16話 蒼血騎士団は追跡する
本日3話目です。
予定では3話でしたがあと1話更新します。
それで第1章終了です。
「…………は? もう一度言ってみろ」
「…………すみません、ガギン隊長。 レイヤ・ツキシロに………逃げられましたっ……」
「何してんだバカがっ!」
「がはっ!」
報告に来た部下を思わず殴り飛ばす。
「これは宰相からの秘密裏の依頼だぞ!? こんな簡単な依頼で失敗したらわが騎士団、蒼血騎士団の信用に関わることになるんだ! それが分かってるのか!?」
「すいません……」
「ここで言ってても仕方がないかっ。 それでやつはいつ逃げた、どうやって逃げたんだ!?」
「昨晩確認したときはいましたので、交代のタイミングに馬車の腐っていた部分に穴をあけて抜け出したようです……。 見張りを交代した兵は抜け出す物音を聞いていないと言っていましたので」
見張りを交代する時間は確か1~2時の間だったな。
「ということは抜け出してからかなり経っているか、もう日が出始めている」
「はい、それでどうしましょうか……?」
「前の町を出たのが確か三日前、それはやつも知っているはず。 ……やつのステータスで三日間1人か? おい! 物資は何か持っていかれたのか!?」
「はい、先ほど調べさせた結果、ダガ―を2本ほど……。 それ以外は食料も含めて、奴に持っていかれていませんでした」
「……ほぉ」
ダガ―を2本……か。 奴め、少しは頭は切れるようだな。
しかし腑に落ちん。
「なぜ奴は食料をもっていかなかった?」
「昨晩は食料の馬車で団員が騒いでいたからではないでしょうか」
「ということはやつはもう1つの馬車に食料があることを知っていたことになる。 それに奴が持って行ったのはダガーだ、盾や片手剣ではない。 殺傷力はそっちのほうが高いのにだ。 つまり奴は自分に扱え、かつ邪魔にならないものを持って行ったってことだ」
「……つまり?」
「奴はかなり冷静ってことだ」
多分、奴は我々の動きなどもをこの何週間かで見ていたんだろう、それぐらい手際がいい。 そうでなければ朝まで誰も気づかないなんてありえないしな。
それなら、奴は前の町の方向に進むことはありえないな。 奴は3日前に町を出たことを覚えているはずだ。 馬車で3日の距離を徒歩で行くとは考えにくい。
それなら…………
「俺たちの進行方向の全方位に向けて斥候を6人出せ! 残りはいつでも動けるようにして待機!」
「了解です!」
……それにしても奴が逃げ出したタイミングが良すぎる。
奴は自分がゴブリンに襲われるということを知っていたのか?
いや、それはありえないな。 奴はこっちの言葉が分からない、そんな奴が今日のことを知れるはずはないか……。
こんなこと考えても仕方がない、捕まえて聞けばいい。
「早く奴の顔がゆがみ絶望する姿が見たいぜぇ」
*
「まだ見つからないのかっ!?」
「……はい。 あと1人戻ってきていませんが……しかしそいつの向かった方向は災厄の魔女がいるといわれるあの森の方向なので流石に奴でも行かないのでは……」
「奴がそんなことを知っているとは思えないがな」
「…………」
これは俺の予想が外れたか?
新たに斥候を出す必要があるかもしれないか……。
「報告しますっ! レイヤツキシロの足取りを災害の森の手前で発見したとの信号が上がりました!」
「本当かっ!?」
「はい!」
「そうか、なら向かうぞ! 詳細は馬上で聞く馬車には斥候で出た5人だけ残して、他のものは災害の森へと向かうと伝えろ!」
「はっ!」
部下に指示を出して、愛馬へと飛び乗る。
「それにしても奴はなぜ災害の森へと向かう。 あそこが災害の森とは知らなくても近寄りがたい気配はあるはずだが……」
「それが奴はどうやらゴブリンに追われているようでして」
「はっ、我々に追われ、さらにゴブリンに追われるか。 こりゃ面白い」
「数は大体50ほどはいるそうです」
「あの、目の前のか?」
前方には緑色の肌のやつらが集団になって災害の森へと向かっている。
「どうやらやつはもう入り込んだらしいな」
「それは少々厄介ですね、ガギン隊長」
「とりあえず、目の前のゴブリンを蹴散らすぞ、邪魔だ」
ゴブリンの群れへと隊ごと突っ込み、手近なゴブリンの首を切り落とす。
「グギャ」
「汚い鳴き声だ、やっぱ悲鳴は人間のがいいよなぁ」
二体、三体と馬上からゴブリンの頭と首を切り離す。
周りを見れば部下たちもゴブリンをどんどん屠っていき、瞬く間にゴブリンはその数を減らし、既に20体を切っている。
「よし、これだけならここは三人でいいな、そこの三人はこいつらを倒したら、後で追いかけてきて合流しろ」
「えー」
「マジですかぁ?」
「勝手に奴の見世物をはじめないでくださいね」
「はは、分かってるから大丈夫だ。 それじゃ先に行く」
「「「了解です」」」
「後のやつは俺に続けぇ、逃げ出したお姫様を捕まえに行くぞ!」
「ガギン隊長、それは気がはえーっす。 まあ、遅かれ早かれなんで間違いではないですが……」
俺たちはレイヤツキシロが逃げ込んだ災害の森へと突入した。
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