21話 無職は決意する
これはチートだろうか……
坂を降りた先にあったのは普通の一軒家。
そしてそのさらに奥にはいくつかの建物と村らしきものが見える。
「入りなさい」
「……失礼します」
柄にもなく緊張してしまう。
まあこれはぶっちゃけしょうがない、地球にいた時は女性の家に入ったことなんて無かったのだから。
ましてや二人きりなんて夢のようなことあるわけが無い。
逆に逃げ出してないだけ褒めて欲しい。
中をみればある程度の家具やテーブルが置かれていて、良くは分からないがすごくいい匂いがする。
これが女性の部屋なのかもしれない、母親の部屋とかと大違いだ。
「座りなさい」
「ど、どこにです?」
「テーブルの所にある椅子以外、座るところはないでしょう」
心底呆れられた目で見られてしまった。
バカなの?とでも言いたげである。
ただ俺にはそんな女性に反論する能力は無いので言われた通り彼女の反対側に座る。
「さて、色々聞きたいことがあるのだけどいいかしら」
「え、ええ、いいですよ、特に隠すこともありませんしね」
本来は勇者召喚云々とか隠した方がいいのかもしれないが、既に俺は1度殺されかけているし、というか実際相手は俺のことを殺したと思っているだろう。
そんな中1人で住む、住んでいるであろう、彼女に教えたところで特に何かあるとは思えない。
何かあったとしても最悪でも俺が死ぬだけである。
「それじゃあ貴方は誰?」
ここはあれだな、名前を聞くならまずお前からって言うやつを言う時が来たようだな…………よしいくぞ!
「な、名前を名乗るなら…………。 いえ、すみませんええっと俺の名前は月城玲夜と言います。 あなたは?」
あんな凍えるような視線の前で言えるわけがない。
そして彼女は俺の名前を聞いてもピクリともしない、心底どうでも良さそうだ。
「別に貴方に名前を名乗る必要は無いのだけど……一応応えておいてあげましょうか」
じゃあ、なんで俺の名前を聞いた!?
そこで彼女は一旦言葉をきりそして……
「私の名前はゼニスよ」
ゼニス、ゼニスか。 英語での意味は確か天頂とかそんな感じの意味だったかな? 名はその人を表すとは言うがこれほどぴったりな人も少ないだろう。
それほど彼女の名前は彼女の雰囲気、佇まいによく似合っていた。
「それで貴方…………えーと玲夜はなんでここにいるのかしら、ここに常人は入れないはずなのだけど」
「…………えーっと、その話をするには俺のことを全て話すことに繋がってしまうんで、若干長くなっちゃいますけどお時間は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。 私は時間だけは無駄にあるからね」
ゼニスが自嘲気味に笑う。
やはりそうだ、彼女は何かを諦めている、でも全てを諦めきっている訳でも無いらしい、なぜ分かるかって? 俺もおなじ目を地球の時散々、自室の鏡で見てきたからだよ。
俺のはもっとひどかったが……うん止めよう悲しくなる。
今もそうかもしれんし。
「なるほど、その辺の事情は俺が話し終わった後にでも聞かせてください」
「聞いてもどうしようもないと思うけどね」
「でも時間はあるんでしょう? 暇つぶしとでも思ってお願いします」
「…………はぁ、私の話を暇つぶしね……でもいいわ。 でもまずはあなたの事情を話して」
そうして俺はこれまでの経緯を話し始めた。
「……そう、じゃあ有体に言えば、無能だからと追放されたのね、それも王国にうまい具合に使われて。 それで逃げてたら谷に落ちて気づいたらここにいた……と」
「……ええ、そういうことです」
言いにくいことを臆せず言うんだな、オブラートに包んでほしかったよ、ってこっちの世界にオブラートはないかもしれないな。
あのデンプンから作られるやつ。
「そしてあなたはさっき自分が若返っていたことに気付いて驚いた……と」
「……はい」
「端的に言っていいかしら」
「どうぞ」
「あなたなんで生きてるの?」
「さ、さぁ?」
なんで俺生きてるんだろう、ゴブリンとか騎士から逃げられたのは相手が油断していたおかげだと思うけど、谷に落ちて生きているのは不思議だ。
……俺とうとう覚醒したか?
「じゃあ装備品とかかしら? あなた何か身に着けているものはない? もらったものとかでもいいわ」
「もらったもの?」
なんかあったっけ、特に覚えはな……あ。
「そういえばこれをもらいましたね」
ゼニスにローリーからもらったネックレスを手渡す。
ネックレスはもらった時と比べて変色していた。
なんかくすんでいる。
多分あの川がよどんでいたからだろう、あとで磨ておこう。
ゼニスはネックレスをしばらく眺め、なぜか一つうなずく。
「ああ、これのおかげで生き残れたのね。 これ水龍の輝石だもの。 これがあなたに有害な水的なものを排除してくれたの。 谷に落ちて汚い川を流れたって言ってたから多分そうでしょう。 これの効果は一度きりだからもう使えないけど、大事にとっているといいわ」
てことはだ、ローリーのおかげで助かったのか……。
もう会うことはないかもしれないが、本当にありがとう。
「…………というかそもそもの疑問として、あなたなんで私と話せているのかしら?」
「え? 人間だから……でしょうか?」
「はぁ? あなたお城にいたときはこちらの世界、あなたからいえば異世界人ね。 それとしゃべれなかったんでしょ? それが無能な無職と判断される要因になったわけだし……でも今はなんで私と話せているの?」
言われてみれば確かに……。
なんで俺、今この美人な人と話せているんだ?
