22話 無職はまた落とされる
「知らない天井だ……」
冗談です、知らない空でした。
「ここはどこだ……?」
辺りを見回せば森があり、川があり、空がある。 しかしそれ以外は何もない。 あ、もう一つあるものがあった、土だ。
はぁ……。
しかしこれが通常のものではないことは分かる。
だって空とか灰色だし。
それに俺があの意味不明な女、ゼニスを見つけた時のようなあの膜の感じもする……。 なんか思い出したらむかついてきたぞあの女。 何だったんだよマジで、出会ったと思ったら穴に落とされるって。 てか美人だからって簡単に近づくとか、もうちょい警戒心持てよさっきの俺、童貞かよ。
…………そういえば童貞だったな、じゃあしょうがないか。 いやここを脱出して卒業すればいいんだ、うん。
と、とりあえず今は考えるのをやめて歩ける範囲でどこまで行けるか探索してみるか。
*
探索の結果わかったのはこの空間は結構広めだってこと。大体東京ドーム半分ぐらいの広さだった。え?分かりづらいって? そりゃそうだよ、俺東京ドームの大きさ正確には知らないし。
てか常々思うけどさ、東京ドーム1個分という表現よく使われるけど、あれ実際よくわかんなくない? いやおおきいのはわかるけど正確にはどれぐらいかって分かんないし、イメージしづらいんだよな。あ、もしかしたらTVではイメージを伝える方が大事なのか?
色々と言ったが、まぁつまり俺もここの大きさがどれぐらいかは説明しづらいってこと。まあイメージとしては小学校とかの校庭とかそんな感じだ、うん。でそっから先には何もない。ただ、真っ黒な空間があるだけ。川とかは膜を超えた瞬間無くなった。どうやって作っているのかとかは興味が出てくるが、今はそれを考えている場合じゃない。
ちなみに俺が膜に触れた瞬間、吹き飛ばされた。多分ここから出るにはたぶん膜みたいなのをぶっ壊せばいいんだろうけど、どう壊せばいいかは正直分からない。
俺、魔法とか使えないし
っていやちょっと待てよ、確かステータスには……。
いやその点も含めて改めて状況を考えなきゃだよな。
さて、今の状況から整理しよう。
谷から落ちたと思ったら今度は黒い穴にまた落ちてきたわけだ。
どのくらい気絶していたのかは分からないが、とりあえず俺を落としてきたあの黒い穴は今はどこにもない。
「ここはどこなんだ? ……いやそれはどうでもいいか、分かったところで俺にはどうしようもないわけだから、当面必要なものは……水と食料だな」
水は……多分川の水を煮沸とかすれば何とかなるだろう、てか無職の俺にはそれぐらいしかできな……いやちょっと待て。 そういえばステータスにおかしなものがあった。
NAME: 月城玲夜
LV: 1
SEX: M
JOB:無職ー 魔法使い 逃亡者
HP: 200
MP: 100010(+100000)
物攻: 10
魔攻: 100010(+100000)
物防: 10
魔防: 100010(+100000)
耐性: 10
敏捷: 10(+200)
運勢: 10
スキル
多言語理解
やっぱりだ。 今までは無職以外何もなかった職業の欄の隣に魔法使いと逃亡者が出ている。 それにステータスにもプラスがめちゃくちゃついた。
魔法使いだからか、MPとか魔攻、魔防が高くなってるんだろう。 てことは逃亡者のプラスは敏捷と言うわけか……。 ふむ……魔法使いは分かる、分かるが…………逃亡者は職業なのか? 職業なんだろうな、職業の欄にあるし。 うーむ、解せん。
でもいきなりなんでだ、城にいた時には無職としかなかったが…………城から追放されるまでの間にこのふたつの職を得たことになるわけだが……。
まぁ逃亡者は分かる、死にものぐるいで騎士とかゴブリンから逃げてきたからね。 多分死ぬ気で逃げるとかそんな所だろう。 そう言ってると、これ犯罪者とかが取りやすそうな職業だな?
まぁいい、じゃあ魔法使いはなんだ? さっぱりわからんぞ? なんでこれ出てきたんだ? 桜の職業に似てるっちゃ似てるが、彼女の職業は大魔道士だった。 字面は似てるけども……実際どうなんだ?
あぁ、ったく、説明ぐらい書いとけやボケがァ!
そんな事を考えた瞬間だった。
脳裏に魔法使いの説明が浮かんでくる。
『30まで純潔を守り抜いたものに与えられる栄誉ある職業。 その行いは高潔にして、怪傑にして、英傑の純粋さである。 MP、魔攻、魔防の成長を促進』
…………
…………………
………………………
……なるほど、めちゃくちゃかっこよくいってるがこれってあれだな? 簡単に言うと30まで童貞だったから魔法使いに昇華しました〜ってことか?
は?? 馬鹿にしてる?
軽く、いや、かなりこのステータスに殺意湧いたぞ。
決めた、俺は決めたぞぉぉ、絶対卒業してやるからな!
「い、一応だが逃亡者の説明も見てみるか、何に成長促進とか有益なこととか書いてあるかもしれないし」
『現実から逃げて新たな環境からも逃げて敵からも逃げて、逃げて逃げて逃げて。 果たしてその先にあるものは何なのか、虚無か、孤独か。 それは本人しかわからない。 敏捷を成長促進』
…………。
俺はみたことを後悔した。
「は? 俺ステータスに喧嘩うられてんの? いやでも、何に成長を促進して+がどれについてるかは分かったからいいが……」
なんか釈然としない……。
あぁ、何かに無性に八つ当たりしたい。
もし、これが柊とかだったら魔導ぶっぱなしりするんだろうけど……、いや彼はそんなことしないな。
ってうん?
「俺今なら城で使えなかった魔導使えるんじゃねーか?」
だってMPもあるし、魔攻とかも数値高かったし。
えーと確か詠唱は……っと。
我、乞い願い奉るは火の精霊なり。 汝の赤をもって我が宿敵を滅ぼしたまえ、だったかな? よし、気合入れていくぞ?
「我、乞い願い奉るは火の精霊なり。 汝の赤をもって我が宿敵を滅ぼしたまえーーファイアーボール!」
……
…………
………………
また何も出ませんでした……。
ストレスを減らすはずがストレスを増やしてどうすんねん!!
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