3話 無職はステータスを確認する
本日最終話です!
「*#!☆」\_♪?→←!*☆☆」
玉座の男はそのまま話を続けており、柊たちもそれを神妙な様子で聞いている。 俺も空気を読んで黙ってはいる。 が、反応に困るな、何言ってるかさっぱり分らないんから。
彼らには演技の才能があるんじゃないか? 柊はともかく他のやつらも本当に聞き入っているように見えるぞ、何言ってるか分からないはずなのに。
しかし、だからといってこの雰囲気の中で分からないとか言えるそんな雰囲気でもない。
「+_)(*&&**&^%$%^&*&^^&^%$#@#$##$#$^(
)(*&^%&!@#@$$%^%$%^#$%$#$%$%$%$$)(*&^)(’&」
とりあえず自分なりに解釈してみよう。
雰囲気から察するに、お前たちはここ異世界に召喚された勇者だ、この世界を魔王から救ってくれ。 みたいな感じな気がする。
うん、解釈してないね、異世界もののテンプレをただ言ってみただけだね。
その後も玉座の男、めんどくさいから王だな、王は未だにしゃべり続けている。 何でそんなにしゃべり続けられるかは一つの疑問だ。
えーと玉座のやつを王と仮定すると近くにいるのは宰相だろうか? よく分からないが、でも顔つきはそんな感じだ。
それからさらに5分ほど話してから王の言葉がやっと終わる。 分かったことは跪いているというのは思った以上にきついということだけ、おかげで足がしびれてうまく立てない。 俺が足のしびれと戦っている中、徐に柊が1人すっと立ち上がる。 彼の足はどうやらしびれなかったようだ。
「&^%$$%^&」
王の横に控えていたヒゲ宰相が何か言うが、王はそれを手で制する。 多分王の前でなんちゃらかんちゃらみたいなもんだろう、ああいう感じの人は形式とか大事にしそうだからな。 完全に俺の独断と偏見だがそんなに間違ってはないはずだ。
「お話は分かりました」
えって思ったがよく考えれば彼は元々分かっていたな、騎士とも話してたし。
てか今更だが君は日本語なのね、それで彼らに通じるのか?
「しかし私たちに状況を冷静に理解する時間が欲しいのです。 詳しいお話はその後ということでもよろしいでしょうか?」
柊の言葉に王は鷹揚に頷く。
通じたらしい。 さすがイケメンは違うね、これはイケメン力のなせる技だ。 そうだと信じたい。
「*^%$%^&」
「かしこまりました、それではまた明日」
多分推測だが、明日まで猶予を与えるとかそんな感じのことを言われたんだろう。
秋人なんかは明らかに不満げな顔をしている、多分なんで命令されなきゃいけないんだとか思ってるのだろう。 彼も何を言ってるかは分からないはずだからもしかしたら横柄そうな口調が気に入らなかったのかもしれない、プライド高そうだし。
ちなみに俺は全くそんなことは思ったりはしない、意味の分からない内容の方が気になるしああいう感じの人は上司とかでよくいたから、最近の例だとあのハゲだな。
白銀の騎士は立ち上がると王に向かって敬礼し、入室した時と同じように先頭を切って退室していく。 俺らは……まあその後をついて行くしか無い訳だ。
騎士について行くと、広めの部屋へと案内される。
そして柊になにやら一言二言言って外へと出て行く。
ここを使えってことなんだろう。 うーん、言葉が分らないって不便、マジで不便! 勉強しよっと。
でも高校生の彼らの方が大変だろうし、顔には出さないようにしておこう。
全員が落ち着いて部屋の何処かしかに座ったところで柊が話題を切り出してくる。
「とりあえず明日まで時間をもらえたことは良かったね」
「召喚していきなりその日に何かさせられるとかじゃなかっただけまだマシだと考えるしかねーか」
秋人ふんっと鼻を鳴らす、やっぱり不満はあったらしい。
そしてどうやら俺たちは召喚されたらしいふむふむ。 さらっと重要な情報言ったねうん。
「いやいや、何納得しちゃってんのあんたたち。 は、召喚した? この世界を救ってくれ? 笑わせんじゃないわよ。 なんで私たちがそんな見ず知らずの他人のために戦わなきゃいけないのよ。 頭いかれてんじゃないのまじで、しかも元の世界に戻るには魔王を倒すしかないって。 もう本当に意味わっかんない!」
男2人とは対照的に夏希はかなり感情的になってる。 うーんでも、これが正常な反応だよな、逆にこの状況でおかしいのは冷静な柊と秋人の方な気がする。 まああの王たちの前で騒がなかったことを考えれば夏希も大したもんだが。 俺は例外で、まず意味がわからなかったから反応の仕方がわからなかったというだけ。
魔王を倒すために異世界に呼ばれちゃったていう状況なのね俺ら、今初めて知った。 本当にテンプレだった訳だ。
「でもそれが本当かどうかは分からないよ……ね」
ごもっとも。 桜の言葉で全員のテンションが下がる。
言ってから空気を重くしてしまったことに本人も気づいたのだろう、自分で更に落ち込んでいる。 ネガティブの連鎖だな。
「と、とりあえずステータスをみてみようよ、何かいいこともあるかもしれないし。 あの石版で見えるって王様は言ってたよね」
空気を変えようとした柊の提案に俺以外のみんなが乗っかる。
ステータスか。 ステータスがあるのか、大人気なくワクワクしてしまうな、誰しもやっぱ一回は憧れるよね、ステータスとかゲーム的なそういうのにはさ。
柊が言っているのは多分壁際に置いてある石版のことだよな。
うん、そこはまあ分かる訳だが、わかるんだけどなんでその肝心の石版は四つしかないの?
