26話 無職は脱出する
やっとここを終わらせられた……
「……あぁ、そういうことか」
やっと理解できた。
「魔法は自身の魔力がきちんと確立できていないとだめなのか……。そして己の魔力を外に滞在しているマナと均等に混ぜ合わせなければ発動出来ない。 これが難しいわけだが、逆にそれさえできればいいわけだ……」
それならばピュアなものじゃなければ魔法使いにはなれないのは理解できる。
結局のところピュアじゃなければ自身の内包している魔力の流れが分からないのだろう。 他者を受け入れる、または他者の身体につき入れる、ということはすなわち相手と重なり合うこと。
それつまり相手という不純物が混じってしまうことになる。
身体にMPと呼ばれる体内の魔力が完璧に馴染んでいれば、言い換えれば自身の魔力が確立されればピュアである必要はない。
そしてたぶんそれが確立されるのが多分30年という年月なんだ。
これでこの世界に魔法使いがいない問題も解決する。
「魔法使いの職業を得るために必要な年月は30年。 対してこの世界の成人年齢は15歳でその年齢は各々が固有の職業を手に入れることができる時。 職業を得て、1人前とみなされる。 そしてその時にはこの職業は現れない」
「同時にこの世界の平均寿命は多分地球よりも短い。なら相対的に結婚年齢も早くなり初体験もそれに殉じるはず」
「こんだけ揃ってればそりゃ魔法使いなんて生まれないわな」
しかも代換えのようなものである魔導士という職業もある。
「だが、まあぶっちゃけ魔導は魔法のかなり劣化したものであるっぽい」
まず詠唱しないといけない点。これは相当なハンデと言える。
なんでかは知らないがあいつらは魔導を使うのにあの中二病のようなものを詠唱しなければならない。 つまり一回使うだけで自分の精神に大ダメージが入るわけだ。
……それに詠唱している間に魔導士自身は無防備になってしまう。 一人では決して戦えない。
「だから王国のやつらもパーティーを前提にしていたんだろうな」
そんなこと、今はどうでもいいか。
自分の魔力を意識して外界のと混ぜ合わせる、それによって外界に影響を与えられるようにする。
後イメージするのはその混ぜ合わせたものをどうしたいか。
ここに自身の魔力を意識し、イメージを自身の魔力を使って指向性を与える。
大事なのは、自身が優位性を持つこと、そうじゃなければ魔法をコントロールできなくなる。
多分、魔導ではそのコントロールを詠唱によってしている。
だが、それに使われている力は人間のものじゃない。
それが何かまでは分からないが、
とは言ってもこれは現段階では理論だけの状態。
実際にやってみるとこれがまた難しい。
まず均等に混ぜ合わせる、これがやばい。
すっごい繊細なコントロールが要求される。 しかも最初がゼニスの魔法から半ば無理やり学んだために繊細さが足りない。
それにうまく自身の魔力と混ぜられないと、体内で魔力が暴れまわりあまりの激痛にそのまま気絶してしまう。
それが完全に出来るようになった時には印が3000を超えていた。
しかも気絶したのが1日とは限らないから実際はもっと経っているはずだ。
「そして次はその魔力に指向性を持たせる」
言葉でいうと簡単に聞こえるが、これがさっきの魔力を均等に調整するのよりも軽く100倍は難しい。
まずイメージを自身の魔力に乗せるってのが意味わからない。
具体的にどうすればいいのかがさっぱりである。
それでも色々と試して試して何とか形になった時には印が10000を超えていた。
結局は感覚だった。
なんで出来たのか俺にもわからん。
もう色々と試して、やけくそになった時に出来たし。
ちなみにその時の心情は……
「いいから炎出ろやぁぁぁ!」
これの100倍ぐらいの思いを込めた。
そこからはとんとん拍子に進んだ。
それを樹で創った木刀に魔法を付与してみたり、拳に付与してみたり。
慣れてきたらコツをつかんで呼吸をするように魔法を使えるようになった。
「ふぅ、じゃあ試してみるか」
多分今の俺ならここを出られる気はする。
長かった……軽く見積もっても30年ぐらいはここにいた気がする。
俺の姿かたちは例のごとく変わってないが。
結局ここに来てからずっと飯も何も食べてなかった。
家もできたし、住みやすい環境も創り終えた今ここを去るのは惜しい気もするが……。
「だがここの景色にも飽きたしな」
自分をそう納得させ、俺は愛用の武器、ダガーに俺が出来る最大限の魔法を付与する。
付与する魔法のイメージは{破壊}
魔法名をつけるとしたら……。
やめよう、自分であえてダメージを与える必要はないな。
「さあ、ここから出よう、そしてあの女に俺の願いを聞かせてやる」
ぐへへへ……おっと、自制自制。
「行くぜ、この一撃にすべてを賭ける! おらぁぁぁぁぁ」
全力で膜に向かってダガーを切りつける。
何も習ったりしてないからひどく不格好な切り付け。
だが魔法の威力は既に実証済み。
俺に使える魔法の最大限。
MPも一気に8万は持ってかれた。
しかしその甲斐もあってか、膜に大きなひびが入る。
「ちっ、ダメか」
なんでだよ、くそっ。
吹き飛ばされるとは分かっていても膜を思いっきり殴りつける。
そして次の瞬間ここに来てから初めて聞くひどくあっけない音が聞こえる。
パリン。
その音を認識した瞬間、俺の意識は暗転した。
NAME: 月城玲夜
LV: 1
SEX: M
JOB:無職ー魔法使い 逃亡者 掘削士 樵→大工 耐忍→精神異常者
HP: 200
MP: 100010(+100000)
物攻: 1510(+500)(+1000)
魔攻: 100010(+100000)
物防: 200 (+190)
魔防: 100010(+100000)
耐性: 100010(+100000)
敏捷: 210(+200)
運勢: 10
スキル
多言語理解
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次話から物語がどんどん進んでいく予定です。




