23話 無職は魔法を使えない?
「お、落ち着け、俺。 だ、大事なのは落ち着くことだぞ、うん」
な、何かの間違いかもしれんよな、も、も、もう一回やってみるか。
「わ、我、乞い願い奉るは火の精霊なり。 汝の赤をもって我が宿敵を滅ぼしたまえーーファイアーボール!」
やっぱり何も起こらない。
え? ステータスが間違ってるということか?
いや、ちゃんと魔法使いって書いてあるしな。
「じゃあ、なぜ使えない!? 火に適性がないとかそんな感じか?」
それなら今の俺にはどうしようもないが……
ああ、あの時ダイエット用の筋トレなんてしないで他の詠唱とかも聞いとけばよかった!
「じゃあ、もうどうしようもないよなぁ、サーラさんの回復魔導も受けたけど、覚えて……ない……し?」
ってちょっと待て。
あれ? おかしくないか?
俺が今唱えたのは、ファイアーボールだよな?
これって確か火の魔導だったはず。
そういえば桜の職業は、大魔導士だった。
うん、やっぱおかしい。
「もしかして魔導と魔法って意味合い違ったりするのか?」
おんなじような意味合いだと勝手に解釈してたが……。
よく考えればおかしな話だよな?
そもそも魔法使いのステータスの上り幅も大魔導士と比べて違いすぎる。
NAME: 月城玲夜
LV: 1
SEX: M
JOB:無職ー 魔法使い 逃亡者
HP: 200
MP: 100010(+100000)
物攻: 10
魔攻: 100010(+100000)
物防: 10
魔防: 100010(+100000)
耐性: 10
敏捷: 210(+200)
運勢: 10
スキル
多言語理解
詳しくは覚えてないが、桜のステータスはもっと他のも軒並み数値は高かった気がする。
少なくともここまで尖ってはいなかった。
その辺に解決の糸口があったりしそうだが……。
うん、ぶっちゃけ分からん!
分からないことを考え続けるより、先にやることもあるし……。
そことうとう俺は棚上げにしていた問題と対峙する。
「食料どうすんだよ」
このままだと餓死するぞ?
いや、待て、人間は確か水だけでも2週間は生きれるんだったか?
まあでもその前に腹すきすぎて俺が土とか食い出しそうだが。
とりあえずやるしかないか。
……農業を。
俺はその日、何故か異世界において農業を始めることを決心した。
*
とは言っても植えるものがなければ農業なんぞ出来るわけがない。
まずはさっき散策で見つけた森へと向かう。
「森なんだから木の実ぐらいあるはずだろ、うん!」
そう安易に考えていた訳なんだが……。
……無かった。
木の実なんて全く無かった。
ただただ樹があっただけだった。
「と、とりあえずなんかの種が見つかった時に困らないように土だけでも耕しとくか」
そうしていれば何も考えずに没頭できるし。
「つっても手で掘るわけにもいかねぇしな」
そんなことをやった暁には、指の爪がやばいことになっちゃうだろう。
だから農業をするために……俺は樹をダガーで削る!
ついでにその木材を使って家づくりをしよう。
今のところここの空間を脱出する有効な手立て発見できないし。
*
いやー、大変だった。樹を1本切るのにもかなり苦労した。
手にめちゃくちゃ豆が出来たし、死ぬ気でやったのに3日もかかってしまった。
まぁダガーで削ったんだからこれで早い方だと思う。 ちなみに三日というのは俺の感覚だ、だってここ夜がないんだもん。
でも…………辛かった。
途中からはある程度コツを掴めたが、そこに至るまでは閉じ込められていた馬車にあった剣を持ってくれば良かったと何度後悔したことか……。
まぁもしそうしてたら多分奴らからは逃げられなかったが。
「ないものねだりだよな」
自嘲しててもしょうがない。
とりあえず10mぐらいの樹を余すところなく使う事にしよう。
細かな枝とかは折り、たき火などをする時のために使う。
そしてちょっと太めの枝はダガーで削り木刀を作ったり桑を作る材料に。
幹はどうしようかな……。
まあ、とりあえずは椅子替わりにでもしようか。
桑の、鉄部分は石を削ってつくろう。
でも、実際農具創る必要あるんだろうか。
だって……この3日腹減らなかったし……。
集中すると時間を忘れる俺の性質もあるが、それにしても腹が全く減らないというのはおかしい。
それに水も飲めないことは無いが、喉が渇くわけでもない。
「この空間は人間として生理的なものをする必要とされないのか」
なんて便利なんだ。
「あの女は何が目的でこんなところに俺を落としたんだ? 俺のためとか言っていたが」
あの女、ゼニスがそういい始めたのは俺のステータスを見てから。
「何かあるんだろうな、この[無職]という職業は。 今のところステータスをみても説明が見えないってのが怖いところだが」
そう、この無職という職業、ステータスが見れないのである。
「それにゼニスも魔導じゃなくて、魔法を使ったといっていた」
俺のステータスの説明通りであるならば、あの女は……
「30を既に超えた処女ってことだな!」
……ってそんなこと今は気にしても仕方ない。
とりあえずこれからは快適にここで過ごせるようにするってことと、どうにか魔法を使えないか試行して脱出を図っていくという2方面から行動していくことにするか。
「とりあえず、鍬でも作りますか!」
俺は枝をダガーで削り始めた。
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