりも災厄の森への調査隊には白銀騎士団を任命する、蒼は行かせたばかりで流石に使えんしのぅ」
「かしこまりました」
「ああ、ブラン」
「はっ」
「勇者殿たちにここでのことは伝えるなよ、一切だ、そしてこのまま育成に励め」
「……御意」
「後、一応言っておくが1年だぞ?」
王は先ほどの言葉を念押しする。
フォンにだけ言われたならまだ何とかできたかもしれないが、王にまで念押しされてはさすがにブランも反故にするわけにもいかない。
「…………かしこまりました」
(まだ、1年もらえただけましと思うしかないか、なら育成も少々荒くなるのは仕方がない)
こうして勇者たちも知らないところで、イシュバルという国も動き始めていた。
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