「さっきの話だと、あなたが言葉を分かるようになったときは確か騎士に暴行されているときよね? その時何かあった?」
何かと言われても……思い返してみるが特に何もない。
「いや何も。 いきなりでしたね。 ある日の深夜0時を超えたくらいから相手の話がだんだんと分かるようになりました」
「……そこで何かが起きたとは考えにくいわね、でも言語理解は出来るようになった。 何らかのスキルでも得たのかしら?
ちょっとステータス見せてもらえるかしら?」
「……無理ですね」
しばし考えてそう答える。
「どうして? もうここまで事情を知っているのだから今更ステータスぐらい関係ないと思うけど? そりゃ通常ならば話は別だけど……」
「あ、別にそういう意味じゃないです」
「じゃあどういうこと?」
「ステータスの見方も見せ方も分からないからですね。 城にいるときは石板を使わされましたが」
俺がそう言うと、ゼニスは一瞬ポカンとし、呆れたように笑う。
「ああ、そういうことね。 今でもその方法を使っているのね、その方が管理しやすいし、本当に人間は……」
ゼニスが憎々しげにつぶやく。
何かあったのか?まあ今は聞かないけど……
ていうか別の方法があるのか、管理とかいっているし。
「ステータスを見るのはそんなに難しくないわ、自分の内側に意識を集中して自身の能力は何かを問いかけるの。 そしたら頭に自然と自身のステータスが思い浮かぶはずよ この世界の人は大体できるわ、それであとは私に見せたいと思えばいいわ」
てことはあの石板は本当に要らないデバイスなわけだ。
今はどうでもいいな、それよりもゼニスに言われたようにさっそくやってみるか。
自身の内側に意識を集中してステータスを思い浮かべる感じ……っと。
そうすると、頭でパズルのピースが組み合わさるように俺のステータスが浮かんでくる。
NAME: 月城玲夜
LV: 1
SEX: M
JOB:無職ー魔法使い 逃亡者
HP: 200
MP: 100010(+100000)
物攻: 10
魔攻: 100010(+100000)
物防: 10
魔防: 100010(+100000)
耐性: 10
敏捷: 210(+200)
運勢: 10
スキル
多言語理解
うん?
なんか俺のステータスおかしくないか?
最初とちょっと、いやかなり変わってるし、それに言語理解じゃなくて、多言語理解がついている。 あと無職の横に、魔法使いと逃亡者があるし……。
その反応はというと……目を見開いている。
「……ふふ、なるほどそういうこと」
どうやらゼニスはそれで納得したらしい。
ってちょっとまとう。
「なんでまだメモも見せてもないのに、俺のステータスが分かるんですか?」
「魔法を使ったから」
「ああ、魔法を使ったんですね」
「ええ」
「……そうですか、でも僕の魔防は結構高いと思うんですが」
「そうね、高いわね。 だから何? 方法はいろいろあるのよ、自分で考えてみなさい。 あなたならそれくらいわかるでしょ?」
抵抗する意思があるかとかそういうことなのか?
そうじゃなきゃ回復とかもできないはずもできなくなってしまうし、多分そういうことだろう。
それか、彼女のステータスが俺の魔防を超えているか。
ま、今はどっちでもいい。
「それで何が分かったんですか?」
「そうね。あなたに興味はなかったのだけれど、ちょっと興味が出てきたわ、だからごめんなさいね?」
「ごめんなさい?」
「頑張って生きて、そうね、一つ助言するなら色々と新しいことに挑戦するといいわ、それがあなたのためになる」
そういうと、思わず見惚れるほどの笑顔をゼニスが浮かべる。
「期待してるわ、もしまともに生きて帰ってきたらあなたのお願いなんでも1つだけ聞いてあげる、それに私の事情も話してあげるわ」
「はい? ちょっとま……って…………え?」
ゼニスはそう言い切ると、いきなり俺の真下に魔方陣が現れ、黒い穴が開く。
もうその手には載らないぞ?
勇者召喚の時はとっさの事だったから動けなかったが今は二回目だ。 ちょっとは心に余裕もあるから今なら動こうと思えば動け…………ないだと!?
「ちゃんと逃げられないようにしてるわ、これからあなたが行く場所を出るためには私の空間を壊せばいいわ、それがあなたの強さになって、めぐりまわって私たちのためになる」
そう笑う彼女はとてもきれいで悪魔のようだった。
そんなことを考えながら俺は落ちていった。
絶対に泣かせてやるっ!
そんな決意とともに……
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