「……四つしかねーな」
「そうだね……」
またまた気まずい沈黙。
ここは俺が譲るべきだよな、年長者としてね。 内容は気になるけども、気になるけどもね! ここは大人の貫禄というものをみせてあげようじゃないの。
「先に使いなよ。 その後に俺が見るからさ」
笑顔でさらって言ってやる。 どうよ、大人の貫禄!
「そうか、ならありがたく先に使わせてもらおうか」
そう言って4人は各々石版を手に取る。
「えーと、確かステータスって言えば石版に文字が映し出されるんだよね。」
「「「「ステータス」」」」
全員が石版を手に言葉を唱えると一瞬青白い光が輝く。 光は長続きはせずにすぐに収まる。
どうやら石版になにかが書かれたらしい。 全員が食い入るように石版の内容を見ている。
となると、俺は暇なんだよなぁ。 状況を整理するか。
さっきの会話で分かったことが一つある。
みんなどうやら異世界のあの摩訶不思議言語を理解しているってことだ。 最初は柊君だけでイケメンだから分かると考えていたんだけどなぁ。
どうしよう、更に言いづらくなったぞ、言葉が分からないって。
なんてことを堂々巡りで考えていると柊が石版を渡してくれる、どうやら見終わったらしい。
「はい、玲夜君。 ごめんね先に使わせてもらっちゃって」
「いやいや気にしないで」
他の3人はまだ石版と睨めっこしている。
じゃあ俺も見ようかな、ステータスとやらを。 待ちに待った瞬間でちょっとだけ期待してしまう。 さてさて内容はっと。
「ステータス!」
俺が期待に胸を膨らませながらそう叫ぶ、そしてさっきと同じように青白い光が辺りを照らす。
どうやらこれは日本語が通じるらしいな。
さてと、俺のステータスは……
NAME: 月城玲夜
LV: 1
SEX: M
JOB:無職
HP: 200
MP: 10
物攻: 10
魔攻: 10
物防: 10
魔防: 10
耐性: 10
敏捷: 10
運勢: 10
スキル
ん?
むむむ?
俺の見間違いか? 一端、眼をそらしてからもう一度確認してみる。 だがやはり何も変わっていない。いやこれでも強いほうかもしれないな。うん。最大値はHPの200……か。
「みんなの石版には何て書いてあった?」
「名前と職業? それにHPとか色々書いてあったよ~」
桜はあんまりアニメとかゲームみたいなジャンルに親しみが無いんだろうな。
「俺もだよ」
みんなが同意を示す。 あ、もちろん俺以外ね。
「お互いのを見てみて比較しようか、とりあえず」
「でも、柊。 さっきあんた自分の石版をそいつに……」
夏希の俺を見る視線が痛い。 なんかごめん、気にしすぎかな?
「ああ、大丈夫だよ、さっきメモを取っておいたから。 ほら」
さすが柊だ。 抜かりはないらしく自分のメモ帳を見してくる。
NAME: 天道柊
LV: 1
SEX: M
JOB:勇者
HP: 3500
MP: 3500
物攻: 3000
魔攻: 3000
物防: 3000
魔防: 3000
耐性: 500
敏捷: 600
運勢: 3000
スキル
言語理解
「は?」
LV1で基本3000オーバってどういうことよ! 俺と桁が基本二桁違うんだけど! 二桁!!
いや、これはこいつがおかしいだけ……だよな? イケメンだし。
秋人たちも自分の石板を見せてくる。
NAME: 成宮秋人
LV:1
SEX:M
JOB:騎士王
HP:4000
MP:500
物攻:4000
魔攻:500
物防:2000
魔防:350
耐性:500
敏捷:1500
運勢:100
スキル
言語理解
NAME: 星宮桜
LV: 1
SEX:F
JOB:大魔導士
HP:350
MP:4000
物攻:100
魔攻:2000
物防:100
魔防:2000
耐性:500
敏捷:100
運勢:100
スキル
言語理解
NAME:宝生夏希
LV:1
SEX:F
JOB:聖女
HP: 1000
MP: 5000
物攻: 10
魔攻:2000
物防:500
魔防:3000
耐性:100
敏捷:10
運勢:1000
スキル
言語理解
思わず石板を叩き割りそうになったのもしょうがないと思う。
摩訶不思議言語を表すために、記号を使っていますが10数話だけです。
文字数稼ぎとかではないのでそれまでの間ご容赦を……。
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