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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
2章 2人の世界~禁忌な2人は力を得る~
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18話 無職は生き残る

2章開始です


 水の波打つ音が微かに耳へと届く。 

 地面に生えているであろう草木が瞼の辺りをくすぐってきている。

 それが非常にくすぐったい。

 寝ぼけながらも必死の抵抗で寝返りを打てば地面特有の硬さが背中を通して伝わってくる。

 

 『あいつをゴブリンに襲わせるんだってよ』


 身震いがした、忘れていた、俺はやつらから逃げていたんだった。

 こんなところで寝返りを打っている場合じゃない。

 慌てて飛び起き周囲を確認する。


 「……え?」


 洞窟のような場所にいた。 周囲を確認すれば人影のようなものは確認できない。 地面には草木が生い茂り、花なども咲いている。 天井はむき出しの岩肌でここが洞穴かもしくは洞窟のようなどこかの空間だということが把握できる。

 すぐ後ろには澄んだ色をした泉があり前方には奥へと続く通路のようなものがある。


 「ここ、どこ?」


 寝ぼけていた頭を無理矢理動かす。

 事態は一刻を争うかもしれないのだ。

 俺は確かゴブリンに投げ飛ばされてあの谷に落ちて意識を失った……はず、あの後から記憶がないし。

 外傷は……なしと。 あの森でのサバイバルの時にできたかすり傷や切り傷もそのまま…


 「あそこからここまでどうやって移動してきたんだ?」


 考えられるとしたらこの泉が、俺が落ちた谷と繋がっているって可能性だけだよな。

 俺が誰かに助けてもらってここまで運ばれたというのは無理があるし。


 でも地下で繋がってここまで来たのだとしてもそれならなんで俺は生きてるんだ? 普通は落ちた衝撃で死ぬか窒息して死ぬ気がするけど。

 俺に隠されたチート……か? いやでもそしたらステータスに出てくるはずだしなぁ。

 でもそれ以外に助かる説も浮かばないし……。


 やばい、考えが堂々巡りし始めている。


 「考えててもしょうがない。 多分ステータスには現れないスキルがあったんだな、うんそうしよう。 てか可及的速やかに水が飲みたい」


 手で泉の水を掬い喉を潤す。


 「こ、この水めちゃくちゃ美味い、ってこれ飲んで大丈夫なのか? って今更だなうん」


 無我夢中で飲み続ける。


 「ぷっはぁぁぁ」


 思い返せば久しぶりの水だった。 綺麗な水を飲みたいだけ飲めたのなんて1ヶ月ぶりぐらいじゃないか。

 だからか水が本当にとても美味しく感じる。

 こんなの地球じゃ感じれなかったことだなぁ、これがこの異世界の良さかもしれない。 裏を返せば文明の利器がないということなのだが、それはまあ考え方によるだろう。


 というか喉が潤されたら次に来る欲求がある、そう、食欲である。


 「腹、減ったな」


 とは言っても辺りを見回してみても食べ物になりそうなものは何1つとしてない。

 残る可能性はただひとつ。


 「奥へ進むしかない……」


 気乗りはしない。

 奥に何か危険なものがあるかもしれない……。

 自然と足が止まり、そしてその事に気づいて思わず自嘲してしまう。



 何をかんがえているんだ? 地球の感覚が抜けな過ぎだろ俺は。

 こんな所で尻込みしててもしょうがないのに。

 元々死ぬはずだった命なのに。

 何を保身に走っているんだ俺は。 保身に走って安易に動いた結果が今のこの状況を間接的にだが招いているっていうのに。

 何回同じ失敗をすれば気が済むんだ俺は。


 自分を叱咤し洞窟の奥へと進む。

 懐にはあの蒼い騎士団から逃げ出す時に奪ったダガーを忍ばせている。

 

 (まぁ、ゴブリンにすら通用しなかったけど)


 実際、敵に出会ったら逃げの一択しかないだろう。

 洞窟の地面はゴツゴツとしていてめちゃくちゃ歩きにくい。

 敵に出会ったら逃げるとは一口に言っても実際はかなりめんどくさいことになるに違いない。

 だがそんな俺の不安は杞憂と化す。

 歩いても歩いても敵なんて出てこない。

 敵というよりも虫の一匹も確認できず、もはや生物の気配すら感じないと言ってもいい。



 あ、分かった、これもしかして俺は今三途の河とかそんな感じのところを歩いている最中なんじゃないか?

 だったら俺がここにいる理由も説明がつくし、まここは河じゃなくて洞窟っていう些細な違いはあるけど……。

 異世界にでもあったんだな、三途の川、もとい三途の洞窟。


 それじゃ俺は歩き続けるんじゃなくて石を積み上げたりしなきゃいけないのか?

 うん? 分からなくなってきたぞ。

 地球にいた時に宗教とかそういう系にはとんと興味がなかったあらなぁ。

 知識がなさ過ぎる……。


 ま、深く考えすぎても仕方がない。 あともうちょっと歩いてみて何も変化がなかったらその案も考えてみよう。

 

 そのまま道なりに歩いていくと、遠くで洞窟の通路が終わっていて出口のような場所がぽっかり空いているのが見える。



 「三途の洞窟はとりあえず終わりってことか」


 思わず安堵のため息が漏れる。

 ひとまずのゴールが見えたことで足取りは軽くなり歩くペースも速くなる。


 「さて、鬼が出るか、蛇がでるか、願わくば何も出ないといいが……」


 出口の光の先にあったのは理想郷だった。



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